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驚愕の事実 リサside

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あたしはそのまま最初に関係を持った伯爵家の令息の元へ向かった。


彼はあたしに対して間違いなく本気だった。


だってあたしを見ていつも頬を染めてくれたし、優しくしてくれたわ。


さっきの侯爵家の令息とは違う。


さっきの侯爵令息、思い出すだけでイラついてきた!


あんな男の婚約者が可哀そうね!


絶対将来は不幸になるわ!


あたしが伯爵夫人になったら社交界で浮気男だっていう噂を流して破滅させてやる!


そう思いながらあたしは伯爵邸へと向かった。





伯爵邸もやはり最初の男爵家の邸宅は比べ物にならないほど大きかった。


うん、まずまずね。


王家や侯爵家には劣るだろうけどここでも十分贅沢できそうだわ!


あたしは伯爵夫人となってドレスや宝石をたくさん身に着ける自分を思い浮かべた。


なんて最高なの・・・!


あたしは早速伯爵邸に近づいた。


侯爵邸と同じように門の前に衛兵がいた。


あいつらに接触したら絶対また追い返されるわ・・・。


あたしは侯爵邸で受けた仕打ちを思い出し、慎重になった。


ここは伯爵令息が出てくるのをじっと待っていた方がいいわね・・・。


あたしは王子や高位貴族たちとと知り合いではあるが身分は平民。


伯爵令息と恋愛関係にあったと言っても信用されないだろう。


だからあたしは伯爵令息が邸宅から出てくるのを待つことにした。





しばらくして、一人の青年が邸宅から出てきた。


来たわ!


あたしはその青年へと駆け寄って行った。


「リース様ぁっ!」


リースとは伯爵令息の名前である。


「お久しぶりですっ!」


あたしがこんな風に駆け寄って行くとリース様はいつも頬を染めてくれた。


だが今日は何だか様子が変だった。


目の前にいる男の人は無反応で、それどころかあたしに冷たい視線を向けている。


え、何なの・・・?


「・・・誰だ、お前は?」


その人物はあたしに冷たい声で言った。


誰って・・・。


「だ、誰だって・・・。リサですっ!リース様の恋人の!」


するとその人物は馬鹿にしたように言った。


「あぁ、お前があのバカ弟と関係を持ってた平民女か。」


あたしは衝撃を受けた。


お、弟・・・?


あたしはその人の顔をまじまじと観察してみる。


この人・・・リース様に似てるけど、よく見たら顔が違う!!!


目つきが怖い!


さっき弟って言ったわよね?


ってことはリース様のお兄さん!?


「あ、あの・・・リース様は・・・。」


あたしはおそるおそる目の前にいる怖い人に尋ねる。


「リースなら今婚約者の侯爵令嬢に必死で婚約の継続を頼みに行っている。」


え、婚約の継続・・・?


嘘よ、だってリース様は婚約者の令嬢が冷たくて好きではないって言ってた。


あたしの方がいいんだって。


「そ、そんな・・・嘘です・・・。だってリース様は婚約者様と婚約を解消したいって言ってました・・・。あたしのほうが好きだとも・・・。」


あたしがそう言うとリース様のお兄さんは呆れた声で言った。


「あのバカ弟はそんなことを言ってたのか。お前は平民で分からないだろうから教えてやる。貴族の結婚っていうのはな、当人の意思は関係無い。家同士の利益の方が重要なんだ。それが”貴族の婚姻”だ。」


っ!


あたしたち平民とは随分違うのね・・・。


平民は想い合う相手と結婚する恋愛結婚が普通だ。


「・・・」


あたしが黙り込んでいるとリース様のお兄さんはあたしを嘲笑うように言った。


「少し考えれば分かることだと思うがな。平民と貴族が結婚するなんて出来ないことが。」


・・・ジャックと同じ言葉。


あたしはいら立って反論した。


「で、ですが・・・!フィオナ様は・・・王妃様は平民だったのにも関わらず国王陛下と恋愛結婚したじゃありませんか!」


そうよ、フィオナ様は平民だったけどこの国で最も地位の高い男性と結婚したんだ。


不可能なはずがない。


あたしがそう言うと、リース様のお兄さんは眉をひそめた。


「・・・本当に、何も知らないんだな。お前ら平民は。」


何も知らない・・・?


どういうことなの・・・?


「あぁ、平民の間では”視察に訪れた国王が平民だった王妃を見初めて悪行の数々を働いた婚約者を断罪して結ばれた”ってなってるんだっけか。王妃陛下がこれを聞いたらどう思うだろうな。」


そう言いながら彼はクックッと笑う。


「そ、それの何がおかしいの!?素敵な物語じゃない!あたしはそのストーリーが大好きなのに!」


あたしはそんな彼の態度にイラついて声を荒げた。


「・・・聞くが、いくら国王が認めたとはいえ平民上がりの王妃が他の貴族連中にも受け入れられると思うか?」


「え・・・。」


な、なによその質問・・・。


「王妃陛下が王宮で過ごしている間侍女や王宮に訪れた貴族たちに蔑まれていたのを知らないのか?」


!!!


蔑まれていた?


フィオナ様が?


王宮にいる間ずっと・・・?


「ど・・・どうして・・・。」


「決まってるだろ。平民だからだ。王妃というのは国で最も地位の高い女性だ。現にこの国の歴代王妃は公爵家か侯爵家の令嬢、または他国の姫だった。下賤な生まれの者が、貴族である自分たちより高い地位にいるんだぞ。貴族っていうのはプライドが高いからな。その事実が許せなかったんだろう。」


「・・・」


そんなこと知らなかった。


あたしたち平民は誰一人知らないだろう。


「それだけじゃない。国王陛下と王妃陛下は愛し合ってすらいなかった。」


「っ!?」


王様と王妃様が愛し合っていなかったですって!?


「王妃陛下は元々市井で愛する夫と暮らしていた。それを国王陛下が無理矢理王宮へ連れて行ったんだ。この国で最も権力を持つ男に平民が逆らえるはずがない。可哀そうにな。」


「う、嘘よ・・・。あたしそんなの信じない・・・。」


フィオナ様は愛する人が別にいた?


王様はフィオナ様にアプローチしてやっと受け入れてもらえたんじゃなくて無理矢理奪った・・・?


本の内容とまるで違うじゃない・・・!


「考えてもみろよ。国王陛下と王妃陛下が愛し合っているのに、何故国王には側妃がいるんだ?」


彼の言う通り、この国には側妃が一人いる。


名門侯爵家のご令嬢だったと聞く。


「そ、それはフィオナ様がお亡くなりになられたから・・・王様が妃を必要として・・・。」


「側妃は王妃陛下が生きていた頃からいたぞ?」


「じゃ、じゃあどうして・・・。」


「仕事をさせるためだ。王妃陛下は平民で王妃の仕事が出来る人ではなかったから。王妃としての仕事をさせるためだけに側妃として迎えたんだ。」


・・・そんな・・・酷すぎる・・・!


知らなかった。


こんなのは小説には書いていなかった。


「これが事実だ。」


顔色を悪くするあたしをよそにリース様のお兄さんはそう言った。


「・・・」


「平民には衝撃的な内容だろうが、貴族の間ではこれは周知の事実だ。」


貴族のみんなは知ってたんだ、このこと。


そういえば、エイドリアン様はあたしの言うことはなんだって聞いてくれたのにフィオナ様の話だけはあまりしたがらなかった。


そういうこと・・・。


「最初の男爵令息で満足しておけばよかったのにな。」


リース様のお兄さんが馬鹿にするように言った。


「・・・なんで知ってるんですか、そのこと。」


「お前とリースが関係を持っていることを知って色々とお前の素性を調べさせてもらった。お前は地位の高い男なら誰でもいいようだな。しかし、エイドリアン殿下がローラン公爵令嬢との婚約を破棄してお前を選んだのには驚いた。少なくともあの王子だけはお前に本気だったんだな。」


エイドリアン様・・・。


あんな風に罵倒してしまったけれど、そういえば婚約者との関係を切ってくれたのは彼だけだったな・・・。


「はぁ・・・あたしは伯爵夫人にはなれないのか・・・。」


あたしがガックリと項垂れて言った。


その言葉を聞いたリース様のお兄さんが不思議そうな顔で言った。


「伯爵夫人?何を言っている?」


「え・・・?だってリース様は伯爵令息でしょう?だからリース様と結婚したら伯爵夫人になれるんじゃ・・・。」


その時、彼は固まった。


そして溜息をついた。


「馬鹿なのか・・・。」


な、何なの?


「俺がリースの兄だということを忘れたのか?伯爵家の次期当主は俺だ。リースが婚約者の侯爵令嬢と婚約破棄をしてもどちらにせよお前は伯爵夫人にはなれない。リースは侯爵令嬢の生家に婿入りする予定だからな。侯爵令嬢と結婚しなければ平民だ。」


う、嘘・・・!


リース様が平民ですって・・・!?


あたしはまた衝撃を受けた。


「で、でもリース様はあたしを好いてくれていました!婚約者の侯爵令嬢とどうしても結婚しなければいけないのならあたしをせめて愛人に・・・!」


もうこの際愛人でもいい。


何とかして生活出来るようにしなければ。


「お前馬鹿か?婿入りの分際で愛人を持つだなんて。しかも相手の方が爵位は上だ。そんなことしたら侯爵家を馬鹿にしていると思われるだろう。」


た、確かに・・・!


あたしは愛人にすらなれないことを知って絶望した。


「とにかく、もう二度とリースには近づくな。お前たちのせいで名門侯爵家との婚約が白紙になりそうになったんだからな。今リースが必死で謝罪しに行ってるが、婚約を継続できるか・・・。」


彼は忌々しそうな顔で私を見た。


あたしはこれ以上この場にいるのが嫌になって足早に立ち去った。


あたしはもう自分と関係を持った男の人のことを信用できなくなった。


「婚約者と別れてあたしをお嫁さんにして」


そう言った時、彼らはみんなして軽く笑っただけだった。


誰一人、「いいよ」とは言ってくれなかった・・・。


つまり、皆あたしに対して本気ではなかったということ。


婚約者と別れる気なんてさらさら無かったのだ。


これからどうすればいいの?


侯爵令息にも伯爵令息にも捨てられて、他に関係を持った貴族令息たちも信用できない。


本当にどうすれば・・・


あたしは必死で考えた。


そうだ・・・!


彼がいるじゃない・・・!


あたしは村にいた時にプロポーズされた男爵令息を思い出した。


彼はあたしにメロメロだった。


きっとまたあたしを受け入れてくれるはず・・・!


あたしはそう思い、今度は故郷へ戻ることにした―


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