貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

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国王陛下①

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シャルルは神妙な面持ちで一人王宮の廊下を歩いていた。


(・・・)


シャルルが向かっているのは国王の執務室だ。


父と話をするどころか会うのさえ久しぶりだ。


それほどに国王は自身の息子に関心がなかった。


(・・・許すわけにはいかない。)


国王に人生を壊された者たちを間近で見てきたからこそ強くそう思う。


母は父を想い泣き続け、王妃陛下は心労で亡くなり、兄は冷遇され続けた。


(・・・父上は罪を犯しすぎた。)


幼い頃からシャルルは父親とはほとんど話したことがなかった。


国の英雄ではあるが同時に誰もが恐れる暴君でもある。


それが父だった。


何としてでもシャルルは今回の計画をやり遂げなければいけなかった。


決意を固め、歩き続ける。




しばらくして、国王の執務室が見えてきた。


国王に側近はいないため、執務室には掃除をするメイド以外は入ったことがない。


もちろんシャルルも初めてである。


そしてシャルルは扉の前に立ち、深呼吸をした。


覚悟を決めて扉を勢いよく開けた。


―がそこに国王の姿はなかった。


(・・・何故いないんだ?今は執務の時間のはずでは・・・?)


シャルルは不思議に思い、きょろきょろと部屋の中を見渡してみる。


すると執務室の中にある扉が目に入った。


その扉は隣にいる国王の部屋と繋がっていて、何故か少し開いていた。


(まさか・・・あの部屋にいるのか・・・?)


シャルルはそっと扉に近づいて中をのぞいてみる。


(・・・!)


そこには、部屋で全開にした窓から入る風に吹かれながら一人立ち尽くしている国王がいた。


その瞳はどこか憂いを帯びているようで、シャルルは呆然とした。


国王は40近いがまだまだ若々しく、美しかった。


元々国王は類稀なる美貌の持ち主だった。


こうして見ると一枚の絵画のようだ。


(あんな姿は初めて見た。私が知る父上はいつも・・・)


シャルルの知る「父親」はいつも冷たく瞳には何の感情も映していなかった。


公務の時も、母上といる時も、王妃陛下といる時だっていつもその瞳は暗く冷たいままで。


そんな人間があんな表情をすることがシャルルにとって信じられなかった。


国王に目を奪われていたそのとき―


「・・・シャルルか。」


国王がこちらを見ずに呟いた。


(っ!?バレていたのかっ!?)


シャルルは仕方なく扉を開け国王の前に姿を現した。


「・・・」


だが相変わらず国王はシャルルを見なかった。


(・・・国王の部屋か・・・。)


国王がいた部屋はシャルルの自室よりも豪華でいかにも王の自室といった感じだった。


「・・・父上。こんなところで何をしていたのですか?」


シャルルは父に強い口調で尋ねた。


「お前こそ何をしにここへ来た?」


その時国王はようやくシャルルを視界に入れた。


国王は片方の口端を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべていた。


シャルルはそんな父の姿にゾッとした。


そんなシャルルの姿を見て国王は尋ねた。


「シャルル。お前はこの部屋がどういうところか知っているのか?」


先ほどと違い、国王は真剣な顔だった。


シャルルの答えを待っているようだ。


「・・・国王陛下の自室として代々使われてきた場所でしょうか。」


シャルルがハッキリとそう言うと国王はフッと軽く笑って視線を元に戻した。


「・・・そうか、そうだな。」


父が何故そんなことを尋ねたのかがシャルルには理解できなかった。


怪訝な顔をするシャルルに国王はまた尋ねた。


「それではこの部屋を見てどう思う?」


またも訳の分からない問いだった。


「・・・豪華絢爛でいかにも王の部屋という感じがして、素敵な場所だと思います。」


(何故父上はこんなことを聞くんだ・・・?この部屋に何かあるのか・・・?)


シャルルの答えに国王はハッと嘲笑った。


「素敵な場所、か。」


(本当に昔から何を考えているのか分からない人だ・・・。)


すると国王の瞳が先ほど見た憂いを帯びたものに変化した。


(またそんな表情を・・・。)


「・・・この部屋は私にとっては忌々しい場所でしかない。何せ―





血の繋がった父と兄を殺した場所なのだからな。」





父に告げられた言葉にシャルルは衝撃を受けた。


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