30 / 54
絶望 側妃マリアベルside
しおりを挟む
「父上、これは一体どういうことなのですか!?」
お兄様が怒り狂って声を荒げている。
「分からない・・・。とりあえず王宮に行って陛下に事実確認をしてくる。」
お父様もお母様もお兄様も困惑していた。
もちろん私もだ。
「これが事実なら・・・・。」
お兄様は真っ赤になって震えている。
「大丈夫です、お兄様。きっとただの噂でしょう。平民を王妃にするのが無理なことくらい、子供でも分かります。陛下はそんなことが分からないほど馬鹿ではないでしょう。」
私は未だ落ち着きを取り戻さないお兄様を何とか宥めた。
「・・・マリアベル。」
お兄様は私をじっと見つめる。
「・・・あまり陛下を信用するな。前王妃陛下が亡くなった後、陛下が変わったのは知っているだろう?あの時の陛下は《この世の全てに絶望したような顔》をしていた。ああいうやつは本当に何をするか分からないんだ。」
お兄様は俯きながら、悲しげにつぶやいた。
(お兄様の言うことは正しいかもしれない・・・。でも私は・・・陛下を信じたい・・・。)
私は心のどこかでまだ陛下を信じていた。
それほど私は、彼を慕っていた。
「お兄様・・・大丈夫。大丈夫です。きっと・・・。」
私たちはお父様が帰ってくるのを待った。
数日後、お父様が侯爵邸に帰ってきた。
その顔は暗く、どんよりとしていた。
私はその瞬間、お父様が王宮で何を言われたのか全てを悟った。
(あぁ・・・私は陛下に捨てられたのね・・・。)
胸がズキズキと痛んだ。
お父様が辛そうな表情で告げた。
「陛下は・・・マリアベルとの婚約は破棄して市井から連れてきた平民の女フィオナを王妃にすると。」
その声は僅かに震えていた。
それを聞いたお母様は泣き崩れ、お兄様は怒りからかプルプルと震えている。
私ももちろん悲しかった。
だけど私は何よりも陛下の幸せを願っていた。
(仕方がないわ・・・。きっと私にないものをその方は持っていたのでしょう。陛下が選んだ人なのだから・・・私は身を引こう。私はまだ若いし、きっと良い相手がまた見つかるわ・・・。陛下じゃなくても・・・。)
私がそんなことを考えていたときだった。
お父様が再び口を開いたのだ。
「・・・そして、マリアベルには陛下の側妃になってもらうと。」
(!?今なんて・・・)
「父上!!!あんまりです!!!陛下は何を考えているんだ!!!」
お兄様は声を荒げた。
「そうですわ!!!何故侯爵令嬢のマリアベルが側妃でその平民の女が正妃なのですか!!!」
お母様もさすがに耐えられなくなったのかお兄様と同じようにお父様に詰め寄った。
二人の言葉にお父様は苦しそうな顔をした。
「私だって、マリアベルを側妃になんかしたくない!!!だが陛下が・・・これは・・・」
(まさか・・・。)
「《王命》だと・・・」
お父様はそう言って項垂れた。
「「!!!!」」
お母様とお兄様もお父様の言葉に何も言えなかった。
王命。
断ればその家門は没落する。
「待ってください、父上。元老院は反対しなかったんですか。こんなの横暴です。」
「それが・・・ほら陛下は少し前に前国王陛下と第一王子殿下を殺害しただろう?それに怖気づいて誰も何も言えなかったようでな・・・。」
「そんな・・・!」
「それと・・・陛下は第二王子だった頃、戦争で数々の武功をたてていた。今の王国があるのは紛れもなく陛下のおかげなんだ。その点も考慮されたようだ。」
「だからって・・・」
お兄様はまだ納得いかないようだ。
だけどこれは王命。
(家族のためにも私は断るわけにはいかない・・・。)
「お父様、私側妃になりますわ。」
「マリアベル・・・!」
「私一人の犠牲で侯爵家が助かるのなら。」
三人とも苦しそうな顔をしていた。
「すまないな、マリアベル・・・。」
「「マリアベル・・・。」」
私は家族を心配させないため、穏やかな笑みを浮かべてみせた。
「私は本当に大丈夫ですから心配なさらないでください。それではそろそろ部屋に戻りますね。」
家族の返事を聞く前に私は足早に去った。
今すぐにでもあの場から去りたかった。
そして自室に戻る。
「・・・」
「うっ・・・うわぁぁ~~~」
その日、私は久しぶりに泣き崩れた。
お兄様が怒り狂って声を荒げている。
「分からない・・・。とりあえず王宮に行って陛下に事実確認をしてくる。」
お父様もお母様もお兄様も困惑していた。
もちろん私もだ。
「これが事実なら・・・・。」
お兄様は真っ赤になって震えている。
「大丈夫です、お兄様。きっとただの噂でしょう。平民を王妃にするのが無理なことくらい、子供でも分かります。陛下はそんなことが分からないほど馬鹿ではないでしょう。」
私は未だ落ち着きを取り戻さないお兄様を何とか宥めた。
「・・・マリアベル。」
お兄様は私をじっと見つめる。
「・・・あまり陛下を信用するな。前王妃陛下が亡くなった後、陛下が変わったのは知っているだろう?あの時の陛下は《この世の全てに絶望したような顔》をしていた。ああいうやつは本当に何をするか分からないんだ。」
お兄様は俯きながら、悲しげにつぶやいた。
(お兄様の言うことは正しいかもしれない・・・。でも私は・・・陛下を信じたい・・・。)
私は心のどこかでまだ陛下を信じていた。
それほど私は、彼を慕っていた。
「お兄様・・・大丈夫。大丈夫です。きっと・・・。」
私たちはお父様が帰ってくるのを待った。
数日後、お父様が侯爵邸に帰ってきた。
その顔は暗く、どんよりとしていた。
私はその瞬間、お父様が王宮で何を言われたのか全てを悟った。
(あぁ・・・私は陛下に捨てられたのね・・・。)
胸がズキズキと痛んだ。
お父様が辛そうな表情で告げた。
「陛下は・・・マリアベルとの婚約は破棄して市井から連れてきた平民の女フィオナを王妃にすると。」
その声は僅かに震えていた。
それを聞いたお母様は泣き崩れ、お兄様は怒りからかプルプルと震えている。
私ももちろん悲しかった。
だけど私は何よりも陛下の幸せを願っていた。
(仕方がないわ・・・。きっと私にないものをその方は持っていたのでしょう。陛下が選んだ人なのだから・・・私は身を引こう。私はまだ若いし、きっと良い相手がまた見つかるわ・・・。陛下じゃなくても・・・。)
私がそんなことを考えていたときだった。
お父様が再び口を開いたのだ。
「・・・そして、マリアベルには陛下の側妃になってもらうと。」
(!?今なんて・・・)
「父上!!!あんまりです!!!陛下は何を考えているんだ!!!」
お兄様は声を荒げた。
「そうですわ!!!何故侯爵令嬢のマリアベルが側妃でその平民の女が正妃なのですか!!!」
お母様もさすがに耐えられなくなったのかお兄様と同じようにお父様に詰め寄った。
二人の言葉にお父様は苦しそうな顔をした。
「私だって、マリアベルを側妃になんかしたくない!!!だが陛下が・・・これは・・・」
(まさか・・・。)
「《王命》だと・・・」
お父様はそう言って項垂れた。
「「!!!!」」
お母様とお兄様もお父様の言葉に何も言えなかった。
王命。
断ればその家門は没落する。
「待ってください、父上。元老院は反対しなかったんですか。こんなの横暴です。」
「それが・・・ほら陛下は少し前に前国王陛下と第一王子殿下を殺害しただろう?それに怖気づいて誰も何も言えなかったようでな・・・。」
「そんな・・・!」
「それと・・・陛下は第二王子だった頃、戦争で数々の武功をたてていた。今の王国があるのは紛れもなく陛下のおかげなんだ。その点も考慮されたようだ。」
「だからって・・・」
お兄様はまだ納得いかないようだ。
だけどこれは王命。
(家族のためにも私は断るわけにはいかない・・・。)
「お父様、私側妃になりますわ。」
「マリアベル・・・!」
「私一人の犠牲で侯爵家が助かるのなら。」
三人とも苦しそうな顔をしていた。
「すまないな、マリアベル・・・。」
「「マリアベル・・・。」」
私は家族を心配させないため、穏やかな笑みを浮かべてみせた。
「私は本当に大丈夫ですから心配なさらないでください。それではそろそろ部屋に戻りますね。」
家族の返事を聞く前に私は足早に去った。
今すぐにでもあの場から去りたかった。
そして自室に戻る。
「・・・」
「うっ・・・うわぁぁ~~~」
その日、私は久しぶりに泣き崩れた。
172
お気に入りに追加
4,019
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

殿下に裏切られたことを感謝しています。だから妹と一緒に幸せになってください。なれるのであれば。
田太 優
恋愛
王子の誕生日パーティーは私を婚約者として正式に発表する場のはずだった。
しかし、事もあろうか王子は妹の嘘を信じて冤罪で私を断罪したのだ。
追い出された私は王家との関係を優先した親からも追い出される。
でも…面倒なことから解放され、私はやっと自分らしく生きられるようになった。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる