愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの

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97 晩餐会の始まり

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「エミリア、久しぶりね!」
「あ、王妃陛下……国王陛下……お久しぶりでございます。エミリア・ログワーツと申します」


晩餐会場に到着して挨拶をした私は、早速失態を犯してしまったことに気が付いた。


(ま、まずい!王妃より先に国王に挨拶しないといけなかったのに!)


国王陛下を前に、顔が青くなっていく。


「エミリア、大丈夫か?」
「ル、ルーク……」


ルークが心配そうに私の顔を覗き込んだ。


(ど、どうしよう……失敗しちゃった……)


顔を真っ青にした私を見て、国王陛下が笑い声を上げた。


「ハハハ、そんなに緊張しなくていい。君のことは聞いているよ。妻と弟と仲良くしてくれているみたいだね」
「あ、はい……陛下」
「ルドウィクに友人が出来るだなんて初めてだな、これからも仲良くしてやってくれ」
「もちろんでございます」


私の声に、陛下がクスリと口元に笑みを浮かべた。


(陛下って……こんなに親しみやすい方だったんだ……)


舞踏会で遠くから見ているときは勝手に怖い印象を抱いていたが、よく笑うし、もしかすると私と出会ったばかりのルークより愛想は良いかもしれない。


「さぁ、二人とも座ってくれ。今日は王子も来ているんだ」


ふと席を見ると、まだ小さいレイラと陛下の子供が椅子に座っていた。


(か、可愛い……!)


席に着いている王子はソワソワしながらこちらの様子をチラチラ窺っていた。
国王陛下の金髪碧眼を受け継いだ天使のように愛らしい子だった。


「――第一王子殿下にご挨拶申し上げます」


第一王子は頭を下げる私とルークを物珍しそうに見つめていた。
最初は私たちのことを怖がっていた王子だったが、あることに気付いた途端顔を綻ばせた。


「お父様と目の色が同じ!」
「……!」


王子が指差したのは国王陛下にそっくりなルークの青い瞳だった。
予想外のことを言われたのか、彼は一度目を丸くした後クスッと微笑んだ。


そして小声で私に呟いた。


「この目の色も案外悪いものじゃないんだな」
「ルーク……」


彼は自身の目の色を先王と同じだと忌み嫌っていた。
そんな彼からこのような言葉が出てくるなんて。


(それにしても王子殿下……まだ小さいのに、しっかりしているのね……)


レイラと陛下の血を受け継いだのなら、それはもう優秀な子になるだろう。
将来が楽しみだ。


「――それでは始めようか」


挨拶を終えた私とルークが席に着くと、料理が運ばれてきた。
晩餐会の始まりのようだ。


(わぁ、美味しそう……!)


運ばれてくる料理に私は目を輝かせた。
さすが王家と言うべきか、伯爵令嬢である私ですら見たことも無いような豪勢な料理ばかりだった。


(あんな高そうな食材、初めてだわ)


完全に料理に目を奪われていた私は、皿をテーブルの上に置いた一人の使用人と腕がぶつかってしまった。


「あ、すみません……」
「い、いえ……こちらこそ……」


彼はそれだけ言うとそそくさと去って行った。


(あれ、あの人どこかで見たことあるような……?)


妙な既視感を覚えたが、王宮に来たときにたまたま見かけただけだろうと気にしないことにした。


「すっごく美味しそうだね、ルーク」
「そうだな」


豪華な料理を前に胸を躍らせる私を見て、ルークが笑いながら答えた。


「――随分仲が良さそうね」
「あ……」


声のした方を見るとレイラがニヤニヤ笑いながらこちらを見ていた。
隣にいた国王陛下も苦笑いを浮かべている。


(ま、待って!何か誤解されてる?)


「ご、誤解です!私たち全くそんな関係じゃないですから……ね?ルーク」
「……」


慌ててルークに同意を求めたが、彼は必死な私をただ真顔で見つめているだけだった。


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