貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
52 / 54

即位式と舞踏会

しおりを挟む
それからシャルル殿下の即位式は滞りなく進んだ。


会場を見渡してみるが、エイドリアン殿下の姿は無い。


今日からはシャルル殿下が新たなこの国の王だ。


きっと彼なら大丈夫だ。


私はシャルル殿下と一緒に過ごして彼の意外な優しさを知った。


そして、裁判結果だが・・・


アズリール侯爵、いえもう今は侯爵じゃなくて男爵ね。


アズリール侯爵は結局男爵にまで爵位を下げられた。


領地もかなり没収されてしまったようだ。


側妃も国王が変わることに伴い、実家へ帰ることになった。


側妃は今後一切王都の地を踏むことを許されなくなった。


今はほとんど領地に軟禁状態にあるという。


だいぶ落ち着きを取り戻しているようだが。


王族暗殺未遂にしては軽すぎる刑だが・・・


まぁ彼女も国王陛下の被害者なのよね・・・。


アズリール侯爵夫人は穏やかで優しい方なので、疲弊した夫を支え続けているらしい。


男爵にまで降格させられても恨み言一つ言っていないそうだ。


そういえば、アズリール侯爵も貴族にしては珍しく愛人が一人もいなかったということを思い出した。


アズリール侯爵夫妻は政略結婚ではあるが・・・。


・・・素敵な夫婦ね。


クリスは、私が平民になっても一緒にいてくれるかな・・・?


そう思って私は隣にいるクリスの顔を見た。


「・・・?何だ・・・?」


「あっ、ううんっ、何でもないの・・・!」


「・・・?そうか・・・。」


聞かずとも答えは分かりきっている。


クリスは私の地位なんて気にせず傍にいてくれる。


そう思うと胸が温かくなった。





シャルル殿下の即位式を無事終え、その後に舞踏会が行われた。


「エレン、ファーストダンスは俺と踊るだろ?」


「当然じゃない。」


私がそう言うとクリスはフッと笑って私の手を取り会場の中央へと向かって行く。


~♪


そして曲に合わせて私たちはステップを踏んだ。


「皆俺たちに注目してるみたいだな。」


「なんだか恥ずかしいわ・・・。」


私はクリスの胸に隠れるようにした。


クリスはそんな私を愛しそうに見つめている。


ふと、王の椅子に座ったシャルル殿下、いえ陛下と目が合った。


陛下は私と目が合うと優しく微笑んだ。


お父君が亡くなって・・・複雑な気持ちでしょうに・・・。


そう、前国王陛下は裁判を待たずに牢の中で服毒自殺した。


死者を裁くことは出来ない。


罪を償ってほしかったが、どうしようもない。


前国王陛下が亡くなり、王国にも影響があった。


それはフィオナ前王妃陛下についてだ。


彼女は今までは王に見初められ結婚した絶世の美女と言われていたが、今では美しすぎるが故に王に無理矢理愛する夫と引き離された悲劇の王妃となっていた。


フィオナ前王妃陛下の夫は既に彼女を失った心労で亡くなってしまったと聞いている。


前王妃陛下は・・・天国で愛する旦那さんに会えたかな?


どうか二人が再会出来ていますように・・・。



そんなことを考えているうちに曲が終了した。




しばらくして舞踏会が終わり、私たちは帰路についた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?

Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。 最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。 とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。 クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。 しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。 次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ── 「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 そう問うたキャナリィは 「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」 逆にジェードに問い返されたのだった。 ★★★★★★ 覗いて下さりありがとうございます。 女性向けHOTランキングで最高20位までいくことができました。(本編) 沢山の方に読んでいただけて嬉しかったので、続き?を書きました(*^^*) ★花言葉は「恋の勝利」  本編より過去→未来  ジェードとクラレットのお話 ★ジェード様の憂鬱【読み切り】  ジェードの暗躍?(エボニーのお相手)のお話

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

処理中です...