54 / 54
幸福な日々
しおりを挟む
あの日から3年の月日が経った。
「奥様。ディボルト公爵様がいらっしゃいました。」
「通してちょうだい。」
私がそう言うと、侍女は客間を出て行き、入れ違いに一人の男性が入ってくる。
サラサラとした金髪に蒼い瞳。
「久しぶりだね、ローラン公爵夫人。」
「ええ、お久しぶりです。―エイドリアン・ディボルト公爵閣下。」
そう、ディボルト公爵とはエイドリアン殿下である。
彼はあの後勉学に励み、見事更生することが出来た。
まぁ元々彼は悪い人ではないから、更生という言い方は間違っているかもしれないが。
「今日は何のご用でしょうか?」
「・・・公爵夫人に、謝罪をしに来た。」
「・・・謝罪、ですか?」
そう言うとディボルト公爵閣下は真剣な顔で私を見つめた。
「ローラン公爵夫人、すまなかった。」
ディボルト公爵閣下はそう言って頭を下げた。
「あの時の私はどうかしていた。恋に溺れ、正常な判断が出来なくなっていた。そのせいで君を深く傷つけてしまった。本当にすまなかった。」
彼はあのことをかなり気にしていたようだ。
だけど私はもう気にしてなどいない。
「・・・顔を上げてください、公爵閣下。」
「・・・」
彼はゆっくりと顔を上げた。
「謝罪を受け入れます。貴方はもう十分罪を償われました。」
実際ディボルト公爵閣下は公爵となってからは、国のために必死で働いている。
彼に救われた命も多いと聞く。
もう十分、罪を償っただろう。
「ありがとう、公爵夫人。」
彼は三年前とは随分と変わった。
身体も鍛え上げられ、公爵としての仕事もきちんとこなしているようだ。
今では彼に対して血筋がどうこう言う貴族は一人もいない。
縁談も国内外問わず来ているようだ。
何だかんだ幸せになれたようで良かった!
私はふと、気になったことを聞いてみた。
「そういえば、ディボルト公爵閣下はご結婚なさらないのですか?」
私の言葉に彼は驚いたような顔をした。
少し考えこんだ後に口を開いた。
「・・・私は、結婚するつもりも子供を作るつもりもない。もう女性はこりごりだ。」
彼は冗談っぽく笑って言った。
それにつられて私も笑ってしまう。
「ふふふ、そうなんですね。」
「・・・もうこんな時間か。公爵夫人、忙しいところありがとう。」
「いいえ、こちらこそ。」
ディボルト公爵閣下はそのまま帰路についた。
しばらくして、クリスが客間に入ってくる。
その顔は少し不機嫌そうだ。
「・・・終わったのか?」
「ええ。」
「あいつ、今さらエレンに何を・・・」
「ただちょっと話してただけよ。」
「・・・」
しかしクリスの機嫌はなかなか直らなかった。
もう、ほんと嫉妬深いんだから・・・
「あとで久しぶりに市井に行かない?最近二人の時間あんまり取れてなかったし・・・。」
「・・・!」
私はクリスに対して微笑みながらそう言った。
彼はゆっくりと私の提案に頷いた。
機嫌直ったみたい!
するとクリスが突然私を後ろから抱きしめた。
「・・・この子のためにも、喧嘩なんてしちゃダメだよな。」
そう言って彼は私のお腹を優しく撫でた。
「ふふふ、まだ妊娠初期よ?」
「それでも俺にとってはもう可愛い子供なんだ。」
「気が早いんだから・・・」
私は彼の言葉に苦笑した。
私は今最高に幸せだ。
私はクリスと、これから生まれてくるであろうこの子と温かい家庭を築いていくんだ。
クリスと結婚した日から幸せじゃなかった日なんて一日たりともなかった。
「・・・ねぇ、クリス。」
「何だ・・・?」
「・・・愛してるわ。」
すると彼は顔を真っ赤にした。
窓から降り注ぐ日差しが私たちを照らした。
この先、彼とならどんな困難も乗り越えて行ける。
そんな気がした。
~fin~
「奥様。ディボルト公爵様がいらっしゃいました。」
「通してちょうだい。」
私がそう言うと、侍女は客間を出て行き、入れ違いに一人の男性が入ってくる。
サラサラとした金髪に蒼い瞳。
「久しぶりだね、ローラン公爵夫人。」
「ええ、お久しぶりです。―エイドリアン・ディボルト公爵閣下。」
そう、ディボルト公爵とはエイドリアン殿下である。
彼はあの後勉学に励み、見事更生することが出来た。
まぁ元々彼は悪い人ではないから、更生という言い方は間違っているかもしれないが。
「今日は何のご用でしょうか?」
「・・・公爵夫人に、謝罪をしに来た。」
「・・・謝罪、ですか?」
そう言うとディボルト公爵閣下は真剣な顔で私を見つめた。
「ローラン公爵夫人、すまなかった。」
ディボルト公爵閣下はそう言って頭を下げた。
「あの時の私はどうかしていた。恋に溺れ、正常な判断が出来なくなっていた。そのせいで君を深く傷つけてしまった。本当にすまなかった。」
彼はあのことをかなり気にしていたようだ。
だけど私はもう気にしてなどいない。
「・・・顔を上げてください、公爵閣下。」
「・・・」
彼はゆっくりと顔を上げた。
「謝罪を受け入れます。貴方はもう十分罪を償われました。」
実際ディボルト公爵閣下は公爵となってからは、国のために必死で働いている。
彼に救われた命も多いと聞く。
もう十分、罪を償っただろう。
「ありがとう、公爵夫人。」
彼は三年前とは随分と変わった。
身体も鍛え上げられ、公爵としての仕事もきちんとこなしているようだ。
今では彼に対して血筋がどうこう言う貴族は一人もいない。
縁談も国内外問わず来ているようだ。
何だかんだ幸せになれたようで良かった!
私はふと、気になったことを聞いてみた。
「そういえば、ディボルト公爵閣下はご結婚なさらないのですか?」
私の言葉に彼は驚いたような顔をした。
少し考えこんだ後に口を開いた。
「・・・私は、結婚するつもりも子供を作るつもりもない。もう女性はこりごりだ。」
彼は冗談っぽく笑って言った。
それにつられて私も笑ってしまう。
「ふふふ、そうなんですね。」
「・・・もうこんな時間か。公爵夫人、忙しいところありがとう。」
「いいえ、こちらこそ。」
ディボルト公爵閣下はそのまま帰路についた。
しばらくして、クリスが客間に入ってくる。
その顔は少し不機嫌そうだ。
「・・・終わったのか?」
「ええ。」
「あいつ、今さらエレンに何を・・・」
「ただちょっと話してただけよ。」
「・・・」
しかしクリスの機嫌はなかなか直らなかった。
もう、ほんと嫉妬深いんだから・・・
「あとで久しぶりに市井に行かない?最近二人の時間あんまり取れてなかったし・・・。」
「・・・!」
私はクリスに対して微笑みながらそう言った。
彼はゆっくりと私の提案に頷いた。
機嫌直ったみたい!
するとクリスが突然私を後ろから抱きしめた。
「・・・この子のためにも、喧嘩なんてしちゃダメだよな。」
そう言って彼は私のお腹を優しく撫でた。
「ふふふ、まだ妊娠初期よ?」
「それでも俺にとってはもう可愛い子供なんだ。」
「気が早いんだから・・・」
私は彼の言葉に苦笑した。
私は今最高に幸せだ。
私はクリスと、これから生まれてくるであろうこの子と温かい家庭を築いていくんだ。
クリスと結婚した日から幸せじゃなかった日なんて一日たりともなかった。
「・・・ねぇ、クリス。」
「何だ・・・?」
「・・・愛してるわ。」
すると彼は顔を真っ赤にした。
窓から降り注ぐ日差しが私たちを照らした。
この先、彼とならどんな困難も乗り越えて行ける。
そんな気がした。
~fin~
208
お気に入りに追加
3,986
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
殿下の御心のままに。
cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。
アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。
「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。
激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。
身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。
その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。
「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」
ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。
※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。
※シリアスな話っぽいですが気のせいです。
※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください
(基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません)
※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる