40 / 54
憧れ リサside
しおりを挟む
あたしの名前はリサ。
平民だから家名はない。
あたしは元々王国の男爵領の領民として暮らしていた。
「もう、なんであたしがこんなことしなきゃいけないのよ!!!」
あたしは畑を耕しながら声を荒げた。
それを聞いたジャックが呆れた様子で私に言った。
「我慢しろよリサ。俺たちはこうすることでしか生きられねえんだ。」
ジャックはあたしの隣の家に住む同い年の男子だ。
親同士の仲が良かったこともあり幼い頃からよく遊んでいた。
いわゆる幼馴染というやつだ。
「あたしはお姫様なの!!!いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるんだから!!!」
あたしのその言葉にジャックはギャハハと笑い出す。
「お前、いい加減にしろよ。昔から言ってるだろ。平民と王子が結婚とか天地がひっくり返ってもありえねえって。」
あたしはジャックのその言葉にイラッとした。
あたしは昔から貴族令嬢に憧れを抱いていた。
美しいドレスを着てキラキラしている貴族令嬢。
畑仕事なんてやったこともないだろうに。
「そんなの、分からないじゃない!」
「いや、普通に考えたら分かるだろ。平民が王妃になれるわけがない。そんなのは子供でも分かる。」
ジャック、今に見てなさい・・・!
あたしは目の前で大笑いするジャックをいつか見返してやろうと思った。
そんなある日、あたしは領地の中心街にある書店に来ていた。
あたしは恋愛小説が好きだ。
勉強の本を読むのは嫌いだが、恋愛小説は別だ。
今日はどんな本を読もうかな。
そう思って店内に並ぶ本を見ていたとき、ある一冊の本が目に留まった。
ん・・・?これは・・・?
その本は「美貌の王子と平民の少女」というタイトルの本だった。
あらすじを読んでみてあたしは驚いた。
これこそあたしの理想そのものだったからだ。
この本は、タイトル通り王子と平民の恋物語で、誰にも心を開くことのなかった冷酷で美しい王子が平民の少女と出会い、恋に落ちるというものだ。
王子には元々美しく聡明な婚約者がいたが、最終的にはヒロインを選んで結婚し、王と王妃になるという物語。
あたしはこの本に強く惹かれた。
そうよ、あたしはこうなりたかったのよ。
あたしはしばらくその本を食い入るようにじっと眺めていた。
すると、店主があたしに声をかけてきた。
「こんにちは、お嬢さん。その本に興味があるのかい?」
店主は穏やかに微笑みながら
「あっ、こんにちは。はい!とっても素敵な物語ですよね!」
あたしは満面の笑みで答えた。
「そうだね。それは実話をもとにして作られたストーリーなんだ。知ってるかい?」
あたしはその言葉に驚いた。
この話が実話ですって!?
つまり、この物語は本当にあったことなのだ。
「え、そうなんですか!?」
「あぁ、その物語はね、現国王陛下と現王妃陛下のフィオナ様がモデルなんだよ。」
王様と王妃様が・・・。
結構最近じゃない!
「ということは、王妃様は元々は平民だったのですか?」
あたしは店主に尋ねた。
「そうそう。元々は市井で暮らす平民だったそうだ。それを視察に訪れた国王陛下が一目惚れしたんだと。なんともロマンチックな話だな。」
す、素敵・・・!
そうよ、これこそあたしの憧れよ!
「まぁ、我々にとっては夢のまた夢だけどね。」
「えっ、どういうことですか?」
「王妃陛下はね、類稀なる美貌を持っていたんだ。それも絶世の美女と呼ばれるほどのね。だから国王陛下に見初められた。」
なるほど、そういうことか。
類稀なる美貌・・・か。
あたしは家に帰って、両親に王妃様のことを聞いてみた。
すると、詳しく王様と王妃様の話を聞くことが出来た。
王妃様はとある侯爵領で暮らしていた平民で、そこに視察に来た王様に一目惚れされたそうだ。
王様は王妃様にアプローチを続け、王妃様も王様に次第に惹かれていった。
そして二人はめでたく両想いとなった。
だが、王様には婚約者がいた。
王様の婚約者は美しく聡明な名門侯爵家のご令嬢だった。
王様と王妃様の仲を嫉妬したそのご令嬢は王妃様に嫌がらせをするようになる。
それを王様が断罪し、婚約破棄を突き付け、二人は結婚した。
それを聞いたあたしは感動のあまり言葉が出なかった。
こんなおとぎ話のような話が実際にあっただなんて。
「リサ、お前は昔から夢見がちなところがある。国王陛下と王妃陛下の件は異例中の異例だ。」
「そうよリサ。やはり結婚は身の丈に合う相手とするのが一番いいと思うの。」
その後に両親が何か言ってきたがあたしの耳には一切入ってこなかった。
その日から王妃フィオナ様はあたしの憧れの存在となった。
平民だから家名はない。
あたしは元々王国の男爵領の領民として暮らしていた。
「もう、なんであたしがこんなことしなきゃいけないのよ!!!」
あたしは畑を耕しながら声を荒げた。
それを聞いたジャックが呆れた様子で私に言った。
「我慢しろよリサ。俺たちはこうすることでしか生きられねえんだ。」
ジャックはあたしの隣の家に住む同い年の男子だ。
親同士の仲が良かったこともあり幼い頃からよく遊んでいた。
いわゆる幼馴染というやつだ。
「あたしはお姫様なの!!!いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれるんだから!!!」
あたしのその言葉にジャックはギャハハと笑い出す。
「お前、いい加減にしろよ。昔から言ってるだろ。平民と王子が結婚とか天地がひっくり返ってもありえねえって。」
あたしはジャックのその言葉にイラッとした。
あたしは昔から貴族令嬢に憧れを抱いていた。
美しいドレスを着てキラキラしている貴族令嬢。
畑仕事なんてやったこともないだろうに。
「そんなの、分からないじゃない!」
「いや、普通に考えたら分かるだろ。平民が王妃になれるわけがない。そんなのは子供でも分かる。」
ジャック、今に見てなさい・・・!
あたしは目の前で大笑いするジャックをいつか見返してやろうと思った。
そんなある日、あたしは領地の中心街にある書店に来ていた。
あたしは恋愛小説が好きだ。
勉強の本を読むのは嫌いだが、恋愛小説は別だ。
今日はどんな本を読もうかな。
そう思って店内に並ぶ本を見ていたとき、ある一冊の本が目に留まった。
ん・・・?これは・・・?
その本は「美貌の王子と平民の少女」というタイトルの本だった。
あらすじを読んでみてあたしは驚いた。
これこそあたしの理想そのものだったからだ。
この本は、タイトル通り王子と平民の恋物語で、誰にも心を開くことのなかった冷酷で美しい王子が平民の少女と出会い、恋に落ちるというものだ。
王子には元々美しく聡明な婚約者がいたが、最終的にはヒロインを選んで結婚し、王と王妃になるという物語。
あたしはこの本に強く惹かれた。
そうよ、あたしはこうなりたかったのよ。
あたしはしばらくその本を食い入るようにじっと眺めていた。
すると、店主があたしに声をかけてきた。
「こんにちは、お嬢さん。その本に興味があるのかい?」
店主は穏やかに微笑みながら
「あっ、こんにちは。はい!とっても素敵な物語ですよね!」
あたしは満面の笑みで答えた。
「そうだね。それは実話をもとにして作られたストーリーなんだ。知ってるかい?」
あたしはその言葉に驚いた。
この話が実話ですって!?
つまり、この物語は本当にあったことなのだ。
「え、そうなんですか!?」
「あぁ、その物語はね、現国王陛下と現王妃陛下のフィオナ様がモデルなんだよ。」
王様と王妃様が・・・。
結構最近じゃない!
「ということは、王妃様は元々は平民だったのですか?」
あたしは店主に尋ねた。
「そうそう。元々は市井で暮らす平民だったそうだ。それを視察に訪れた国王陛下が一目惚れしたんだと。なんともロマンチックな話だな。」
す、素敵・・・!
そうよ、これこそあたしの憧れよ!
「まぁ、我々にとっては夢のまた夢だけどね。」
「えっ、どういうことですか?」
「王妃陛下はね、類稀なる美貌を持っていたんだ。それも絶世の美女と呼ばれるほどのね。だから国王陛下に見初められた。」
なるほど、そういうことか。
類稀なる美貌・・・か。
あたしは家に帰って、両親に王妃様のことを聞いてみた。
すると、詳しく王様と王妃様の話を聞くことが出来た。
王妃様はとある侯爵領で暮らしていた平民で、そこに視察に来た王様に一目惚れされたそうだ。
王様は王妃様にアプローチを続け、王妃様も王様に次第に惹かれていった。
そして二人はめでたく両想いとなった。
だが、王様には婚約者がいた。
王様の婚約者は美しく聡明な名門侯爵家のご令嬢だった。
王様と王妃様の仲を嫉妬したそのご令嬢は王妃様に嫌がらせをするようになる。
それを王様が断罪し、婚約破棄を突き付け、二人は結婚した。
それを聞いたあたしは感動のあまり言葉が出なかった。
こんなおとぎ話のような話が実際にあっただなんて。
「リサ、お前は昔から夢見がちなところがある。国王陛下と王妃陛下の件は異例中の異例だ。」
「そうよリサ。やはり結婚は身の丈に合う相手とするのが一番いいと思うの。」
その後に両親が何か言ってきたがあたしの耳には一切入ってこなかった。
その日から王妃フィオナ様はあたしの憧れの存在となった。
88
お気に入りに追加
3,976
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる