貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
31 / 54

怨念 側妃マリアベルside

しおりを挟む
「――や、やっと帰ってこれた……」

あの後、なんだかんだあって帰ってくることができた。結構近いところにあってよかった。

「……ま、またここ飛ぶの?」

下にはベットがあるがやっぱり怖い。未来ちゃんは興奮してるようで飛び降りようとしていた。

「ちょちょちょ!未来ちゃん飛ぶの!?」
「うん!飛びたい!」

なんとか止めようとしたけど、未来ちゃんはウッキウキで下へと飛び降りた。


下で未来ちゃんがキャーキャー言っている。……嘘でしょ……未来ちゃんここ飛べるのぉ?

「はよ降りてこい」

下からノアの声が聞こえてくる。……降りれたら降りてるわ!

「ちょい!ハシゴ持ってきてよ!行く時置いてたでしょ!?」
「あれ重いんだよ。飛び降りた方がはやい」

なーんーでーーー!?持ってきてくれたらいーじゃーーん!!こんな所から飛び降りれるわけないジャーン!!

「お姉ちゃん降りれないの?」
「そうだぞー。降りれないのかお姉ちゃーん?」

くっそ!百合ちゃんが参戦してきやがった!回復したのは嬉しいけど腹立つぅ!!

「黙らっしゃい!!お、降りれるしー!これくらい……降りれますぅー!!」

私のプライドが火を噴いた。でも怖いものは怖い。


脚だけをプラプラと降ろしてみる。……なんかお尻がゾワゾワとする。

「うぅ……み、見てろぉ!降りるからなぁ!」
「ママ!!」
「未来!!」

未来ちゃんと荊棘さんが泣きながら抱き合っている。……今かぁ……今感動ムード出すのかぁ。なんか周りのみんなも感動ムード出してるんだけどぉ。私ここでビビり散らしてるんですけどぉ。


私がプルプルと震えていると、感動ムードが終わったみんなが私の方に向いてきた。……そんな見ないで……。

「花音ちゃんそろそろ降りてきなよー」
「そうだよー。降りてきたら頭撫でてあげるわよー」
「あーもー!!真唯さんまで悪ノリしないでー!!」

ちくしょう……小さい女の子が飛べて私が飛べないなんてぇ。情けないぃ……。

「はぁ……仕方ない」

ノアがパンパンと2回手を叩いた。……あれ?これってもしかして……。

「ちょちょっと待ってよ!まだ気持ちが整ってないというか、心が統一されてないというか、脚の調子が悪いというか、心の猫ちゃんがビビってるっていうか――」






足を掴まれた。あーまたこのパターン。ヤダヤダ男の子って野蛮ね。……あはは。


イコライザーに布団の上に叩き落とされた。バフンってなった。体がトランポリンみたいにはねる。

「……も、もうちょっと優しくしてぇ……」
「花音ちゃん。それえっちだからこれから言っちゃダメだよ」
「はい……」

百合ちゃんに頭を撫でられた。……ちきしょー。












「――やっぱりおかしいね」

まくっていた服を戻してお腹を隠す。まだまだ思春期なので素肌を見せるのは恥ずかしい。


私はおじいさんおばあさんに体を見られていた。……これだと誤解されそうだね。怪我がないかを見てもらっていた。

「食道に何か異物があるね……なんだろう」
「……あ、あのぅ……」

女の子に卵を産み付けられたとは言いにくい……。

「……あなたはあっちいってて」
「わかった。ただ病名だけは聞かせてくれよ」

おじいさんがみんなの所に行った。おばあさんが優しいな……。

「……まぁ、言いにくいこともあるわよね。でも治すためには言ってもらわないと。ここには機材もないし」
「……信じてくれます?」
「うん。大丈夫よ。言ってみなさい」
「……卵」
「え?」
「卵を産み付けられました……女の子に……」

おばあさんがポカンと口を開けている。まぁそりゃそうか。私も同じ立場なら同じ状況になる。

「……それ本当よね?」
「はい……お恥ずかしながら……」
「……わかったわ。信じる。こんな状況なんだしありえないこともないわよね……」

くっそ恥ずかしい。エプムーサめ、こんなに時間が経ってもダメージを与えてくるとはぁ……。

「ちょっと服を脱いでくれない?」

言われるがまま上の服を脱いだ。ちょっと肌寒い。冷たい空気が肌にまとわりついた。

おばあさんが私の胸の中心くらいに指を置いてきた。目を瞑って集中しているようだ。

「……確かに卵ね。多分カエルの卵みたいなゼリー状のやつ。でも食道に引っ付いてる。カルシウムの塊が食堂に根を張ってるわ」
「カルシウムって根を張るんですか?」
「ただの比喩よ。……でもちょっとだけね……これくらいならお酢を飲めば溶けて胃に落ちていくわ」
「3日以内に治りますか?」
「もちろん飲む量にもよるけど、これくらいなら頑張って飲めば大丈夫よ」

私は体がパァっと軽くなったのがわかる。これで私はエイリアンみたいなことにならなくて済む!

私は服をきながらおばあさんにお礼を言った。

「あの……おばあさんありがとうございます」
「おばあさんじゃなくて、美代子みよこ川口美代子かわぐちみよこよ。ちなみに私の夫は川口幸雄かわぐちさちおよ」

美代子さんはウインクをして私の前にペットボトルに入れられたお酢を置いた。……これを飲むのかぁ。












続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

処理中です...