貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

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絶望 側妃マリアベルside

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「父上、これは一体どういうことなのですか!?」


お兄様が怒り狂って声を荒げている。


「分からない・・・。とりあえず王宮に行って陛下に事実確認をしてくる。」


お父様もお母様もお兄様も困惑していた。


もちろん私もだ。


「これが事実なら・・・・。」


お兄様は真っ赤になって震えている。


「大丈夫です、お兄様。きっとただの噂でしょう。平民を王妃にするのが無理なことくらい、子供でも分かります。陛下はそんなことが分からないほど馬鹿ではないでしょう。」


私は未だ落ち着きを取り戻さないお兄様を何とか宥めた。


「・・・マリアベル。」


お兄様は私をじっと見つめる。


「・・・あまり陛下を信用するな。前王妃陛下が亡くなった後、陛下が変わったのは知っているだろう?あの時の陛下は《この世の全てに絶望したような顔》をしていた。ああいうやつは本当に何をするか分からないんだ。」


お兄様は俯きながら、悲しげにつぶやいた。


(お兄様の言うことは正しいかもしれない・・・。でも私は・・・陛下を信じたい・・・。)


私は心のどこかでまだ陛下を信じていた。


それほど私は、彼を慕っていた。


「お兄様・・・大丈夫。大丈夫です。きっと・・・。」


私たちはお父様が帰ってくるのを待った。





数日後、お父様が侯爵邸に帰ってきた。


その顔は暗く、どんよりとしていた。


私はその瞬間、お父様が王宮で何を言われたのか全てを悟った。


(あぁ・・・私は陛下に捨てられたのね・・・。)


胸がズキズキと痛んだ。


お父様が辛そうな表情で告げた。


「陛下は・・・マリアベルとの婚約は破棄して市井から連れてきた平民の女フィオナを王妃にすると。」


その声は僅かに震えていた。


それを聞いたお母様は泣き崩れ、お兄様は怒りからかプルプルと震えている。


私ももちろん悲しかった。


だけど私は何よりも陛下の幸せを願っていた。


(仕方がないわ・・・。きっと私にないものをその方は持っていたのでしょう。陛下が選んだ人なのだから・・・私は身を引こう。私はまだ若いし、きっと良い相手がまた見つかるわ・・・。陛下じゃなくても・・・。)


私がそんなことを考えていたときだった。


お父様が再び口を開いたのだ。


「・・・そして、マリアベルには陛下の側妃になってもらうと。」


(!?今なんて・・・)


「父上!!!あんまりです!!!陛下は何を考えているんだ!!!」


お兄様は声を荒げた。


「そうですわ!!!何故侯爵令嬢のマリアベルが側妃でその平民の女が正妃なのですか!!!」


お母様もさすがに耐えられなくなったのかお兄様と同じようにお父様に詰め寄った。


二人の言葉にお父様は苦しそうな顔をした。


「私だって、マリアベルを側妃になんかしたくない!!!だが陛下が・・・これは・・・」


(まさか・・・。)


「《王命》だと・・・」


お父様はそう言って項垂れた。


「「!!!!」」


お母様とお兄様もお父様の言葉に何も言えなかった。


王命。


断ればその家門は没落する。


「待ってください、父上。元老院は反対しなかったんですか。こんなの横暴です。」


「それが・・・ほら陛下は少し前に前国王陛下と第一王子殿下を殺害しただろう?それに怖気づいて誰も何も言えなかったようでな・・・。」


「そんな・・・!」


「それと・・・陛下は第二王子だった頃、戦争で数々の武功をたてていた。今の王国があるのは紛れもなく陛下のおかげなんだ。その点も考慮されたようだ。」


「だからって・・・」


お兄様はまだ納得いかないようだ。


だけどこれは王命。


(家族のためにも私は断るわけにはいかない・・・。)


「お父様、私側妃になりますわ。」


「マリアベル・・・!」


「私一人の犠牲で侯爵家が助かるのなら。」


三人とも苦しそうな顔をしていた。


「すまないな、マリアベル・・・。」


「「マリアベル・・・。」」


私は家族を心配させないため、穏やかな笑みを浮かべてみせた。


「私は本当に大丈夫ですから心配なさらないでください。それではそろそろ部屋に戻りますね。」


家族の返事を聞く前に私は足早に去った。


今すぐにでもあの場から去りたかった。


そして自室に戻る。




「・・・」


「うっ・・・うわぁぁ~~~」


その日、私は久しぶりに泣き崩れた。


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