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侍女を下がらせた後、私は一人軽い足取りで廊下を歩いていた。
(会うのは久しぶりね……元気かしら……)
私は今公爵邸にある客間へと向かっている最中だ。
客間には、私の大好きなお客様が来ている。
「――エミリア!」
部屋で待っていたその人物は、私を見て目を輝かせた。
彼女が駆け寄ってくるよりも先に、私は臣下の礼を取った。
「お久しぶりでございます、王妃陛下」
「もう、やめてよエミリア!二人きりのときはいつも通りでいいって言ったじゃない!」
そこで私はクスッと笑って顔を上げた。
「ふふふ、冗談だよ――――レイラ」
そう、お客様とは私の幼い頃からの親友であるレイラのことである。
レイラは私がオリバー様と結婚してから数年後に、元々婚約者だった王太子殿下と結婚し今は王妃陛下となった。
夫である国王陛下との仲は良好で、国民の誰もが知るおしどり夫婦である。
「レイラ、久しぶりね。会えて嬉しいわ」
「そうね、最近は色々と立て込んでいてここへ来られていなかったわ」
レイラは今育児中である。
彼女と国王陛下との間には二人の子供がいるのだ。
今年六歳になる第一王子殿下と、まだ二歳の第一王女殿下だ。
社交界デビューもしていないのでまだお会いしたことは無いが、それはそれは可愛らしい方だと聞く。
(まぁ、レイラに似ていたらそりゃ可愛いだろうなぁ)
レイラは平凡な私とは正反対の華やか系美人で、夫の国王陛下もかなりの美形だ。
そんな美男美女夫婦の子供となれば、とんでもない美貌を持って生まれてくるだろう。
成長するのが楽しみだ。
「それよりレイラ、今日はどうして突然ここへ来たの?私としては嬉しいけど……」
「うふふ、ケインからあなたとオリバーが離婚するという話を聞いたのよ」
「……お兄様から?」
ケインとは私のお兄様の名前である。
ちなみにレイラはお兄様とも幼い頃から親交があり、今でもたびたび話をする仲なのだ。
「私はね、今とっても嬉しいのよエミリア!」
「レイラ……?」
「やっぱりエミリアにあんな男は相応しくないわ。ずっと思ってたのよね。だからあなたがやっと離婚を決意してくれてとっても嬉しいの」
「……あんな男は相応しくないって、本当に?」
「当然でしょう!誰よりも傍にいた私がそう言うんだから間違いないわ!」
レイラはニッコリ笑って私の手を握った。
今まで何度もオリバー様の妻として相応しくないと陰口を叩かれることはあったが、逆は言われたことが無かったので何だか照れ臭くなる。
(もう、過大評価しすぎだよ……)
心の中でそうは思ったものの、声には出さなかった。
「ありがとう、レイラ」
「もっと自分に自信を持っていいのよ!」
たしかに、私はもう少し自分に自信を持って良いのかもしれない。
オリバー様への恋情が無くなってから気付いたことだった。
(レイラ……)
レイラはいつだって私にとっての救いの女神だ。
王妃となり、かなり多忙な身であるはずなのにこうして定期的に私の様子を見に来てくれるのだから彼女には感謝してもしきれない。
「レビンストン公爵はもうダメね……」
「え、どうして……?」
レイラが突然ハァとため息をつきながらそんなことを口にした。
「ほら、あの人公爵としての仕事を放棄しているでしょう?」
「レイラ、どうしてそのことを……」
「夫が言っていたのよ」
「あ……」
どうやらオリバー様が職務怠慢をしていることは国王陛下も知っているらしい。
「夫はね、もうあの男をとっくに見限っているのよ」
「陛下がオリバー様を?」
「ええ、だけどレビンストン公爵家に今現在あの男以外に爵位を継げる人間はいないでしょう?だからこそその地位を維持出来てるってわけ」
「そうだったのね……」
レビンストン公爵家は大体王家に忠誠を誓ってきた家門だった。
実際に先代のレビンストン公爵――オリバー様のお父様も先王陛下の忠臣であった。
しかし、今のオリバー様はどうやら陛下から見限られているようだ。
公爵家は一体どうなってしまうのだろうか。
「エミリア、公爵との話し合いはもう済んだの?」
「それはまだこれから……」
「たとえ引き留められたとしても絶対に離婚するのよ!もしそれでも認められなかったら私が直接あの男に言いに行ってやるから!」
「うふふ、大丈夫だよレイラ。さっき侍女を通じてオリバー様に今すぐ帰ってこい!って言ってやったから!」
私の言葉にレイラはポカンと口を開けた。
「……エミリアってそんなにガツンと物を言う人だったかしら?」
「昔は言えなかったけど……まぁ、変わったんだよ色々と!」
「あなたって私が思っていた以上に面白いのね、うふふ」
「えへへ、そうかな?」
公爵邸の客間に私とレイラの笑い声が響いた。
(会うのは久しぶりね……元気かしら……)
私は今公爵邸にある客間へと向かっている最中だ。
客間には、私の大好きなお客様が来ている。
「――エミリア!」
部屋で待っていたその人物は、私を見て目を輝かせた。
彼女が駆け寄ってくるよりも先に、私は臣下の礼を取った。
「お久しぶりでございます、王妃陛下」
「もう、やめてよエミリア!二人きりのときはいつも通りでいいって言ったじゃない!」
そこで私はクスッと笑って顔を上げた。
「ふふふ、冗談だよ――――レイラ」
そう、お客様とは私の幼い頃からの親友であるレイラのことである。
レイラは私がオリバー様と結婚してから数年後に、元々婚約者だった王太子殿下と結婚し今は王妃陛下となった。
夫である国王陛下との仲は良好で、国民の誰もが知るおしどり夫婦である。
「レイラ、久しぶりね。会えて嬉しいわ」
「そうね、最近は色々と立て込んでいてここへ来られていなかったわ」
レイラは今育児中である。
彼女と国王陛下との間には二人の子供がいるのだ。
今年六歳になる第一王子殿下と、まだ二歳の第一王女殿下だ。
社交界デビューもしていないのでまだお会いしたことは無いが、それはそれは可愛らしい方だと聞く。
(まぁ、レイラに似ていたらそりゃ可愛いだろうなぁ)
レイラは平凡な私とは正反対の華やか系美人で、夫の国王陛下もかなりの美形だ。
そんな美男美女夫婦の子供となれば、とんでもない美貌を持って生まれてくるだろう。
成長するのが楽しみだ。
「それよりレイラ、今日はどうして突然ここへ来たの?私としては嬉しいけど……」
「うふふ、ケインからあなたとオリバーが離婚するという話を聞いたのよ」
「……お兄様から?」
ケインとは私のお兄様の名前である。
ちなみにレイラはお兄様とも幼い頃から親交があり、今でもたびたび話をする仲なのだ。
「私はね、今とっても嬉しいのよエミリア!」
「レイラ……?」
「やっぱりエミリアにあんな男は相応しくないわ。ずっと思ってたのよね。だからあなたがやっと離婚を決意してくれてとっても嬉しいの」
「……あんな男は相応しくないって、本当に?」
「当然でしょう!誰よりも傍にいた私がそう言うんだから間違いないわ!」
レイラはニッコリ笑って私の手を握った。
今まで何度もオリバー様の妻として相応しくないと陰口を叩かれることはあったが、逆は言われたことが無かったので何だか照れ臭くなる。
(もう、過大評価しすぎだよ……)
心の中でそうは思ったものの、声には出さなかった。
「ありがとう、レイラ」
「もっと自分に自信を持っていいのよ!」
たしかに、私はもう少し自分に自信を持って良いのかもしれない。
オリバー様への恋情が無くなってから気付いたことだった。
(レイラ……)
レイラはいつだって私にとっての救いの女神だ。
王妃となり、かなり多忙な身であるはずなのにこうして定期的に私の様子を見に来てくれるのだから彼女には感謝してもしきれない。
「レビンストン公爵はもうダメね……」
「え、どうして……?」
レイラが突然ハァとため息をつきながらそんなことを口にした。
「ほら、あの人公爵としての仕事を放棄しているでしょう?」
「レイラ、どうしてそのことを……」
「夫が言っていたのよ」
「あ……」
どうやらオリバー様が職務怠慢をしていることは国王陛下も知っているらしい。
「夫はね、もうあの男をとっくに見限っているのよ」
「陛下がオリバー様を?」
「ええ、だけどレビンストン公爵家に今現在あの男以外に爵位を継げる人間はいないでしょう?だからこそその地位を維持出来てるってわけ」
「そうだったのね……」
レビンストン公爵家は大体王家に忠誠を誓ってきた家門だった。
実際に先代のレビンストン公爵――オリバー様のお父様も先王陛下の忠臣であった。
しかし、今のオリバー様はどうやら陛下から見限られているようだ。
公爵家は一体どうなってしまうのだろうか。
「エミリア、公爵との話し合いはもう済んだの?」
「それはまだこれから……」
「たとえ引き留められたとしても絶対に離婚するのよ!もしそれでも認められなかったら私が直接あの男に言いに行ってやるから!」
「うふふ、大丈夫だよレイラ。さっき侍女を通じてオリバー様に今すぐ帰ってこい!って言ってやったから!」
私の言葉にレイラはポカンと口を開けた。
「……エミリアってそんなにガツンと物を言う人だったかしら?」
「昔は言えなかったけど……まぁ、変わったんだよ色々と!」
「あなたって私が思っていた以上に面白いのね、うふふ」
「えへへ、そうかな?」
公爵邸の客間に私とレイラの笑い声が響いた。
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