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71 勘違い
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(絶対に阻止してみせる……!これ以上の被害は出さない……!)
飛び降りたときに傷付いた足が未だに痛む。
しかし、治療などしている暇はない。
誰かに頼っていてばかりではダメだ。
自分の力で何とかしなければならない。
私はこのウィルベルト王国の国王なのだから。
今騎士たちは必死に戦っている。
国王だからと守られているわけにはいかないのである。
「遅い!!!」
「ぐあっ!!!」
そう叫びながら、私は交戦中だったローレンの兵士の体を斜めに切り伏せた。
男は床に倒れて苦しそうにうめき声を上げた。
(まだ息はある……尋問するか……)
寝転がった敵兵の喉元に剣を突き付けた私は、尋問を始めた。
「おい、指揮を執っているのは誰だ?」
「レ、レスタリア公爵様です……」
「やはりか……」
兵は私の殺気に怯んだようで、すぐに口を割った。
(あのローレンの王にこのようなことが出来るはずない。やはり公爵の仕業か……だとすれば、目的は一体何だ?私の首か?)
「おい、お前たちの目的は一体何なんだ?」
「公子様がお亡くなりになられたので……ウィルベルト王国に復讐するのだと……ローレンの国王陛下は前々からウィルベルト王国を狙っていたみたいですが……」
「復讐……そうか……」
公爵は家族をとても大事に想っていた。
息子が私の手によって倒されたのを聞き、戦争を仕掛けたということだろうか。
(考えがぶっ飛んでるな……家族以外の命はどうだって良いというのか?)
現にウィルベルト王国では多くの血が流れ、ローレンの兵士たちも次々と亡くなっている。
当の本人はそのことに対して罪悪感など無いのだろう。
だからこそ、このような残酷な真似ができるのだ。
(あの男を……これ以上放っておいたら危険だ……)
アイツがこの国の頂点に立つなど言語道断だが、このまま野放しにしておくのも危ない。
そんなことを考えていると、私の足元で寝転がっていた兵士が顔を手で覆って泣き始めた。
「ああ……私はもう終わりだ……」
「……?さっきから何を言っているんだ?」
私が尋ねると、男は絶望の表情でこう答えた。
「任務は遂行出来なかったし……間違いなく公爵様に消される……」
「消される?もしかしてお前、レスタリア公爵家の騎士か?」
「はい……貴方はレオン国王陛下でしょう?」
「……気付いていたんだな」
「公爵様から要注意人物だと聞かされていましたから」
男の言葉が妙に引っ掛かった私は、詳しいことを尋ねた。
「任務とは一体何のことだ?」
「公爵夫人をあの別邸から安全な場所に避難させることです……失敗したらただでは済まさないと怖い顔で公爵様が……」
「夫人?何を言っている、夫人はもう……」
亡くなっている、と言いかけて私はハッとなり、言葉を止めた。
(……公爵はまだ公爵夫人が生きていると思っている?)
――これは使えるかもしれない。
この勘違いを利用して、公爵を罠に嵌められないだろうか。
「おいお前、私に協力しろ。作戦に成功したら命は助けてやる」
「え、本当ですか!」
「ああ、約束しよう」
その瞬間、男は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがとうございます!!!大体、最初から反対だったんですよ!こんな無意味な戦争!私には大切な家族だっているのに!」
「ハハハ、公爵家側にもまともな考えを持つ人間がいたとはな」
私はニヤリとほくそ笑んだ。
(見えてきたぞ、あの男を倒す方法!)
飛び降りたときに傷付いた足が未だに痛む。
しかし、治療などしている暇はない。
誰かに頼っていてばかりではダメだ。
自分の力で何とかしなければならない。
私はこのウィルベルト王国の国王なのだから。
今騎士たちは必死に戦っている。
国王だからと守られているわけにはいかないのである。
「遅い!!!」
「ぐあっ!!!」
そう叫びながら、私は交戦中だったローレンの兵士の体を斜めに切り伏せた。
男は床に倒れて苦しそうにうめき声を上げた。
(まだ息はある……尋問するか……)
寝転がった敵兵の喉元に剣を突き付けた私は、尋問を始めた。
「おい、指揮を執っているのは誰だ?」
「レ、レスタリア公爵様です……」
「やはりか……」
兵は私の殺気に怯んだようで、すぐに口を割った。
(あのローレンの王にこのようなことが出来るはずない。やはり公爵の仕業か……だとすれば、目的は一体何だ?私の首か?)
「おい、お前たちの目的は一体何なんだ?」
「公子様がお亡くなりになられたので……ウィルベルト王国に復讐するのだと……ローレンの国王陛下は前々からウィルベルト王国を狙っていたみたいですが……」
「復讐……そうか……」
公爵は家族をとても大事に想っていた。
息子が私の手によって倒されたのを聞き、戦争を仕掛けたということだろうか。
(考えがぶっ飛んでるな……家族以外の命はどうだって良いというのか?)
現にウィルベルト王国では多くの血が流れ、ローレンの兵士たちも次々と亡くなっている。
当の本人はそのことに対して罪悪感など無いのだろう。
だからこそ、このような残酷な真似ができるのだ。
(あの男を……これ以上放っておいたら危険だ……)
アイツがこの国の頂点に立つなど言語道断だが、このまま野放しにしておくのも危ない。
そんなことを考えていると、私の足元で寝転がっていた兵士が顔を手で覆って泣き始めた。
「ああ……私はもう終わりだ……」
「……?さっきから何を言っているんだ?」
私が尋ねると、男は絶望の表情でこう答えた。
「任務は遂行出来なかったし……間違いなく公爵様に消される……」
「消される?もしかしてお前、レスタリア公爵家の騎士か?」
「はい……貴方はレオン国王陛下でしょう?」
「……気付いていたんだな」
「公爵様から要注意人物だと聞かされていましたから」
男の言葉が妙に引っ掛かった私は、詳しいことを尋ねた。
「任務とは一体何のことだ?」
「公爵夫人をあの別邸から安全な場所に避難させることです……失敗したらただでは済まさないと怖い顔で公爵様が……」
「夫人?何を言っている、夫人はもう……」
亡くなっている、と言いかけて私はハッとなり、言葉を止めた。
(……公爵はまだ公爵夫人が生きていると思っている?)
――これは使えるかもしれない。
この勘違いを利用して、公爵を罠に嵌められないだろうか。
「おいお前、私に協力しろ。作戦に成功したら命は助けてやる」
「え、本当ですか!」
「ああ、約束しよう」
その瞬間、男は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがとうございます!!!大体、最初から反対だったんですよ!こんな無意味な戦争!私には大切な家族だっているのに!」
「ハハハ、公爵家側にもまともな考えを持つ人間がいたとはな」
私はニヤリとほくそ笑んだ。
(見えてきたぞ、あの男を倒す方法!)
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