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国王陛下③
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「・・・久々に会った父親に言う言葉がそれか?」
国王の視線は相変わらず鋭かった。
「私はあなたを父親だと思ったことはありません。そしてそれは兄上も同じのはずです。」
それを言った途端、国王が眉をひそめた。
こんなにハッキリと言われてさすがに気分を害したのだろう。
「・・・本当に誰に似たのか分からないな。お前たちは。」
国王はフッと軽く笑った。
「少なくとも父上には似ていません。」
シャルルは父に厳しい視線を向けてハッキリと言った。
「あぁ、そうだな・・・。」
国王はそう言いながら視線を横に流した。
貴族の夫人たちが見たら一瞬で惚れそうなくらい美しい。
第二王子だった頃はその冷たい美貌が逆に令嬢たちに人気があったのだ。
「陰湿だな。私の味方がこの宮内にいないことを知っていてこんな風にするのか。」
国王はどこか楽しそうだった。
シャルルはそれを不思議に思いながらも言い返す。
「王宮内にあなたの味方がいないのはあなた自身の行動が招いた結果です。同情を誘わないでください。」
シャルルは言いたいことをハッキリと言った。
それを聞いた国王は一瞬無表情になった。
シャルルはふと部屋の中に視線を移す。
(あれは・・・。)
シャルルの目に留まったのは机の上に置かれている剣だった。
あれは間違いなく国王がいつも腰に差している剣だった。
(何故あんなところにあるのだろう・・・?いつも肌身離さず持っているというのに・・・。)
「・・・あの女の入れ知恵か?あの女は昔からお前を王にすることに必死だったからな。」
あの女、とはシャルルの母である側妃のことだろう。
(母上とは20年以上も一緒にいたというのに・・・あの女呼ばわりか。)
「いえ、違います。私は私の意思で王になると決め、ここへ来ました。」
国王はずっと黙っていたが、しばらくして口を開いた。
「それでお前、ローラン公爵家を取り込もうと必死だったわけか。」
(っ!?!?)
シャルルは国王が何気なく放った言葉に衝撃を受けた。
(う、うそだ・・・。バレていたのか・・・?計画は全て・・・。)
シャルルは驚いて国王を見た。
「気づいていたとは思わなかった、とでも言いたげな顔だな。お前は私が息子に出し抜かれるような無能に見えたのか?心外だな。」
国王が不敵に笑う。
その笑みが、何かを諦めているようにも見えた。
「・・・気づいていたのなら、何故ッ!知らないふりしてここにいたのですか・・・。」
シャルルは訳が分からないといったように国王に尋ねた。
父の真意が分からなかった。
(何故だ・・・?全てを知っていたのなら何故・・・。)
国王はシャルルの方を見ることは無く窓の外だけをじっと見つめていた。
その瞳は、切なげに揺れていた。
「・・・何故だろうな。」
国王はそれだけポツリと呟いて黙り込み、しばらくして口を開いた。
「これが、私に最もふさわしい末路だと思ったから―」
国王の視線は相変わらず鋭かった。
「私はあなたを父親だと思ったことはありません。そしてそれは兄上も同じのはずです。」
それを言った途端、国王が眉をひそめた。
こんなにハッキリと言われてさすがに気分を害したのだろう。
「・・・本当に誰に似たのか分からないな。お前たちは。」
国王はフッと軽く笑った。
「少なくとも父上には似ていません。」
シャルルは父に厳しい視線を向けてハッキリと言った。
「あぁ、そうだな・・・。」
国王はそう言いながら視線を横に流した。
貴族の夫人たちが見たら一瞬で惚れそうなくらい美しい。
第二王子だった頃はその冷たい美貌が逆に令嬢たちに人気があったのだ。
「陰湿だな。私の味方がこの宮内にいないことを知っていてこんな風にするのか。」
国王はどこか楽しそうだった。
シャルルはそれを不思議に思いながらも言い返す。
「王宮内にあなたの味方がいないのはあなた自身の行動が招いた結果です。同情を誘わないでください。」
シャルルは言いたいことをハッキリと言った。
それを聞いた国王は一瞬無表情になった。
シャルルはふと部屋の中に視線を移す。
(あれは・・・。)
シャルルの目に留まったのは机の上に置かれている剣だった。
あれは間違いなく国王がいつも腰に差している剣だった。
(何故あんなところにあるのだろう・・・?いつも肌身離さず持っているというのに・・・。)
「・・・あの女の入れ知恵か?あの女は昔からお前を王にすることに必死だったからな。」
あの女、とはシャルルの母である側妃のことだろう。
(母上とは20年以上も一緒にいたというのに・・・あの女呼ばわりか。)
「いえ、違います。私は私の意思で王になると決め、ここへ来ました。」
国王はずっと黙っていたが、しばらくして口を開いた。
「それでお前、ローラン公爵家を取り込もうと必死だったわけか。」
(っ!?!?)
シャルルは国王が何気なく放った言葉に衝撃を受けた。
(う、うそだ・・・。バレていたのか・・・?計画は全て・・・。)
シャルルは驚いて国王を見た。
「気づいていたとは思わなかった、とでも言いたげな顔だな。お前は私が息子に出し抜かれるような無能に見えたのか?心外だな。」
国王が不敵に笑う。
その笑みが、何かを諦めているようにも見えた。
「・・・気づいていたのなら、何故ッ!知らないふりしてここにいたのですか・・・。」
シャルルは訳が分からないといったように国王に尋ねた。
父の真意が分からなかった。
(何故だ・・・?全てを知っていたのなら何故・・・。)
国王はシャルルの方を見ることは無く窓の外だけをじっと見つめていた。
その瞳は、切なげに揺れていた。
「・・・何故だろうな。」
国王はそれだけポツリと呟いて黙り込み、しばらくして口を開いた。
「これが、私に最もふさわしい末路だと思ったから―」
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