21 / 87
21 凶報
しおりを挟む
「……」
あの後、レスタリア公爵はフレイアを連れてどこかへ行ってしまった。
私はというと、しばらくその場から動けなくなって今は執務室にいる。
私は部屋で先ほどあったことを思い出していた。
『これで私たちまた一緒ですね、レオン様』
(……ッ!!!)
思い出すだけでゾワッとした。
あのときフレイアが浮かべた笑みは前にホワイト侯爵令嬢が一瞬だけ見せた悪魔のような微笑みにそっくりだった。
私の癒しだったフレイアも結局は私が最も嫌悪するものと変わらなかったのだと改めて思った。
(また一緒だなんて冗談じゃない……!)
王宮では既にレスタリア公爵がフレイアの後ろ盾になったということが広まっていた。
そのせいか王宮に勤めている侍女たちは皆彼女を恐れるようになった。
ウィルベルト王国の貴族であれば、誰もがレスタリア公爵の恐ろしさを知っているから。
もしこのことが国中に広まれば侍女だけではなくほとんどの貴族がフレイアを恐れるようになるだろう。
(……………私が、何とかしなければ)
私は執務室で必死に考えを巡らせていた。
レスタリア公爵家に対抗できるのはウィルベルト王国では王家の他にもう一つの公爵家であるヴェロニカ公爵家しかない。
(……ヴェロニカ公爵家が協力してくれるとは思えないし、私一人でどうにかするしかないな)
まさかフレイアがレスタリア公爵と関わりを持っていたなんて知らなかった。
平民一人追い出すなんて簡単なことだと思っていたが、これでフレイアを簡単には追い出せなくなった。
平民と公爵令嬢では訳が違う。
レスタリア公爵の言う通り、フレイアが公爵令嬢なら今までの行動は全て罪に問われない。
貴族のトップである公爵家の令嬢が下位貴族や平民を虐げたところで大した問題にはならないのだ。
もしフレイアがレスタリア公爵家の養女となれば、彼女はウィルベルト王国で一番身分の高い令嬢ということになる。
(…………絶対にダメだ)
フレイアが公爵令嬢になるなどあってはならない。
きっと今まで以上に権力を振りかざし好き放題するに違いないからだ。
それにレスタリア公爵はフレイアの後ろ盾になった理由を誤魔化したが、何かあるはずだ。
あの打算的な公爵が何の理由もなくフレイアの味方になるはずがない。
何か仕掛けてくるかもしれない。
気を付けなければ。
認めたくないが、頭の良さは私より公爵の方が上だろう。
油断するとすぐに足元をすくわれそうだ。
あの場でフレイアを庇った時点でこの先私と敵対する可能性が高い。
(はぁ~……)
私は頭を抱えた。
ウィルベルト王国で最も厄介な相手を敵に回してしまったからだ。
フランチェスカが亡くなったすぐ後にこんなことになるだなんて。
「……」
そのときふと思った。
(………………こんな時、フランチェスカならどうしただろうか)
もしフランチェスカがまだ生きていて、王妃として私の隣にいたとしたら。
彼女は私と違って優秀だから、きっとすぐに解決策を見つけるだろう。
そして私の横で的確なアドバイスをしてくれたのだろう。
しかし彼女はもういない。
そのことを考えると、胸がギュッと締め付けられた。
(…………………フランチェスカ、会いたいよ)
――ドタドタドタドタ
「……」
そのとき、部屋の外から物凄い足音が聞こえてきた。
足音を聞いた私はげんなりした。
(……………またか。今日だけで二回目だぞ)
「陛下!!!大変です!!!」
部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのはやはり侍従だった。
「…………今度は何だ」
ハァハァと息を切らしている侍従に私は冷静に尋ねた。
(フレイアがまた何かしでかしたのか?…………いや、何か変だ)
侍従がこんなにも慌てているのだからフレイアに関することだと思ったが、それにしては侍従の様子がいつもと違った。
体は震えていて今にも泣きそうな顔をしている。
「へ、陛下……」
「だから何なんだ」
「お、落ち着いて聞いてください」
(……一体何だというんだ)
侍従は何とか体の震えを抑えた後、私を真っ直ぐに見つめてから口を開いた。
「先王陛下と、先代王妃陛下が………………
――お亡くなりになられたそうです……………!」
「な、何だと……………?」
(亡くなった………………?父上と、母上が………………?)
私はこのときすぐに侍従の言っていることの意味を理解することが出来なかった。
そしてそれと同時に、目の前が真っ暗になった。
あの後、レスタリア公爵はフレイアを連れてどこかへ行ってしまった。
私はというと、しばらくその場から動けなくなって今は執務室にいる。
私は部屋で先ほどあったことを思い出していた。
『これで私たちまた一緒ですね、レオン様』
(……ッ!!!)
思い出すだけでゾワッとした。
あのときフレイアが浮かべた笑みは前にホワイト侯爵令嬢が一瞬だけ見せた悪魔のような微笑みにそっくりだった。
私の癒しだったフレイアも結局は私が最も嫌悪するものと変わらなかったのだと改めて思った。
(また一緒だなんて冗談じゃない……!)
王宮では既にレスタリア公爵がフレイアの後ろ盾になったということが広まっていた。
そのせいか王宮に勤めている侍女たちは皆彼女を恐れるようになった。
ウィルベルト王国の貴族であれば、誰もがレスタリア公爵の恐ろしさを知っているから。
もしこのことが国中に広まれば侍女だけではなくほとんどの貴族がフレイアを恐れるようになるだろう。
(……………私が、何とかしなければ)
私は執務室で必死に考えを巡らせていた。
レスタリア公爵家に対抗できるのはウィルベルト王国では王家の他にもう一つの公爵家であるヴェロニカ公爵家しかない。
(……ヴェロニカ公爵家が協力してくれるとは思えないし、私一人でどうにかするしかないな)
まさかフレイアがレスタリア公爵と関わりを持っていたなんて知らなかった。
平民一人追い出すなんて簡単なことだと思っていたが、これでフレイアを簡単には追い出せなくなった。
平民と公爵令嬢では訳が違う。
レスタリア公爵の言う通り、フレイアが公爵令嬢なら今までの行動は全て罪に問われない。
貴族のトップである公爵家の令嬢が下位貴族や平民を虐げたところで大した問題にはならないのだ。
もしフレイアがレスタリア公爵家の養女となれば、彼女はウィルベルト王国で一番身分の高い令嬢ということになる。
(…………絶対にダメだ)
フレイアが公爵令嬢になるなどあってはならない。
きっと今まで以上に権力を振りかざし好き放題するに違いないからだ。
それにレスタリア公爵はフレイアの後ろ盾になった理由を誤魔化したが、何かあるはずだ。
あの打算的な公爵が何の理由もなくフレイアの味方になるはずがない。
何か仕掛けてくるかもしれない。
気を付けなければ。
認めたくないが、頭の良さは私より公爵の方が上だろう。
油断するとすぐに足元をすくわれそうだ。
あの場でフレイアを庇った時点でこの先私と敵対する可能性が高い。
(はぁ~……)
私は頭を抱えた。
ウィルベルト王国で最も厄介な相手を敵に回してしまったからだ。
フランチェスカが亡くなったすぐ後にこんなことになるだなんて。
「……」
そのときふと思った。
(………………こんな時、フランチェスカならどうしただろうか)
もしフランチェスカがまだ生きていて、王妃として私の隣にいたとしたら。
彼女は私と違って優秀だから、きっとすぐに解決策を見つけるだろう。
そして私の横で的確なアドバイスをしてくれたのだろう。
しかし彼女はもういない。
そのことを考えると、胸がギュッと締め付けられた。
(…………………フランチェスカ、会いたいよ)
――ドタドタドタドタ
「……」
そのとき、部屋の外から物凄い足音が聞こえてきた。
足音を聞いた私はげんなりした。
(……………またか。今日だけで二回目だぞ)
「陛下!!!大変です!!!」
部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのはやはり侍従だった。
「…………今度は何だ」
ハァハァと息を切らしている侍従に私は冷静に尋ねた。
(フレイアがまた何かしでかしたのか?…………いや、何か変だ)
侍従がこんなにも慌てているのだからフレイアに関することだと思ったが、それにしては侍従の様子がいつもと違った。
体は震えていて今にも泣きそうな顔をしている。
「へ、陛下……」
「だから何なんだ」
「お、落ち着いて聞いてください」
(……一体何だというんだ)
侍従は何とか体の震えを抑えた後、私を真っ直ぐに見つめてから口を開いた。
「先王陛下と、先代王妃陛下が………………
――お亡くなりになられたそうです……………!」
「な、何だと……………?」
(亡くなった………………?父上と、母上が………………?)
私はこのときすぐに侍従の言っていることの意味を理解することが出来なかった。
そしてそれと同時に、目の前が真っ暗になった。
209
お気に入りに追加
7,398
あなたにおすすめの小説
元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。
あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。
わあああぁ 人々の歓声が上がる。そして王は言った。
「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。
「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」
彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。
音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。
幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。
やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。
すっかり諦めた彼女は見合いをすることに……
だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。
二人の心は交わることがあるのか。
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
飽きて捨てられた私でも未来の侯爵様には愛されているらしい。
希猫 ゆうみ
恋愛
王立学園の卒業を控えた伯爵令嬢エレノアには婚約者がいる。
同学年で幼馴染の伯爵令息ジュリアンだ。
二人はベストカップル賞を受賞するほど完璧で、卒業後すぐ結婚する予定だった。
しかしジュリアンは新入生の男爵令嬢ティナに心を奪われてエレノアを捨てた。
「もう飽きたよ。お前との婚約は破棄する」
失意の底に沈むエレノアの視界には、校内で仲睦まじく過ごすジュリアンとティナの姿が。
「ねえ、ジュリアン。あの人またこっち見てるわ」
ティナはエレノアを敵視し、陰で嘲笑うようになっていた。
そんな時、エレノアを癒してくれたのはミステリアスなマクダウェル侯爵令息ルークだった。
エレノアの深く傷つき鎖された心は次第にルークに傾いていく。
しかしティナはそれさえ気に食わないようで……
やがてティナの本性に気づいたジュリアンはエレノアに復縁を申し込んでくる。
「君はエレノアに相応しくないだろう」
「黙れ、ルーク。エレノアは俺の女だ」
エレノアは決断する……!
この婚約破棄は、神に誓いますの
編端みどり
恋愛
隣国のスーパーウーマン、エミリー様がいきなり婚約破棄された!
やばいやばい!!
エミリー様の扇子がっ!!
怒らせたらこの国終わるって!
なんとかお怒りを鎮めたいモブ令嬢視点でお送りします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる