貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

エスコート

翌日。


今日はシャルル殿下の即位式だ。


私はクリスがプレゼントしてくれたドレスやアクセサリーを身に纏い、クリスが来るのを待っていた。


「エレン、私たちは先に行くから。後でクリスと同じ馬車で来なさい。」


「はい、お父様。」


お父様はそう言うとお母様をエスコートして馬車に乗り、即位式の会場へと向かった。


私はエントランスでじっとクリスを待っていた。


その時にふと気付いた。


あれ・・・？これって・・・


ドレスも靴もアクセサリーも全て赤で統一されている。


赤は・・・


クリスの色だわ・・・。


それに気付いて顔が赤くなった。


見せつけるってそういう意味だったのね・・・。






しばらくして、クリスがやって来た。


彼は珍しく正装姿だった。


「エレン、お待た・・・」


クリスは私を見て固まった。


何かしら・・・？


「クリス・・・？」


「っ！あ、いや、す、すまない・・・。エレンがあまりにも綺麗だったからつい・・・。」


「っ！？」


私はクリスの言葉に顔を赤くした。


「嘘じゃない。本当のことだ。」


それを見たクリスが真剣な表情で言った。


「も、もうッ！早く会場に行くわよッ！」


私はクリスを置き去りにして家の前にとめてある馬車へと向かった。


「あ、ま、待て！俺にエスコートさせろって！」


クリスはそう言いながら慌ててついて来た。





そして、王宮に到着した。


シャルル殿下の即位式のため、多くの人が集まっている。


シャルル殿下ならきっと賢王になるだろう。


私はそう信じて疑わなかった。


私はクリスと王宮の廊下を歩いていた。


するとクリスは突然振り返ってこう言った。


「お手をどうぞ、お姫様。」


そう言って私に手を差し伸べてくる。


「・・・！」


私はそんなクリスにフッと微笑んだ。


「ありがとう。」


クリスの手に自分の手を重ねた。


私たちは二人並んで会場まで歩いて行った。





「クリストファー・モーガン公爵令息、エレン・ローラン公爵令嬢です！！！」


私はクリスにエスコートされて会場の中へと入った。


私たちが入場すると、貴族たちがヒソヒソと話し始めた。


「まぁ、クリストファー様とエレン様よ。」


「なんでもあの二人は幼馴染なんですってね。クリストファー様がエレン様をずっと想い続けていたらしいわ。素敵ね。」


「あら、そうでしたの？お似合いの二人ですわね。」


私たちを賞賛する声に何だか嬉しくなる。


エイドリアン殿下の婚約者候補だった頃はその立場を妬んでか、心無い言葉をかけられることも多かった。


だけど今は・・・


何だか皆が私たちを祝福してくれてるみたい。