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69 怒り オリバー視点
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寝込んでしまったあの日から一週間が経過した。
私は今、愛する妻と息子と庭園でお茶会をしていた。
「わぁ!すっごく綺麗なお花!」
庭園に足を踏み入れるのは初めてだったのか、リオは嬉しそうに飛び跳ねていた。
(連れて来て正解だったな……)
今日は本当に良い天気だったため、外で茶でもしようとローザとリオに提案したのだ。
もちろん二人ともその誘いにとても喜んだ。
二人を公爵家に迎え入れてから忙しない日々が続いていたせいか、こんなにも穏やかな時間を過ごすのは何だか新鮮だ。
(前妻が管理していた場所というのが何とも複雑だが……)
リオは喜んでいるが、私はどうもその花たちを見るたびに何とも言えない感情になった。
味方のいないこの公爵邸で、たった一人で庭園にいる姿が思い起こされたからだ。
(……やめよう、考えるのは)
気付けばまたエミリアのことを考えてしまっていた。
最愛の二人が目の前にいるというのに、これではダメだ。
私はどうにかして前妻のことを頭の中からかき消そうと、正面に座っているローザに話しかけた。
「ローザ、ここは本当に綺麗な場所だろう?君が喜ぶと思ったんだ」
「……」
「ローザ?」
「……!何か言った?オリバー」
ローザはボーっとしていたのか、私の話を全く聞いていなかったようだ。
「花が綺麗だろうと……」
「え、あ、あぁ!そうね!とっても素敵だわ!」
彼女は焦ったようにそう言ってお茶を一口飲んだ。
「このお茶もとっても美味しいわ!」
「……」
どうも変だ。
最近のローザは何だか余裕が無いように見える。
公爵夫人になるための勉強はそれほどまでに大変なのだろうか。
(……分からないな)
私には女兄妹も親しくしている令嬢もいなかったため、貴族令嬢がどのようなことを勉強しているのかまるで知らなかった。
しかし、元々市井で平民として過ごしていたローザにとっては本当に難しい内容なのだろうということだけは理解している。
「ローザ、勉強で疲れているのか?」
「え、いや……」
「お母さんはどんなことを学んでいるんですか!」
「え!?い、色々よ!色々」
(……やっぱり疲れているみたいだ)
明らかにいつもと違う彼女の様子に、何だか不安になった。
「ローザ、体調が悪いのか?何か変だぞ?」
「え、あー……」
私が尋ねると、返答に困っているのか彼女は目を泳がせた。
(何でそんな……)
どれだけ考えても、ローザの様子がおかしくなった理由が分からなかった。
「ローザ、何か悩みでもあるのか?」
「そ、それは……」
「何でも言ってくれ。私は君の味方だ」
「オリバー……あのね……」
私がギュッと手を握るとローザは安心したのか、ポツリポツリと話し始めた。
「な、何だって!?」
ローザから聞いた話は衝撃的なものだった。
どうやらローザは一部の使用人たちから嫌がらせを受けているらしい。
全てを聞き終えた私は怒りで頭がおかしくなりそうになった。
(アイツら……!)
前妻だけでは飽き足らず、私の愛するローザにまで手を出すとは。
「ローザ、気付いてやれなくてすまなかった」
「オリバー……」
元々余罪のあるヤツらだ。
これを機に追い出してやろう。
(私をどこまで馬鹿にする気なんだ……!)
私は茶会を中断してすぐに彼女が名前を出した使用人たちの元へと向かった。
その背後でローザが醜悪な笑みを浮かべていることになど、まるで気付かずに――
私は今、愛する妻と息子と庭園でお茶会をしていた。
「わぁ!すっごく綺麗なお花!」
庭園に足を踏み入れるのは初めてだったのか、リオは嬉しそうに飛び跳ねていた。
(連れて来て正解だったな……)
今日は本当に良い天気だったため、外で茶でもしようとローザとリオに提案したのだ。
もちろん二人ともその誘いにとても喜んだ。
二人を公爵家に迎え入れてから忙しない日々が続いていたせいか、こんなにも穏やかな時間を過ごすのは何だか新鮮だ。
(前妻が管理していた場所というのが何とも複雑だが……)
リオは喜んでいるが、私はどうもその花たちを見るたびに何とも言えない感情になった。
味方のいないこの公爵邸で、たった一人で庭園にいる姿が思い起こされたからだ。
(……やめよう、考えるのは)
気付けばまたエミリアのことを考えてしまっていた。
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「……」
「ローザ?」
「……!何か言った?オリバー」
ローザはボーっとしていたのか、私の話を全く聞いていなかったようだ。
「花が綺麗だろうと……」
「え、あ、あぁ!そうね!とっても素敵だわ!」
彼女は焦ったようにそう言ってお茶を一口飲んだ。
「このお茶もとっても美味しいわ!」
「……」
どうも変だ。
最近のローザは何だか余裕が無いように見える。
公爵夫人になるための勉強はそれほどまでに大変なのだろうか。
(……分からないな)
私には女兄妹も親しくしている令嬢もいなかったため、貴族令嬢がどのようなことを勉強しているのかまるで知らなかった。
しかし、元々市井で平民として過ごしていたローザにとっては本当に難しい内容なのだろうということだけは理解している。
「ローザ、勉強で疲れているのか?」
「え、いや……」
「お母さんはどんなことを学んでいるんですか!」
「え!?い、色々よ!色々」
(……やっぱり疲れているみたいだ)
明らかにいつもと違う彼女の様子に、何だか不安になった。
「ローザ、体調が悪いのか?何か変だぞ?」
「え、あー……」
私が尋ねると、返答に困っているのか彼女は目を泳がせた。
(何でそんな……)
どれだけ考えても、ローザの様子がおかしくなった理由が分からなかった。
「ローザ、何か悩みでもあるのか?」
「そ、それは……」
「何でも言ってくれ。私は君の味方だ」
「オリバー……あのね……」
私がギュッと手を握るとローザは安心したのか、ポツリポツリと話し始めた。
「な、何だって!?」
ローザから聞いた話は衝撃的なものだった。
どうやらローザは一部の使用人たちから嫌がらせを受けているらしい。
全てを聞き終えた私は怒りで頭がおかしくなりそうになった。
(アイツら……!)
前妻だけでは飽き足らず、私の愛するローザにまで手を出すとは。
「ローザ、気付いてやれなくてすまなかった」
「オリバー……」
元々余罪のあるヤツらだ。
これを機に追い出してやろう。
(私をどこまで馬鹿にする気なんだ……!)
私は茶会を中断してすぐに彼女が名前を出した使用人たちの元へと向かった。
その背後でローザが醜悪な笑みを浮かべていることになど、まるで気付かずに――
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