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60 暗殺者集団
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それから私はヴェロニカ公爵と共にクロードを探し続けた。
そして人通りの少ない王都の路地裏でようやく彼を見つけることが出来た。
「クロード!!!」
「!」
私の声にクロードは振り返った。
彼は私を見て驚いた顔をしていた。
「陛下……?」
「無事でよかった……」
何ともなさそうなクロードを見て私は安堵の息を吐いた。
ひとまず何もされていないようで良かった。
しかし、どうしても納得いかないことがある。
「お前、何で一人で外に出たりしたんだ!公爵がお前の裏切りに気付いていないはずがないだろう!こんなことしてたら本当に殺されるぞ!」
「……」
それを聞いたクロードは黙り込んだ。
「どうして……そんなに心配してくださるんですか……」
「……?何を言い出すかと思えば…………………言っただろう、お前の力が必要なんだと。お前に死なれては困るんだ」
「陛下……」
私のその言葉にクロードの唇が僅かに震えた。
「さぁ、早く戻ろう。お前がここにいることが知られれば間違いなく公爵がお前を消しに来るぞ」
私はそう言いながらクロードの腕を引っ張って王宮に連れ戻そうとした。
しかし、クロードは微動だにしなかった。
「……陛下」
「……おい、何だ。一体どうし――」
そんなクロードを不審に思い、彼の顔を覗き込んだそのとき――
「……もう、手遅れです」
「……何?」
暗闇の中で、クロードは悲しげに笑った。
(……何だ、その顔は)
まるで全てを諦めているかのような顔。
被害者たちのために生きて罪を償うのではなかったのか。
それなのにどうしてそんな辛そうな表情をしているのか。
彼のその言葉の意味に気付いたのは、それからすぐのことだった。
――ガサガサ
「!」
突然周囲から物音がした。
(何だ!?)
私は慌てて辺りを見渡した。
「陛下!」
その音に気付いたヴェロニカ公爵が鞘から剣を抜き、私を守るようにして前に出た。
何があるか分からない。
私もすぐに腰の剣に手をかけて迎撃の準備をした。
それからしばらくして、静寂の中で複数の足音が響き渡った。
(……やっぱりか)
暗闇から浮かび上がってきたのは黒いローブを被った五人の暗殺者たちだった。
その光景を見たヴェロニカ公爵の顔が曇っていく。
「これは一体……」
「……どうやらクロードを本気で消しに来たようだな」
たった一人の男を始末するために五人もの暗殺者を送り込むだなんて、あの男は本当に用意周到なようだ。
ヴェロニカ公爵は焦った表情をしながらも私の方を振り返って声を上げた。
「陛下、お逃げください。ここは私が……」
「――どいてろ」
「へ、陛下……?」
私はヴェロニカ公爵の隣に立ち、腰の剣を抜いた。
「あいにく私は守られるほど弱くはない」
「で、ですが……!」
「たった一人でこの人数を相手する気か?いくらお前でも多勢に無勢。勝ち目は無いぞ」
「……」
その言葉に、ヴェロニカ公爵は黙り込んだ。
元より守られるつもりなど毛頭無かった。
剣術は私の唯一の長所だったから。
「私が負けることは無い。だからお前も私のことは気にせずに戦え」
「陛下……」
そして、その言葉を皮切りに戦いが始まった――
五人のうちの一人の男がヴェロニカ公爵に向かって駆け出した。
「!」
それに気付いた公爵が持っていた剣でその攻撃を受けた。
剣身が激しくぶつかり合ってガチガチと音を立てた。
私はその戦いを横目でじっと見ていた。
(この男、相当な手練れだな)
男の剣技を見た私は、そのことが一瞬で分かった。
ヴェロニカ公爵も強いはずだが、そんな公爵とほぼ互角だったのだから。
そのとき、他の男が交戦中の公爵に向かって剣を振り上げた。
「くっ!」
それに気付いた公爵が冷や汗を流した。
しかしこんなときこそ私の出番である。
「――おい、男の一対一に水を差すな」
私は、戦闘中のヴェロニカ公爵に襲い掛かろうとしていた男の背後を思いきり切りつけた。
「ギャアアア!!!」
男は断末魔をあげて倒れた。
どうやら今の一撃で完全に意識を失ったようだ。
後ろからだなんて卑怯だと言われるかもしれないが、一人相手に五人で挑もうとしている時点で既に卑怯の度を超えている。
このくらいは許容範囲だろう。
ふと後ろにいたクロードを見ると、無我夢中で暗殺者と戦っている私とヴェロニカ公爵をただじっと見つめていた。
「おい、何してる?」
「あ……」
その声に気付いたクロードが私を見た。
「お前も戦え」
「で、ですが……」
「こんなところで死ぬ気か?公爵家の被害者たちに罪を償いたくないのか?」
「……!」
クロードの目が丸くなり、瞳が大きく揺れた。
「償いたい、です」
それだけ言うとクロードは懐に隠し持っていた短剣を取り出して暗殺者たちに反撃を開始した。
「!」
短剣を手にして戦うクロードに対して暗殺者たちは長剣だった。
そのため一見クロードが不利であるように見えた。
男は剣を大きく振りかぶり、クロードを斬りつけようとした。
しかし、クロードはそれを難無く避けた。
「何ッ!?」
男の驚いたような声が聞こえてくる。
そうなるのも当然だろう。
ただの執事がここまで強いとは誰が予想出来ただろうか。
男の動きが一瞬止まった。
クロードはその隙を見逃すことなく暗殺者の懐に入り込んだ。
そして、持っていた短剣で男の腹部を深く突き刺した。
「グガアアアアアア!!!」
腹を深く刺された男は口から血を吐いてその場に倒れ込んだ。
「短剣を隠し持っている執事とは……恐ろしいな」
「……陛下」
どうやらクロードはなかなか優秀な男なようだ。
幼少の頃からレスタリア公爵家で鍛え上げられただけある。
一人はクロードが息の根を止め、もう一人は今もなおヴェロニカ公爵と交戦中である。
(……私の出番だな)
私は剣を手にしたまま残る二人の男の元へと駆け出した。
「えっ……速ッ!!!」
五人のうちの二人が一瞬でやられて呆気に取られていた男は完全に反応が遅れていた。
「遅い!」
私はそのまま一人の男を斬り捨てた。
それに気付いたもう一人が私を攻撃しようと剣を振り上げた。
「!」
私はその一撃を楽々躱すと男のみぞおちに蹴りを入れた。
「ぐっ!」
男はそのまま後ろに倒れ込み、苦しそうにもがいた。
私はそんな男にゆっくりと近付いて低い声で尋ねた。
「おい、お前たちを雇ったのは誰だ」
「ハッ、知らねえな……」
「そうか、ならば仕方ない」
私はそう言うと男の体に剣を突き付けた。
このとき、中心はわざと外してある。
「どれだけ耐えられるか見物だな」
「……ッ!」
言わなければ拷問されるということを肌で感じ取ったのか男はすぐに口を開いた。
「レ、レスタリア公爵家だ!公爵家に言われたんだ!裏切者の執事を殺せと!」
「貴重な情報感謝する。せめてもの礼として苦しまずに逝かせてやろう」
「お、おい……嘘だろ……」
そして私は男の心臓に剣を突き立てた。
男は悲鳴を上げる暇もなく一瞬で死んでいった。
「……」
王とは、時に残忍さも必要なのである。
ふとヴェロニカ公爵の方を見ると、彼もまた既に戦いを終えていたようで苦戦しながらも一人の暗殺者を撃破していた。
こうして、公爵とクロードのおかげでこの戦いはかなり楽に終わった。
(ふぅ……何とか守りきれたな)
その頃には既に床に暗殺者たちの骸が転がっていた。
私はその骸をじっと見つめながら口を開いた。
「おい、聞いたか?」
「はい、これで公爵家を断罪することが出来ますね」
「そうだな」
私はこれを理由に公爵家の者を捕縛するつもりだった。
王である自分に剣を向け、さらには殺そうとしたのだから家門を没落させる理由としては十分だった。
しかし、この場に予期せぬ人物が現れた。
「なッ!?何故国王陛下とヴェロニカ公爵がここにいるんだッ!?」
「……!」
私たちはすぐに声のした方に顔を向けた。
そこにいたのは――
「お前は……………………………レスタリア公子か!?」
――マクシミリアン・レスタリア
レスタリア公爵家の長男で、公爵の実の息子だった。
そして人通りの少ない王都の路地裏でようやく彼を見つけることが出来た。
「クロード!!!」
「!」
私の声にクロードは振り返った。
彼は私を見て驚いた顔をしていた。
「陛下……?」
「無事でよかった……」
何ともなさそうなクロードを見て私は安堵の息を吐いた。
ひとまず何もされていないようで良かった。
しかし、どうしても納得いかないことがある。
「お前、何で一人で外に出たりしたんだ!公爵がお前の裏切りに気付いていないはずがないだろう!こんなことしてたら本当に殺されるぞ!」
「……」
それを聞いたクロードは黙り込んだ。
「どうして……そんなに心配してくださるんですか……」
「……?何を言い出すかと思えば…………………言っただろう、お前の力が必要なんだと。お前に死なれては困るんだ」
「陛下……」
私のその言葉にクロードの唇が僅かに震えた。
「さぁ、早く戻ろう。お前がここにいることが知られれば間違いなく公爵がお前を消しに来るぞ」
私はそう言いながらクロードの腕を引っ張って王宮に連れ戻そうとした。
しかし、クロードは微動だにしなかった。
「……陛下」
「……おい、何だ。一体どうし――」
そんなクロードを不審に思い、彼の顔を覗き込んだそのとき――
「……もう、手遅れです」
「……何?」
暗闇の中で、クロードは悲しげに笑った。
(……何だ、その顔は)
まるで全てを諦めているかのような顔。
被害者たちのために生きて罪を償うのではなかったのか。
それなのにどうしてそんな辛そうな表情をしているのか。
彼のその言葉の意味に気付いたのは、それからすぐのことだった。
――ガサガサ
「!」
突然周囲から物音がした。
(何だ!?)
私は慌てて辺りを見渡した。
「陛下!」
その音に気付いたヴェロニカ公爵が鞘から剣を抜き、私を守るようにして前に出た。
何があるか分からない。
私もすぐに腰の剣に手をかけて迎撃の準備をした。
それからしばらくして、静寂の中で複数の足音が響き渡った。
(……やっぱりか)
暗闇から浮かび上がってきたのは黒いローブを被った五人の暗殺者たちだった。
その光景を見たヴェロニカ公爵の顔が曇っていく。
「これは一体……」
「……どうやらクロードを本気で消しに来たようだな」
たった一人の男を始末するために五人もの暗殺者を送り込むだなんて、あの男は本当に用意周到なようだ。
ヴェロニカ公爵は焦った表情をしながらも私の方を振り返って声を上げた。
「陛下、お逃げください。ここは私が……」
「――どいてろ」
「へ、陛下……?」
私はヴェロニカ公爵の隣に立ち、腰の剣を抜いた。
「あいにく私は守られるほど弱くはない」
「で、ですが……!」
「たった一人でこの人数を相手する気か?いくらお前でも多勢に無勢。勝ち目は無いぞ」
「……」
その言葉に、ヴェロニカ公爵は黙り込んだ。
元より守られるつもりなど毛頭無かった。
剣術は私の唯一の長所だったから。
「私が負けることは無い。だからお前も私のことは気にせずに戦え」
「陛下……」
そして、その言葉を皮切りに戦いが始まった――
五人のうちの一人の男がヴェロニカ公爵に向かって駆け出した。
「!」
それに気付いた公爵が持っていた剣でその攻撃を受けた。
剣身が激しくぶつかり合ってガチガチと音を立てた。
私はその戦いを横目でじっと見ていた。
(この男、相当な手練れだな)
男の剣技を見た私は、そのことが一瞬で分かった。
ヴェロニカ公爵も強いはずだが、そんな公爵とほぼ互角だったのだから。
そのとき、他の男が交戦中の公爵に向かって剣を振り上げた。
「くっ!」
それに気付いた公爵が冷や汗を流した。
しかしこんなときこそ私の出番である。
「――おい、男の一対一に水を差すな」
私は、戦闘中のヴェロニカ公爵に襲い掛かろうとしていた男の背後を思いきり切りつけた。
「ギャアアア!!!」
男は断末魔をあげて倒れた。
どうやら今の一撃で完全に意識を失ったようだ。
後ろからだなんて卑怯だと言われるかもしれないが、一人相手に五人で挑もうとしている時点で既に卑怯の度を超えている。
このくらいは許容範囲だろう。
ふと後ろにいたクロードを見ると、無我夢中で暗殺者と戦っている私とヴェロニカ公爵をただじっと見つめていた。
「おい、何してる?」
「あ……」
その声に気付いたクロードが私を見た。
「お前も戦え」
「で、ですが……」
「こんなところで死ぬ気か?公爵家の被害者たちに罪を償いたくないのか?」
「……!」
クロードの目が丸くなり、瞳が大きく揺れた。
「償いたい、です」
それだけ言うとクロードは懐に隠し持っていた短剣を取り出して暗殺者たちに反撃を開始した。
「!」
短剣を手にして戦うクロードに対して暗殺者たちは長剣だった。
そのため一見クロードが不利であるように見えた。
男は剣を大きく振りかぶり、クロードを斬りつけようとした。
しかし、クロードはそれを難無く避けた。
「何ッ!?」
男の驚いたような声が聞こえてくる。
そうなるのも当然だろう。
ただの執事がここまで強いとは誰が予想出来ただろうか。
男の動きが一瞬止まった。
クロードはその隙を見逃すことなく暗殺者の懐に入り込んだ。
そして、持っていた短剣で男の腹部を深く突き刺した。
「グガアアアアアア!!!」
腹を深く刺された男は口から血を吐いてその場に倒れ込んだ。
「短剣を隠し持っている執事とは……恐ろしいな」
「……陛下」
どうやらクロードはなかなか優秀な男なようだ。
幼少の頃からレスタリア公爵家で鍛え上げられただけある。
一人はクロードが息の根を止め、もう一人は今もなおヴェロニカ公爵と交戦中である。
(……私の出番だな)
私は剣を手にしたまま残る二人の男の元へと駆け出した。
「えっ……速ッ!!!」
五人のうちの二人が一瞬でやられて呆気に取られていた男は完全に反応が遅れていた。
「遅い!」
私はそのまま一人の男を斬り捨てた。
それに気付いたもう一人が私を攻撃しようと剣を振り上げた。
「!」
私はその一撃を楽々躱すと男のみぞおちに蹴りを入れた。
「ぐっ!」
男はそのまま後ろに倒れ込み、苦しそうにもがいた。
私はそんな男にゆっくりと近付いて低い声で尋ねた。
「おい、お前たちを雇ったのは誰だ」
「ハッ、知らねえな……」
「そうか、ならば仕方ない」
私はそう言うと男の体に剣を突き付けた。
このとき、中心はわざと外してある。
「どれだけ耐えられるか見物だな」
「……ッ!」
言わなければ拷問されるということを肌で感じ取ったのか男はすぐに口を開いた。
「レ、レスタリア公爵家だ!公爵家に言われたんだ!裏切者の執事を殺せと!」
「貴重な情報感謝する。せめてもの礼として苦しまずに逝かせてやろう」
「お、おい……嘘だろ……」
そして私は男の心臓に剣を突き立てた。
男は悲鳴を上げる暇もなく一瞬で死んでいった。
「……」
王とは、時に残忍さも必要なのである。
ふとヴェロニカ公爵の方を見ると、彼もまた既に戦いを終えていたようで苦戦しながらも一人の暗殺者を撃破していた。
こうして、公爵とクロードのおかげでこの戦いはかなり楽に終わった。
(ふぅ……何とか守りきれたな)
その頃には既に床に暗殺者たちの骸が転がっていた。
私はその骸をじっと見つめながら口を開いた。
「おい、聞いたか?」
「はい、これで公爵家を断罪することが出来ますね」
「そうだな」
私はこれを理由に公爵家の者を捕縛するつもりだった。
王である自分に剣を向け、さらには殺そうとしたのだから家門を没落させる理由としては十分だった。
しかし、この場に予期せぬ人物が現れた。
「なッ!?何故国王陛下とヴェロニカ公爵がここにいるんだッ!?」
「……!」
私たちはすぐに声のした方に顔を向けた。
そこにいたのは――
「お前は……………………………レスタリア公子か!?」
――マクシミリアン・レスタリア
レスタリア公爵家の長男で、公爵の実の息子だった。
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