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王宮 リサside

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初めて来る王宮。


煌びやかでとっても素敵な場所だった。


男爵家なんて比にならない。


ここにいるとあたしは本物のお姫様になったような気がした。


「リサ。この部屋を使うといい。」


エイドリアン様はあたしに部屋を用意してくれた。


「わぁ~!とっても嬉しいですっ!ありがとうございますエイドリアン様っ!」


私は大げさに喜んでみせた。


こうすれば大体の男の人はあたしに好感を抱く。


あたしは王都に行ってたくさんの貴族令息と関わるようになってから彼らがどのような女性を好むのかを理解するようになった。


まず貴族令息の婚約者の大体は貴族令嬢だ。


貴族令嬢というのは淑女教育がされていて滅多に笑うことはないし、はしゃぐこともない。


だからこそあたしのような貴族令嬢とは真逆な女の子は新鮮で好かれる。


貴族の令嬢は婚約者からプレゼントを贈られても「ありがとうございます。」と微笑むだけ。


しかしあたしは違う。


大げさに喜び、感動したように見せるのだ。


そうすることでもっとこの子に何かあげたいと男性は思うようになる。


あとは表情をクルクル変えることだ。


貴族令嬢は表情を変えない教育をされている。


高位貴族であればあるほどその教育は厳しいものとなる。


だからあたしは貴族令息の前では表情をクルクル変えてみせた。


そんなことをしていると大体の貴族令息はあたしに惚れ込んでくれた。


それであたしはここまで成り上がった。


あたしはエイドリアン様と結婚するんだ。


そして王妃になる。


この国で最も高貴な女性になるのよ!


この時のあたしは自分が王妃になれると信じて疑わなかった。



それからエイドリアン様はあたしを溺愛した。


あたしが欲しいと言ったものは何でも買ってくれるし、行きたいと言ったところはどこでも連れて行ってくれた。


あぁ、最高だわ―


これこそがあたしの望んでいた生活よ!


さすが王家という感じで、男爵家と比べ物にならないほどドレスや宝石を買ってくれた。


あたしが着飾るとエイドリアン様は頬を染めて褒めてくれるし、王宮にいた執事や男性の文官もあたしの可愛らしい容姿に惚れ込んでいるようだった。


その時にあたしはエイドリアン様の弟である第二王子のシャルル様と王宮の廊下で偶然出会った。


エイドリアン様よりかは劣るが、シャルル様もかなり美しい部類に入る。


何よりこの人はエイドリアン様よりも優秀らしい。


シャルル様は将来有望間違いなしの男だった。


あたしはシャルル様のそこに魅力を感じ、今まで貴族令息やエイドリアン様に接するときと同じように話しかけた。


「初めましてッ!シャルル様!あたし、リサって言います!エイドリアン様とは親しくさせていただいています!」


あたしは精一杯愛想を振りまいた。


しかしシャルル様はエイドリアン様のようにあたしに対して頬を染めたりはしなかった。


それどころか、ひどい言葉を投げかけてきたのだ。


「お前が兄上が寵愛していると噂の平民女か?随分とマナーがなっていないな。王宮へ上がるならもう少しマナーや礼儀を身に着けてからにしたらどうだ?それでは兄上の名に傷がつくぞ。」


シャルル様は冷たい声で言い放った。


「なっ・・・!」


男性にこんなにキツく言われたのは初めてだった。


何よこいつ!腹立つわね!


あたしは目の前にいる第二王子に怒りを覚えた。


こいつ・・・あたしが王妃になったら処刑してやる!


あたしはそれ以来第二王子を嫌悪するようになった。








王宮に住んでからしばらく経った時、エイドリアン様は完全にあたしにメロメロになっていた。


「リサ。」


そう言って頬を染め、優しく微笑んでくれる。


もうエイドリアン様はあたしのものってかんじ?


しかし問題があった。


それが、エイドリアン様には婚約者がいたことだ。


ローラン公爵家の令嬢でエレンという名前の女性らしい。


ローラン公爵家といえば勉強嫌いのあたしでも知ってるほどの家門だ。


エイドリアン様はそのご令嬢との婚約を白紙にすると言ってくれた。


嬉しかった。


あたしはついに貴族最高位の公爵令嬢に勝ったのだ。


そしてエイドリアン様はあたしと一緒にいる時に婚約者であるエレン様を王宮に呼び寄せ婚約解消を告げた。


その時のエレン様の絶望した顔は面白かったわ!


きっと本気でエイドリアン様のこと好きだったんでしょうね。


まあエイドリアン様は無能だけど顔と地位だけは一級品だし?


後で聞いた話だけどエイドリアン様とエレン様は婚約者候補として何年も一緒にいたらしいわ。


これだけエイドリアン様に尽くしてきたのに、最後は捨てられちゃうだなんて可哀そう~。


この時のあたしは完全にエレン様のことを見下していた。


しかし、ある日を境に異変が起き始めた。


あたしが部屋でくつろいでいると、突然矢が飛んできたのだ。


「キャアッ!」


何なの?


何で矢が・・・?


誰かがあたしの命を狙っているの・・・?


思い当たる人物は一人しかいない。


きっとあの女よ・・・!


エレン・ローラン


あの女しかありえない!


エイドリアン様があたしを選んだことを根に持ってこんなことをしてきたんだわ・・・!


なんて陰湿な女!


あんたがエイドリアン様に選ばれなかったのは魅力が無かったからでしょうに!


あたしはエイドリアン様に泣きついた。


きっとエレン様がこんなことをしたのだろうと。


そうしたらエイドリアン様は怒ってローラン公爵家へ抗議に行くと言ってくれた。


暗殺者を雇ったのがエレン様であるという証拠はなかったが、もし間違ってたとしてもエイドリアン様が勝手にやったことだと言えばいいだろう。


エイドリアン様は王子なんだし!


公爵家の令嬢を冤罪で罵倒したくらいでは罪に問われないだろう。


この時のあたしはそう思っていた。


しかし、ローラン公爵家から帰ってきたエイドリアン様の様子が何だか変だった。


抗議に行く前のような怒りは一切感じられなかったし、どこか穏やかな顔をしていた。


何なのかしら・・・?


そう思っていたら、エイドリアン様が突然とんでもないことを言いだした。


王太子の座を下りて平民になるから、僕と結婚してくれと。


あたしはその時冗談じゃないと思った。


せっかく手に入れたこの悠々自適な暮らしを手放すの?


王太子じゃないあんたに興味なんてないのよ!


あたしは怒りに任せ、エイドリアン様を罵倒した。


エイドリアン様はショックを受けたような顔をしていたが、気にしなかった。


そしてあたしは荷物をまとめて王宮を出て行った。


王宮での暮らしは最高だったが、あれが夫では将来苦労の連続だろう。


私はそう思い、エイドリアン様を見限ることにした。


大丈夫、私は美しいのだから。


この先男なんていくらでも見つかるはずだ。


この時の私はそう信じて疑わなかった―


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