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47 再会
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しばらくして、お茶会が終わる時間となった。
「二人とも、忙しいだろうに私の我儘に付き合ってくれて本当にありがとう」
「気にしないで、私だって楽しみだったんだから」
「そうですよエミリアさん。誘っていただき光栄です」
お義姉様はともかく、レイラとはしばらく会えないのだと思うと何だか寂しくなる。
「レイラ、またね」
「ええ、今度私の子供たちを紹介するわ」
「本当!?楽しみにしてるわ!」
私たちは手を取り合って別れの挨拶をした。
「レイラ様、今日は招待していただいてありがとうございました」
「全然!また来てくれると嬉しいわ」
「もちろんです」
お義姉様も随分レイラと打ち解けたようだった。
何だか二人とも名残惜しそうにしている。
「お義姉様、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう」
私たちはレイラに向かって手を振りながらお茶会が行われていたガゼボを出た。
「楽しい時間はあっという間なのですね」
「そうですね、また集まりたいです」
「ふふふ、きっとすぐに叶いますよ」
私とお義姉様は二人並んで会話に花を咲かせながら馬車までの道のりを歩いた。
その途中で私は自身がある忘れ物をしていたことに気が付いた。
「あ……いっけない!」
「エミリアさん、どうかなさったのですか?」
私は懐に入ったままの包み紙に気付いてハッとなった。
(渡すつもりだったのに……忘れちゃってた……)
離婚してから最初に行われた舞踏会で私はレイラやリーシェお義姉様、王宮にいる侍女たちに本当に世話になった。
だからこそお礼をしたいと思い、協力してくれた全ての人にささやかな贈り物を用意したのだ。
しかし、レイラとお義姉様には無事渡せたものの、侍女たちへの贈り物を渡し忘れてしまったのである。
「まぁ、それは……」
「お義姉様、すみません。先に戻っていてもらえますか?」
「分かりました。大事な御用ですものね」
お義姉様は取り出された包み紙を見て察したのか、穏やかな顔で頷いた。
それからお義姉様と一度別れた私は、すぐに来た道を戻った。
(どこにいるか分からないから、レイラに頼もう)
レイラに任せるのが一番良いだろう。
彼女はきっと確実に渡してくれるはずだ。
そんなことを考えながら早足で曲がり角を曲がったそのとき、向かいから歩いてきた人物とぶつかってしまった。
「キャッ!」
「――!」
ぶつかった反動で、私は後ろによろめいてしまった。
「す、すみません……って、貴方は……」
「……」
顔を上げた私は、目の前にいる人物を見て驚いた。
(この人……前に私を助けてくれた人よね……!?)
顔はハッキリと見ていなかったものの、その美しい碧眼だけは見間違いようが無い。
相手も私に見覚えがあるようで、目をパチクリさせていた。
(どうして王宮にいるんだろう……?でもまた会えて良かった!)
私は気まずそうに目を逸らす彼に声をかけた。
「あ、あの!」
「……?」
「前は助けていただいてありがとうございました!」
「……」
彼は何も言わなかった。
(何だろう?どこかで見たことあるような……)
前に一度見たのはたしかだが、何だかそれ以前に会ったことがあるような気がする。
男性はしばらく黙り込んだ後、ようやく言葉を発した。
「……気にするな、ただの気まぐれだ」
「でも、助けてくださったのは事実なので!どうしてもお礼を言いたくて!」
「……」
私がそう言うと、彼は踵を返してこの場を立ち去ろうとした。
「あ、待ってください!」
「……まだ何かあるのか?」
私は思わず彼を引き留めていた。
そんなつもりは無かったのに。
「あ……えっと……」
「……」
私をじっと見つめる彼の視線に焦った私は、咄嗟に思い付いたことを口にしていた。
「貴方のお名前を教えてくださいませんか!」
「……名前?」
「はい……私は、もう既にご存知かもしれませんがエミリア・ログワーツと申します」
「ログワーツ……」
知っているのか知らないのか、彼はボソリとその名を呟いた。
それからしばらくして、彼はゆっくりと口を開いた。
「……俺はルークだ」
「ルーク、って言うんですね!覚えておきます!この前は本当にありがとうございました!お気をつけてお帰りください!」
私は彼にもう一度礼を言った後、今度こそはレイラの元へと急いだ。
「二人とも、忙しいだろうに私の我儘に付き合ってくれて本当にありがとう」
「気にしないで、私だって楽しみだったんだから」
「そうですよエミリアさん。誘っていただき光栄です」
お義姉様はともかく、レイラとはしばらく会えないのだと思うと何だか寂しくなる。
「レイラ、またね」
「ええ、今度私の子供たちを紹介するわ」
「本当!?楽しみにしてるわ!」
私たちは手を取り合って別れの挨拶をした。
「レイラ様、今日は招待していただいてありがとうございました」
「全然!また来てくれると嬉しいわ」
「もちろんです」
お義姉様も随分レイラと打ち解けたようだった。
何だか二人とも名残惜しそうにしている。
「お義姉様、そろそろ行きましょうか」
「はい、そうしましょう」
私たちはレイラに向かって手を振りながらお茶会が行われていたガゼボを出た。
「楽しい時間はあっという間なのですね」
「そうですね、また集まりたいです」
「ふふふ、きっとすぐに叶いますよ」
私とお義姉様は二人並んで会話に花を咲かせながら馬車までの道のりを歩いた。
その途中で私は自身がある忘れ物をしていたことに気が付いた。
「あ……いっけない!」
「エミリアさん、どうかなさったのですか?」
私は懐に入ったままの包み紙に気付いてハッとなった。
(渡すつもりだったのに……忘れちゃってた……)
離婚してから最初に行われた舞踏会で私はレイラやリーシェお義姉様、王宮にいる侍女たちに本当に世話になった。
だからこそお礼をしたいと思い、協力してくれた全ての人にささやかな贈り物を用意したのだ。
しかし、レイラとお義姉様には無事渡せたものの、侍女たちへの贈り物を渡し忘れてしまったのである。
「まぁ、それは……」
「お義姉様、すみません。先に戻っていてもらえますか?」
「分かりました。大事な御用ですものね」
お義姉様は取り出された包み紙を見て察したのか、穏やかな顔で頷いた。
それからお義姉様と一度別れた私は、すぐに来た道を戻った。
(どこにいるか分からないから、レイラに頼もう)
レイラに任せるのが一番良いだろう。
彼女はきっと確実に渡してくれるはずだ。
そんなことを考えながら早足で曲がり角を曲がったそのとき、向かいから歩いてきた人物とぶつかってしまった。
「キャッ!」
「――!」
ぶつかった反動で、私は後ろによろめいてしまった。
「す、すみません……って、貴方は……」
「……」
顔を上げた私は、目の前にいる人物を見て驚いた。
(この人……前に私を助けてくれた人よね……!?)
顔はハッキリと見ていなかったものの、その美しい碧眼だけは見間違いようが無い。
相手も私に見覚えがあるようで、目をパチクリさせていた。
(どうして王宮にいるんだろう……?でもまた会えて良かった!)
私は気まずそうに目を逸らす彼に声をかけた。
「あ、あの!」
「……?」
「前は助けていただいてありがとうございました!」
「……」
彼は何も言わなかった。
(何だろう?どこかで見たことあるような……)
前に一度見たのはたしかだが、何だかそれ以前に会ったことがあるような気がする。
男性はしばらく黙り込んだ後、ようやく言葉を発した。
「……気にするな、ただの気まぐれだ」
「でも、助けてくださったのは事実なので!どうしてもお礼を言いたくて!」
「……」
私がそう言うと、彼は踵を返してこの場を立ち去ろうとした。
「あ、待ってください!」
「……まだ何かあるのか?」
私は思わず彼を引き留めていた。
そんなつもりは無かったのに。
「あ……えっと……」
「……」
私をじっと見つめる彼の視線に焦った私は、咄嗟に思い付いたことを口にしていた。
「貴方のお名前を教えてくださいませんか!」
「……名前?」
「はい……私は、もう既にご存知かもしれませんがエミリア・ログワーツと申します」
「ログワーツ……」
知っているのか知らないのか、彼はボソリとその名を呟いた。
それからしばらくして、彼はゆっくりと口を開いた。
「……俺はルークだ」
「ルーク、って言うんですね!覚えておきます!この前は本当にありがとうございました!お気をつけてお帰りください!」
私は彼にもう一度礼を言った後、今度こそはレイラの元へと急いだ。
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