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その夜

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クリスは作戦を決行する日まで公爵邸に泊まることになった。


そして私は今ベッドに横になり、何時間も眠れずにいた。


シャルル殿下の提案を引き受け、協力するとは言ったものの、やはり心の中にある恐怖と不安は拭えない。


下手すれば反逆罪で捕まるのだ。


そうしたらお父様もお母様も、クリスだってただじゃすまない。


シャルル殿下は優秀な方だし、ローラン公爵家だってかなりの力を持っている。


心配はいらない・・・と思いたいけれどやはり・・・。


恐ろしくて全く寝付けない。


どう頑張っても眠れなかったので私は部屋の外へ出ることにした。




薄暗い公爵邸の廊下を私は一人歩いていた。


私の足音が響き渡るほどに静かだった。


すると前から誰かが歩いてくる。


使用人かしら?それともお父様かお母様?


手に持っていたランプでその人物を照らしてみると、そこには―


「クリス・・・・?」


「エレン・・・・?」


クリスがいた。


私はクリスを見た途端、何故かものすごく安心してしまった。


「クリスだったのね・・・。」


「エレン、どうしたんだ?こんな夜遅くに・・・」


クリスは私に近づいて尋ねた。


「眠れないの・・・。恐ろしくて・・・。」


「恐ろしい・・・?」


「ええ。怖い。もしあの作戦が失敗したらって思うと・・・。」


気づけば私は泣き出していた。


「お父様もお母様もっ!クリスだってっ!無事じゃいられないかもしれないっ!私一人の判断で・・・みんなを失うかもしれないんだってっ。怖くてっ・・・怖くてっ・・・。」


私はパニックになっていた。


それを見たクリスが心配そうな瞳で私を見つめる。


「エレン・・・。」


クリスは泣いていた私を優しく抱きしめた。


「クリス・・・」


そして慰めるように頭を撫でる。


「エレン。大丈夫だ。この前言っただろ?俺が守るって。俺はそんなに頼りないのか・・・?」


「そうじゃないの・・・。だけど・・・」


「エレン、俺たちを信じてくれ。シャルル殿下も義父上も俺も、そう簡単にやられるような人間ではないさ。」


私を抱きしめたクリスの両腕に力が入る。


そしてクリスがふっと笑って私と目線を合わせる。


「眠れないなら、一緒に寝るか・・・?」


その顔はひどく優しかった。


そして、私の胸は未だかつてないくらいドキドキしていた。


「えっ・・・・。」


きっと今の私は熟れたりんごのような顔になっているだろう。


私はコクリと小さく頷いた。


するとクリスは更に笑みを深くして私の手を握って自室へと戻っていく。


その夜、私はクリスの腕の中で安らかな眠りについた。


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