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70 幸せな未来 オリバー視点

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途中、別視点が入ります

***



「だ、旦那様!誤解です!私たちは決してローザ様に嫌がらせをしたりは……」
「黙れ!お前たちのやってることを私が知らないとでも思ったか!前の妻にも似たようなことをしていたんだろう?」
「そ、それは私たちだけでは……」
「とにかく、お前たちは解雇する。即刻出て行け」
「そんな……!」


私は目の前で土下座をする使用人数人をすぐにクビにした。
彼らがどれだけ縋りつこうと、私の意思は変わらない。
コイツらは犯した罪が多すぎたのだ。


(本当に、信用ならないヤツらだな……)


本当ならば私を謀った使用人たちは全員解雇してやりたかった。
しかし新しい使用人を雇うのも時間が掛かる。
ローザが無事に公爵夫人となるまでは我慢しなければならない。


(だが、これで……)


ローザの悩みの種は消えた。
その事実だけで十分だった。


(これでまた以前のように幸せに暮らせるんだ……)


ローザを公爵家に迎え入れる前。
愛する二人と別邸で過ごした時間は本当に幸せなものだった。
面倒な仕事も、公爵という地位も全て忘れられたから。


使用人たちの処罰を終えた私は、ローザとリオの元へ戻るために公爵邸の廊下を歩いていた。
その途中で一人の使用人が声を掛けてきた。


「あ、旦那様……あの……」
「……」


ちょうど使用人に関することでイライラしていた私はギロリと鋭い目を向けた。


「あ……お話ししたいことが……」
「……何だ」


鋭い視線に、使用人はビクリとして体を震わせた。
苛ついているということが見るだけでも伝わってくるのだろう。


「その……ローザ様に関することなのですが……」
「ローザに関することだと?」


どうせくだらないことだと思ったが、ローザについての話なら聞かないわけにもいかなかった。
私はさっさと言えと急かした。


「それが……ローザ様が近頃不審な動きを見せていると……」
「……何?」
「夜中にこっそり部屋を抜け出していたり、気付いたらいなくなっているということも多く……」
「……」


それを聞いた私は、収まりかけていた怒りが再び爆発しそうになった。


(この男までローザを貶めようとしているのか!)


当然、私は使用人の発言を信じなかった。
公爵夫人を虐げるようなヤツらだ。
信用など出来るはずもない。


「お前はクビだ。すぐに出て行け」
「……え!?だ、旦那様!?」


私は呆気に取られる使用人にハッキリとそう告げた。


「ま、待ってください!これは私だけでなく複数の使用人が証言していることで……」


背後で何かを喚いているような気がしたが、私は振り返らずにその場を去った。





***




「ローザ!」
「オリバー!」


使用人を無視して庭園へ戻った私は、椅子から立ち上がったローザを力強く抱き締めた。


「ローザ!君を虐げる使用人たちは解雇しておいた」
「え、本当に……?」
「ああ、だからもう何も心配しなくていい。君はずっとここにいて良いんだ」
「オリバー……」


安心したのか、彼女はしばらくの間私の胸に抱かれていた。


(これでいい……これで以前のように……)


――幸せな暮らしが出来る。
別邸に住まわせていた頃はなかなか家族で外出することも出来ない生活だったが、今は違う。
堂々と二人を連れて歩くことが出来るのだ。
二人が望めばどこへでも連れて行ってあげられる。


(ああ、何て幸せなんだろうか)


ローザを腕に抱き締めた私は、これから来る幸せな未来を確信した。




***



オリバーとローザが抱き合う姿を、傍にいたリオはしばらくじっと見つめていた。
両親のこのような姿を見るのは別に初めてではない。
彼にとって仲睦まじい両親は見慣れた光景だったから。


しかし、リオは今そんな二人を見て困惑していた。


「お母さん……」


オリバー以上にローザと過ごす時間の多かった息子のリオは父親ですら気付かなかった母親の異変に気付いていた。


――オリバーに抱かれているローザの目に、何の感情も宿っていないということに。


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