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贈り物
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「エレンお嬢様。クリストファー様がいらっしゃいました。」
私の侍女であるマリーナが部屋の扉を開けて言った。
「分かったわ。客間にお通ししておいて。」
「はい、お嬢様。」
私がそう言うとマリーナは返事をして部屋を出て行く。
あれからクリスはかなりの頻度で我が家へ訪れている。
正式に婚約もし、後は籍を入れるだけだ。
私は準備を済ませ、クリスのいる客間へと向かう。
明日はシャルル殿下の即位式があるというのに、どうしたんだろう?
私は疑問に思いながらも客間に入った。
「クリス!」
私の声に彼は振り返った。
「エレンか。」
彼はいつもと違って大きめの箱を抱えていた。
あの箱は一体なんだろう・・・?
「クリス、こんな日にどうしたの?明日の即位式の準備で忙しいでしょうに。」
そう言うとクリスはフッと笑って言った。
「たしかに忙しいな。だけどお前にどうしても渡したいものがあったんだ。」
渡したい物・・・?その腕に抱えている箱のことかな?
クリスは箱を客間にあった机に置くとリボンを解いた。
「これって・・・」
中に入っていたのは綺麗な赤いドレスだった。
靴とアクセサリーまで付いている。
「クリス・・・これを私に・・・?」
私がクリスに尋ねた。
「・・・お前以外に誰がいるんだ。」
そのためにわざわざローラン公爵邸へ訪れたのか。
忙しい時期に。
「クリス・・・。」
「エレン、明日はこのドレスを着て即位式に行こう。エスコートも俺にさせてくれないか。明日は俺の馬車でローラン公爵邸にお前を迎えに行く。」
エスコート・・・。
私は父親以外の男性にエスコートされたことが無かったし、ドレスもお母様が選んだものを着ていた。
ドレスを贈ったり、エスコートをしたりするのは婚約者の義務だったが、エイドリアン殿下にとって私はあくまでも”婚約者候補”だった。
だから父親以外の男性にエスコートをされるのはクリスが初めてだった。
「・・・うん。待ってる。」
私がそう言うとクリスは嬉しそうな顔をした。
「・・・明日ちゃんと周りに見せつけてやらないとな。」
クリスがよく分からないことを言ったので不思議に思って尋ねた。
「見せつける・・・?どういうこと・・・?」
するとクリスはニヤリと笑って言った。
「お前が、俺のものだってこと。」
「!!!」
お、俺のもの・・・!
クリスの言葉に私の顔は赤くなった。
「そんなことしなくても私はクリスの傍から離れたりしないわ。」
私は顔を赤くしたまま言った。
「お前はもっと自分の魅力を理解するべきだ。お前がエイドリアン殿下の婚約者候補から外れたことでお前に婚約を申し込もうとしている貴族令息が数多くいたんだぞ。」
「ええっ!?」
わ、私に婚約を申し込む!?
「お前、本当に気付いてなかったんだな・・・。」
クリスは呆れたように私に言った。
「・・・知らなかったわ・・・。」
「多分、あれだろうな。俺の気持ちを知っていた公爵閣下がお前に縁談が来ていることを伝えないようにしたんだろう。」
「お父様が・・・。」
後でお父様に聞いてみよう。
この時の私は強くそう思った。
私の侍女であるマリーナが部屋の扉を開けて言った。
「分かったわ。客間にお通ししておいて。」
「はい、お嬢様。」
私がそう言うとマリーナは返事をして部屋を出て行く。
あれからクリスはかなりの頻度で我が家へ訪れている。
正式に婚約もし、後は籍を入れるだけだ。
私は準備を済ませ、クリスのいる客間へと向かう。
明日はシャルル殿下の即位式があるというのに、どうしたんだろう?
私は疑問に思いながらも客間に入った。
「クリス!」
私の声に彼は振り返った。
「エレンか。」
彼はいつもと違って大きめの箱を抱えていた。
あの箱は一体なんだろう・・・?
「クリス、こんな日にどうしたの?明日の即位式の準備で忙しいでしょうに。」
そう言うとクリスはフッと笑って言った。
「たしかに忙しいな。だけどお前にどうしても渡したいものがあったんだ。」
渡したい物・・・?その腕に抱えている箱のことかな?
クリスは箱を客間にあった机に置くとリボンを解いた。
「これって・・・」
中に入っていたのは綺麗な赤いドレスだった。
靴とアクセサリーまで付いている。
「クリス・・・これを私に・・・?」
私がクリスに尋ねた。
「・・・お前以外に誰がいるんだ。」
そのためにわざわざローラン公爵邸へ訪れたのか。
忙しい時期に。
「クリス・・・。」
「エレン、明日はこのドレスを着て即位式に行こう。エスコートも俺にさせてくれないか。明日は俺の馬車でローラン公爵邸にお前を迎えに行く。」
エスコート・・・。
私は父親以外の男性にエスコートされたことが無かったし、ドレスもお母様が選んだものを着ていた。
ドレスを贈ったり、エスコートをしたりするのは婚約者の義務だったが、エイドリアン殿下にとって私はあくまでも”婚約者候補”だった。
だから父親以外の男性にエスコートをされるのはクリスが初めてだった。
「・・・うん。待ってる。」
私がそう言うとクリスは嬉しそうな顔をした。
「・・・明日ちゃんと周りに見せつけてやらないとな。」
クリスがよく分からないことを言ったので不思議に思って尋ねた。
「見せつける・・・?どういうこと・・・?」
するとクリスはニヤリと笑って言った。
「お前が、俺のものだってこと。」
「!!!」
お、俺のもの・・・!
クリスの言葉に私の顔は赤くなった。
「そんなことしなくても私はクリスの傍から離れたりしないわ。」
私は顔を赤くしたまま言った。
「お前はもっと自分の魅力を理解するべきだ。お前がエイドリアン殿下の婚約者候補から外れたことでお前に婚約を申し込もうとしている貴族令息が数多くいたんだぞ。」
「ええっ!?」
わ、私に婚約を申し込む!?
「お前、本当に気付いてなかったんだな・・・。」
クリスは呆れたように私に言った。
「・・・知らなかったわ・・・。」
「多分、あれだろうな。俺の気持ちを知っていた公爵閣下がお前に縁談が来ていることを伝えないようにしたんだろう。」
「お父様が・・・。」
後でお父様に聞いてみよう。
この時の私は強くそう思った。
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