9 / 32
9 絶望
しおりを挟む
「ウィ、ウィルベルト……何故お前がここに……!」
「……」
彼は冷たい目で私たちをじっと見つめていた。
「旦那様……!」
「こ、これは違う……ただの事故だ!」
突然息子が登場して焦った義父は、ソファに寝転ぶ私を置いてそそくさと部屋を出て行った。
義父が去り、部屋の中には私とウィルベルトの二人だけになった。
(た、助けてくれたのかしら……?)
彼に助けられるとは思わなかった。
ひとまず助けられたことに対する礼を言わなければ。
ゆっくりとソファから起き上がり、彼に近付いて声をかけた。
「あ、あの……助けてくださってありがとうございま……」
「――父上を誘惑するとは、何て下品な女なんだ」
「………………え?」
返ってきたのは冷たい声と蔑みの眼差しだった。
ウィルベルトはどうやら私から誘ったのだと勘違いしているようだ。
(私がお義父様を誘惑しただなんて……そんなの誤解よ……)
このままではいけないと思った私は慌てて口を開いた。
「ちょっと待ってください……私は誘惑だなんて……」
「私からの愛を得られないからと、父上を狙ったのか?それともあの忌まわしいお前の父親に言われてやったのか?」
「だ、旦那様……!」
「汚い手で触るな!!!」
「キャアッ!!!」
ウィルベルトは縋りつくように彼の腕に触れた私を強く突き飛ばした。
彼に押されて後ろに倒れた私は床に尻もちをついた。
「ウッ……」
当然、彼が手を差し伸べてくれるわけなどなく、ただただ凍え切った目で私を見下ろしていた。
「権力を使って私たちを引き裂いておきながら、父上まで狙うとは!!!」
「で、ですからそれは誤解……」
「黙れ!!!私がお前を愛することなど絶対に無い!お前のせいでオーレリアがどれだけ悲しんだか……」
彼の言うオーレリアというのは私と結婚する直前まで交際していた元恋人のことだ。
男爵家の令嬢で、ウィルベルトと愛し合っていたが、身分が低いがゆえに彼と結婚出来なかった女性。
彼女もまたこの結婚の被害者ではあるが、何故私がそのように言われなければならないのか。
「ここで生き残りたければ私からの愛など求めるな。お前では絶対にオーレリアの代わりになどなれない」
「……」
突き飛ばされた拍子に打ち付けた箇所がズキズキと痛む。
私が怪我をしていることなど彼は気にも留めていないのだろう。
これ以上は何を言っても無駄かもしれない。
そう考えた私はじっと黙り込んで夫からの罵声を受け止めた。
「これだけ言っても何の反応も無いとは……やはりあのオーブリー伯爵の娘だな」
「……」
彼は再び軽蔑した目で私を見ると、近くにあった扉から部屋を出て行った。
「……」
一人になった私は、痛む体をそっと起こした。
あまりの仕打ちに涙が溢れてきそうになったが、ぐっと堪えた。
「……」
彼は冷たい目で私たちをじっと見つめていた。
「旦那様……!」
「こ、これは違う……ただの事故だ!」
突然息子が登場して焦った義父は、ソファに寝転ぶ私を置いてそそくさと部屋を出て行った。
義父が去り、部屋の中には私とウィルベルトの二人だけになった。
(た、助けてくれたのかしら……?)
彼に助けられるとは思わなかった。
ひとまず助けられたことに対する礼を言わなければ。
ゆっくりとソファから起き上がり、彼に近付いて声をかけた。
「あ、あの……助けてくださってありがとうございま……」
「――父上を誘惑するとは、何て下品な女なんだ」
「………………え?」
返ってきたのは冷たい声と蔑みの眼差しだった。
ウィルベルトはどうやら私から誘ったのだと勘違いしているようだ。
(私がお義父様を誘惑しただなんて……そんなの誤解よ……)
このままではいけないと思った私は慌てて口を開いた。
「ちょっと待ってください……私は誘惑だなんて……」
「私からの愛を得られないからと、父上を狙ったのか?それともあの忌まわしいお前の父親に言われてやったのか?」
「だ、旦那様……!」
「汚い手で触るな!!!」
「キャアッ!!!」
ウィルベルトは縋りつくように彼の腕に触れた私を強く突き飛ばした。
彼に押されて後ろに倒れた私は床に尻もちをついた。
「ウッ……」
当然、彼が手を差し伸べてくれるわけなどなく、ただただ凍え切った目で私を見下ろしていた。
「権力を使って私たちを引き裂いておきながら、父上まで狙うとは!!!」
「で、ですからそれは誤解……」
「黙れ!!!私がお前を愛することなど絶対に無い!お前のせいでオーレリアがどれだけ悲しんだか……」
彼の言うオーレリアというのは私と結婚する直前まで交際していた元恋人のことだ。
男爵家の令嬢で、ウィルベルトと愛し合っていたが、身分が低いがゆえに彼と結婚出来なかった女性。
彼女もまたこの結婚の被害者ではあるが、何故私がそのように言われなければならないのか。
「ここで生き残りたければ私からの愛など求めるな。お前では絶対にオーレリアの代わりになどなれない」
「……」
突き飛ばされた拍子に打ち付けた箇所がズキズキと痛む。
私が怪我をしていることなど彼は気にも留めていないのだろう。
これ以上は何を言っても無駄かもしれない。
そう考えた私はじっと黙り込んで夫からの罵声を受け止めた。
「これだけ言っても何の反応も無いとは……やはりあのオーブリー伯爵の娘だな」
「……」
彼は再び軽蔑した目で私を見ると、近くにあった扉から部屋を出て行った。
「……」
一人になった私は、痛む体をそっと起こした。
あまりの仕打ちに涙が溢れてきそうになったが、ぐっと堪えた。
234
あなたにおすすめの小説
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
父の後妻に婚約者を盗られたようです。
和泉 凪紗
恋愛
男爵令嬢のアルティナは跡取り娘。素敵な婚約者もいて結婚を待ち遠しく思っている。婚約者のユーシスは最近忙しいとあまり会いに来てくれなくなってしまった。たまに届く手紙を楽しみに待つ日々だ。
そんなある日、父親に弟か妹ができたと嬉しそうに告げられる。父親と後妻の間に子供ができたらしい。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる