37 / 54
国王陛下③
しおりを挟む
「・・・久々に会った父親に言う言葉がそれか?」
国王の視線は相変わらず鋭かった。
「私はあなたを父親だと思ったことはありません。そしてそれは兄上も同じのはずです。」
それを言った途端、国王が眉をひそめた。
こんなにハッキリと言われてさすがに気分を害したのだろう。
「・・・本当に誰に似たのか分からないな。お前たちは。」
国王はフッと軽く笑った。
「少なくとも父上には似ていません。」
シャルルは父に厳しい視線を向けてハッキリと言った。
「あぁ、そうだな・・・。」
国王はそう言いながら視線を横に流した。
貴族の夫人たちが見たら一瞬で惚れそうなくらい美しい。
第二王子だった頃はその冷たい美貌が逆に令嬢たちに人気があったのだ。
「陰湿だな。私の味方がこの宮内にいないことを知っていてこんな風にするのか。」
国王はどこか楽しそうだった。
シャルルはそれを不思議に思いながらも言い返す。
「王宮内にあなたの味方がいないのはあなた自身の行動が招いた結果です。同情を誘わないでください。」
シャルルは言いたいことをハッキリと言った。
それを聞いた国王は一瞬無表情になった。
シャルルはふと部屋の中に視線を移す。
(あれは・・・。)
シャルルの目に留まったのは机の上に置かれている剣だった。
あれは間違いなく国王がいつも腰に差している剣だった。
(何故あんなところにあるのだろう・・・?いつも肌身離さず持っているというのに・・・。)
「・・・あの女の入れ知恵か?あの女は昔からお前を王にすることに必死だったからな。」
あの女、とはシャルルの母である側妃のことだろう。
(母上とは20年以上も一緒にいたというのに・・・あの女呼ばわりか。)
「いえ、違います。私は私の意思で王になると決め、ここへ来ました。」
国王はずっと黙っていたが、しばらくして口を開いた。
「それでお前、ローラン公爵家を取り込もうと必死だったわけか。」
(っ!?!?)
シャルルは国王が何気なく放った言葉に衝撃を受けた。
(う、うそだ・・・。バレていたのか・・・?計画は全て・・・。)
シャルルは驚いて国王を見た。
「気づいていたとは思わなかった、とでも言いたげな顔だな。お前は私が息子に出し抜かれるような無能に見えたのか?心外だな。」
国王が不敵に笑う。
その笑みが、何かを諦めているようにも見えた。
「・・・気づいていたのなら、何故ッ!知らないふりしてここにいたのですか・・・。」
シャルルは訳が分からないといったように国王に尋ねた。
父の真意が分からなかった。
(何故だ・・・?全てを知っていたのなら何故・・・。)
国王はシャルルの方を見ることは無く窓の外だけをじっと見つめていた。
その瞳は、切なげに揺れていた。
「・・・何故だろうな。」
国王はそれだけポツリと呟いて黙り込み、しばらくして口を開いた。
「これが、私に最もふさわしい末路だと思ったから―」
国王の視線は相変わらず鋭かった。
「私はあなたを父親だと思ったことはありません。そしてそれは兄上も同じのはずです。」
それを言った途端、国王が眉をひそめた。
こんなにハッキリと言われてさすがに気分を害したのだろう。
「・・・本当に誰に似たのか分からないな。お前たちは。」
国王はフッと軽く笑った。
「少なくとも父上には似ていません。」
シャルルは父に厳しい視線を向けてハッキリと言った。
「あぁ、そうだな・・・。」
国王はそう言いながら視線を横に流した。
貴族の夫人たちが見たら一瞬で惚れそうなくらい美しい。
第二王子だった頃はその冷たい美貌が逆に令嬢たちに人気があったのだ。
「陰湿だな。私の味方がこの宮内にいないことを知っていてこんな風にするのか。」
国王はどこか楽しそうだった。
シャルルはそれを不思議に思いながらも言い返す。
「王宮内にあなたの味方がいないのはあなた自身の行動が招いた結果です。同情を誘わないでください。」
シャルルは言いたいことをハッキリと言った。
それを聞いた国王は一瞬無表情になった。
シャルルはふと部屋の中に視線を移す。
(あれは・・・。)
シャルルの目に留まったのは机の上に置かれている剣だった。
あれは間違いなく国王がいつも腰に差している剣だった。
(何故あんなところにあるのだろう・・・?いつも肌身離さず持っているというのに・・・。)
「・・・あの女の入れ知恵か?あの女は昔からお前を王にすることに必死だったからな。」
あの女、とはシャルルの母である側妃のことだろう。
(母上とは20年以上も一緒にいたというのに・・・あの女呼ばわりか。)
「いえ、違います。私は私の意思で王になると決め、ここへ来ました。」
国王はずっと黙っていたが、しばらくして口を開いた。
「それでお前、ローラン公爵家を取り込もうと必死だったわけか。」
(っ!?!?)
シャルルは国王が何気なく放った言葉に衝撃を受けた。
(う、うそだ・・・。バレていたのか・・・?計画は全て・・・。)
シャルルは驚いて国王を見た。
「気づいていたとは思わなかった、とでも言いたげな顔だな。お前は私が息子に出し抜かれるような無能に見えたのか?心外だな。」
国王が不敵に笑う。
その笑みが、何かを諦めているようにも見えた。
「・・・気づいていたのなら、何故ッ!知らないふりしてここにいたのですか・・・。」
シャルルは訳が分からないといったように国王に尋ねた。
父の真意が分からなかった。
(何故だ・・・?全てを知っていたのなら何故・・・。)
国王はシャルルの方を見ることは無く窓の外だけをじっと見つめていた。
その瞳は、切なげに揺れていた。
「・・・何故だろうな。」
国王はそれだけポツリと呟いて黙り込み、しばらくして口を開いた。
「これが、私に最もふさわしい末路だと思ったから―」
144
お気に入りに追加
3,987
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です
LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。
用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。
クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。
違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。
離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。
kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」
父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。
我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。
用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。
困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。
「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる