貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

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父と母

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シャルル殿下が帰宅した後、私はしばらくクリスと一緒にいた。


「シャルル殿下が王族を全員排除するって言った時はさすがに驚いたわ。」


「俺もだ。だけどこの判断は正しいことだと思う。」


クリスは目を伏せてそう言った。


「私もよ。だけどこの計画、そんなにうまくいくかしら・・・。」


不安げな表情になる私をクリスは優しく抱きしめる。


「大丈夫だ、エレン。俺がエレンを守る。」


「クリス・・・。」


私はクリスの胸に包まれながらじっとしていた。


「それにシャルル殿下は誰かさんと違って優秀な方だ。そう簡単にやられたりはしないだろう。」


「それもそうね。」


―コンコン


扉をノックする音が聞こえた。


一人の侍女が部屋に入ってきて私たちに告げる。


「お嬢様、クリストファー様。旦那様と奥様がお帰りになられました。」


お父様たちが帰ってきたようだ。


「お父様たちに報告しなきゃ・・・!」


クリスの腕の中から出ようとする私をクリスは更にきつく抱きしめる。


「エレン、俺も一緒に行こう。俺の両親にもなる人たちだから。」


「うん。」


私は微笑みながらうなずいた。





「お父様、お母様。」


公爵邸のエントランスへ行くとお父様とお母様が立っていた。


お母様は私を見るなり一目散に駆け寄ってくる。


「エレン!!!」


そしてぎゅっと抱きしめられた。


「殿下が公爵邸に来たんでしょう?ひどい言いがかりをつけられたんですって?」


お母様は私を抱きしめたままそう言った。


使用人たちから殿下が私にしたことを聞いたようだ。


「お母様、私は大丈夫です。クリスが守ってくれましたから。」


私はにっこり笑って言った。


「クリス、娘を守ってくれてありがとう。」


私の後ろに控えていたクリスにお父様がお礼を言った。


「クリス、本当にありがとう。」


お母様もそれに続く。


「いえ、当然のことをしたまでです。エレンは私のですから。」


「「!?」」


クリスが放った一言にお父様とお母様が驚いていた。


「婚約者・・・ということはエレンはクリスのプロポーズを受け入れたのね!?」


お母様が喜々として言った。


「はい。一緒に過ごしていくうちに私もクリスに惹かれていったのです。」


「それはよかったわ!」


「あぁ、本当にめでたいな。私たちはクリスの気持ちを昔からずっと知っているから・・・。」


心の底から喜んでくれる二人に私は胸が温かくなった。


だが私にはクリスとの婚約以外にもう一つ言わなければいけないことがある。


「お父様、お母様。もう一つ聞いてほしい話があるのです。」


「なんだい?」


「場所を変えませんか。」






私の提案でお父様の執務室で話すことになった。


執務室にいるのは私とお父様とお母様、そしてクリスの4人だ。


「実は・・・。」


私はお父様とお母様に先ほどシャルル殿下が公爵邸に来たことを話し、計画についても全て包み隠さずに話した。


「私はシャルル殿下に協力したいと思っています。お父様、お母様どうかお願いです!」


お父様とお母様はずっと黙ったままだ。


「随分危険な計画だ。一歩間違えたらエレンも殺されるかもしれないんだぞ?」


お父様は険しい顔でそう言った。


「分かっています。ですが・・・私はシャルル殿下を見捨てることなんて出来ないし、たくさんの人の人生を壊した国王陛下のことも許すことができません!どうかお願いです!」


私は深々と頭を下げた後、お父様の方を見た。





お父様の顔に先ほどまでの険しい表情はなく、穏やかな顔になっていた。


「良いだろう。エレン、君の好きなようにしなさい。」


「お父様・・・本当に良いのですか?」


「あぁ、実を言うと私たちもエイドリアン殿下には一矢報いたいと思っていたんだ。なぁ、サーシャ?」


「ええ、実の娘を傷つけられて黙ってなんていられないわ!」


「お父様、お母様・・・!ありがとうございます・・・!」


私が嬉し涙を見せると隣のクリスが優しく微笑む。


「エレン、よかったな。」


「うん!」


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