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18 旦那様の愛人
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それからさらに数日後。
私の元にお兄様からの調査結果が届いた。
どうやら私の予想していた通り、オリバー様と愛人の方は私との婚約が決まる前からの知り合いらしい。
つまりはかなり前からの仲だということだ。
最初は友人からのスタートだったが、次第に想い合うようになっていったと。
だけど愛人は平民で、とてもじゃないが公爵夫人になれるような身分ではなかった。
しかしお互いにこの恋を諦めることなど到底出来ず、私に隠れて愛を育み合っていたと。
(ふぅん……よく出来たストーリーね)
ついつい結果が書かれた紙を破いてしまいそうになった。
オリバー様の愛人の名前はローザ。
儚げな雰囲気を持つ清楚系美人である。
そして子供の名前はリオ。
正真正銘レビンストン公爵家の血を引くオリバー様との子供だ。
ちなみに年齢は今年で十歳のようだ。
(もういっそ、この方が公爵夫人になればいいのではないのかしら?)
平民出身だと後ろ指を差される可能性はあるが、その方がオリバー様にとって幸せなはずだ。
そしてこれも今分かったことだが、彼はどうやら公爵邸にいないほとんどの時間を愛人宅で過ごしていたらしい。
てっきり仕事が忙しいのかと思っていたが、それは大きな間違いであった。
彼は愛人であるローザ様との間に子供が産まれてからはたびたび公爵としての執務を放棄して家庭を優先するようになったという。
(……何だか知れば知るほど幻滅してばっかりだわ)
再び彼への恋情が湧いてくることは無さそうでとりあえず安心した。
(ローザ様とそのお子さんからしたら良き夫と父親だったかもしれないけれど、周りからしたらいい迷惑ね)
オリバー様はきっと今もローザ様のところにいるに違いない。
そのことに対して別に悲しくはならなかったが、公爵としての仕事を放棄して遊んでいるというのがどうも気に入らない。
私はもちろんここへ嫁いできてから仕事を放棄したことなど一度も無い。
むしろオリバー様の役に立つためにと彼が請け負うはずの執務を肩代わりしたこともあった。
だからこそ、余計に苛ついた。
(いくらあの子たちが大切だからって……やっちゃいけないことでしょうに)
男は家庭が大切だからこそ、仕事をしなければならないのだ。
ローザ様はそのことを知っているのだろうか。
(それより、旦那様が次に公爵邸に帰って来るのはいつかしら?離婚についての話し合いをしないと……)
私は使用人の一人を部屋に呼んだ。
入って来たのは、少し前に脅迫した元男爵令嬢の侍女である。
「ねぇ、旦那様が帰って来るのはいつになるかしら?」
「み、三日は帰られないかと思われます……」
彼女は怯えた様子でそう答えた。
あの一件が起きた後から、彼女は私を酷く恐れるようになった。
クビになるのが怖いのだろう、今もビクビクしている。
そんな風にされると、何だかこっちが悪者みたいだ。
「三日は帰ってこないですって?」
「ヒ、ヒィッ!すみません!旦那様はお仕事が忙しいようですので……」
「……ハッ、仕事?」
思わず笑いが出そうになった。
目の前にいる侍女はオロオロしていて私と目を合わせようとはしない。
きっと彼女も知っているはずだ。
あの男が仕事などしていないことを。
(その様子だと、多分今も愛人宅にいるんでしょうね)
こっちは公爵邸から滅多に出られないというのに、あの男は愛人宅で幸せにしている。
そのことを考えると無性に腹が立ってきた。
(三日も待てないわ……今すぐにでもこんなところ出て行きたいのに)
不貞の証拠が揃っている以上、もうこれ以上我慢する必要はない。
今すぐに離婚してもいいぐらいである。
「――ねぇ、貴方」
「はい……」
私は侍女にゆっくりと近付いた。
そして顔をグッと近付けた。
彼女はそれにビクリとした。
「お、奥様……?」
「お仕事が忙しい旦那様に伝えておいてくれないかしら」
私は困惑する侍女に強めの口調で告げた。
「――今すぐ、公爵邸に帰って来いと」
「……!」
それを聞いた彼女の顔はみるみるうちに青くなっていった。
私の元にお兄様からの調査結果が届いた。
どうやら私の予想していた通り、オリバー様と愛人の方は私との婚約が決まる前からの知り合いらしい。
つまりはかなり前からの仲だということだ。
最初は友人からのスタートだったが、次第に想い合うようになっていったと。
だけど愛人は平民で、とてもじゃないが公爵夫人になれるような身分ではなかった。
しかしお互いにこの恋を諦めることなど到底出来ず、私に隠れて愛を育み合っていたと。
(ふぅん……よく出来たストーリーね)
ついつい結果が書かれた紙を破いてしまいそうになった。
オリバー様の愛人の名前はローザ。
儚げな雰囲気を持つ清楚系美人である。
そして子供の名前はリオ。
正真正銘レビンストン公爵家の血を引くオリバー様との子供だ。
ちなみに年齢は今年で十歳のようだ。
(もういっそ、この方が公爵夫人になればいいのではないのかしら?)
平民出身だと後ろ指を差される可能性はあるが、その方がオリバー様にとって幸せなはずだ。
そしてこれも今分かったことだが、彼はどうやら公爵邸にいないほとんどの時間を愛人宅で過ごしていたらしい。
てっきり仕事が忙しいのかと思っていたが、それは大きな間違いであった。
彼は愛人であるローザ様との間に子供が産まれてからはたびたび公爵としての執務を放棄して家庭を優先するようになったという。
(……何だか知れば知るほど幻滅してばっかりだわ)
再び彼への恋情が湧いてくることは無さそうでとりあえず安心した。
(ローザ様とそのお子さんからしたら良き夫と父親だったかもしれないけれど、周りからしたらいい迷惑ね)
オリバー様はきっと今もローザ様のところにいるに違いない。
そのことに対して別に悲しくはならなかったが、公爵としての仕事を放棄して遊んでいるというのがどうも気に入らない。
私はもちろんここへ嫁いできてから仕事を放棄したことなど一度も無い。
むしろオリバー様の役に立つためにと彼が請け負うはずの執務を肩代わりしたこともあった。
だからこそ、余計に苛ついた。
(いくらあの子たちが大切だからって……やっちゃいけないことでしょうに)
男は家庭が大切だからこそ、仕事をしなければならないのだ。
ローザ様はそのことを知っているのだろうか。
(それより、旦那様が次に公爵邸に帰って来るのはいつかしら?離婚についての話し合いをしないと……)
私は使用人の一人を部屋に呼んだ。
入って来たのは、少し前に脅迫した元男爵令嬢の侍女である。
「ねぇ、旦那様が帰って来るのはいつになるかしら?」
「み、三日は帰られないかと思われます……」
彼女は怯えた様子でそう答えた。
あの一件が起きた後から、彼女は私を酷く恐れるようになった。
クビになるのが怖いのだろう、今もビクビクしている。
そんな風にされると、何だかこっちが悪者みたいだ。
「三日は帰ってこないですって?」
「ヒ、ヒィッ!すみません!旦那様はお仕事が忙しいようですので……」
「……ハッ、仕事?」
思わず笑いが出そうになった。
目の前にいる侍女はオロオロしていて私と目を合わせようとはしない。
きっと彼女も知っているはずだ。
あの男が仕事などしていないことを。
(その様子だと、多分今も愛人宅にいるんでしょうね)
こっちは公爵邸から滅多に出られないというのに、あの男は愛人宅で幸せにしている。
そのことを考えると無性に腹が立ってきた。
(三日も待てないわ……今すぐにでもこんなところ出て行きたいのに)
不貞の証拠が揃っている以上、もうこれ以上我慢する必要はない。
今すぐに離婚してもいいぐらいである。
「――ねぇ、貴方」
「はい……」
私は侍女にゆっくりと近付いた。
そして顔をグッと近付けた。
彼女はそれにビクリとした。
「お、奥様……?」
「お仕事が忙しい旦那様に伝えておいてくれないかしら」
私は困惑する侍女に強めの口調で告げた。
「――今すぐ、公爵邸に帰って来いと」
「……!」
それを聞いた彼女の顔はみるみるうちに青くなっていった。
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