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シャルルの決意
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「それで、その3人を排除する方法は決めておられるのですか?」
喜ぶシャルル殿下にクリスが尋ねる。
「あぁ、独自に調べたのだが母上の生家であるアズリール侯爵家は裏で不正を行っていたようだ。それを理由にアズリール侯爵家を没落させる。」
「なるほど。後の2人は?」
「問題は父上だ。」
シャルル殿下が急に真面目な顔になって話し出す。
「父上は・・・罪を犯しすぎた。王族を皆殺しにし、母上や王妃陛下の人生を壊した。昔は英雄だったかもしれないが、今は暴君になったと言っていい。」
シャルル殿下は少し悲しそうな顔をしていた。
「シャルル殿下・・・。」
きっと彼も苦しいのだろう。
実の両親を断罪するのは。
シャルル殿下はすぐに表情を戻し、言葉を続ける。
「父上には、私が話を通すつもりだ。」
「「!?」」
私とクリスは揃って驚いた。
「待ってください、シャルル殿下!そんなことをすれば間違いなく殿下は殺されてしまいます!」
クリスが焦ったように言う。
「そうです、殿下!国王陛下は話の通じる相手ではありません!」
私もそれに続いた。
私とクリスの言葉にシャルル殿下は苦しそうな顔をして言う。
「分かっている・・・。だが今武力で制圧してしまえば第二の父上だと周りに思われてしまう。」
私たちは息をのんだ。
当時一介の王子だった国王陛下が家族を皆殺しにした後、臣下たちはただただ彼を恐れた。
そして親しくしていた貴族たちも暴君となった陛下に恐れおののいて離れていった。
きっと陛下は誰も信頼できず、孤独に耐え続けたのだろう。
「・・・分かりました。殿下。」
私たちは結局それを受け入れた。
「ありがとう。」
シャルル殿下はホッとしたような顔をした。
「あとは兄上だが・・・
エレン嬢は兄上をどうしたい?」
突然話を振られる。
「え・・・。」
固まる私にシャルル殿下は言葉を続ける。
「兄上の一番の被害者は君だ。君が望む処遇にしよう。」
シャルル殿下・・・。
「それでは、王子としての再教育を施し、シャルル殿下が王になった暁にはシャルル殿下を支える臣下として臣籍降下させてください。」
私の言葉にシャルル殿下もクリスも驚いた顔をする。
「そんなものでいいのか?」
「エレン!お前殿下にあんなにひどいことをされたのに・・・。」
「エイドリアン殿下には確かにひどいことをされました。ですが私は今までエイドリアン殿下が勉強をどれだけ頑張っていたか知っています。元はと言えばエイドリアン殿下だって国王陛下に人生を壊された人の一人です。エイドリアン殿下の努力を無下にはしたくないのです。」
私はシャルル殿下とクリスにハッキリとそう告げた。
「・・・そうか。エレン嬢は本当に優しいんだな。」
「エレン・・・。昔から思ってたけどお前お人好しすぎるんだよ・・・。」
クリスは呆れた顔をしていたが納得してくれたようだ。
「シャルル殿下だって、本当は兄君を断罪したくはないのでしょう?」
私は微笑みながらシャルル殿下に言った。
「・・・やはりエレン嬢には気づかれていたか。」
「ふふ、シャルル殿下は本当はエイドリアン殿下がお好きですものね。」
私がそう言うとシャルル殿下は恥ずかしそうに視線をそらした。
「・・・そうだな。母が王妃陛下を嫌っていたせいでなかなか関われなかったが小さい頃は母の目を盗んでよく遊んでいたものだ。懐かしいな。」
「あら、そうだったのですね。」
この話は私も初耳だ。
貴族たちは側妃様が何度もエイドリアン殿下の命を狙っているせいでそのご子息であるシャルル殿下もエイドリアン殿下を嫌っているのだろうと思い込んでいるようだが、それは勘違いだ。
昔シャルル殿下と会ったとき、エイドリアン殿下を見る目に貴族や使用人たちがエイドリアン殿下に向けていた「侮蔑」が感じられなかった。
その時に私は気づいたのだ。
シャルル殿下はふっと微笑んだ。
「・・・ありがとう。エレン嬢。」
喜ぶシャルル殿下にクリスが尋ねる。
「あぁ、独自に調べたのだが母上の生家であるアズリール侯爵家は裏で不正を行っていたようだ。それを理由にアズリール侯爵家を没落させる。」
「なるほど。後の2人は?」
「問題は父上だ。」
シャルル殿下が急に真面目な顔になって話し出す。
「父上は・・・罪を犯しすぎた。王族を皆殺しにし、母上や王妃陛下の人生を壊した。昔は英雄だったかもしれないが、今は暴君になったと言っていい。」
シャルル殿下は少し悲しそうな顔をしていた。
「シャルル殿下・・・。」
きっと彼も苦しいのだろう。
実の両親を断罪するのは。
シャルル殿下はすぐに表情を戻し、言葉を続ける。
「父上には、私が話を通すつもりだ。」
「「!?」」
私とクリスは揃って驚いた。
「待ってください、シャルル殿下!そんなことをすれば間違いなく殿下は殺されてしまいます!」
クリスが焦ったように言う。
「そうです、殿下!国王陛下は話の通じる相手ではありません!」
私もそれに続いた。
私とクリスの言葉にシャルル殿下は苦しそうな顔をして言う。
「分かっている・・・。だが今武力で制圧してしまえば第二の父上だと周りに思われてしまう。」
私たちは息をのんだ。
当時一介の王子だった国王陛下が家族を皆殺しにした後、臣下たちはただただ彼を恐れた。
そして親しくしていた貴族たちも暴君となった陛下に恐れおののいて離れていった。
きっと陛下は誰も信頼できず、孤独に耐え続けたのだろう。
「・・・分かりました。殿下。」
私たちは結局それを受け入れた。
「ありがとう。」
シャルル殿下はホッとしたような顔をした。
「あとは兄上だが・・・
エレン嬢は兄上をどうしたい?」
突然話を振られる。
「え・・・。」
固まる私にシャルル殿下は言葉を続ける。
「兄上の一番の被害者は君だ。君が望む処遇にしよう。」
シャルル殿下・・・。
「それでは、王子としての再教育を施し、シャルル殿下が王になった暁にはシャルル殿下を支える臣下として臣籍降下させてください。」
私の言葉にシャルル殿下もクリスも驚いた顔をする。
「そんなものでいいのか?」
「エレン!お前殿下にあんなにひどいことをされたのに・・・。」
「エイドリアン殿下には確かにひどいことをされました。ですが私は今までエイドリアン殿下が勉強をどれだけ頑張っていたか知っています。元はと言えばエイドリアン殿下だって国王陛下に人生を壊された人の一人です。エイドリアン殿下の努力を無下にはしたくないのです。」
私はシャルル殿下とクリスにハッキリとそう告げた。
「・・・そうか。エレン嬢は本当に優しいんだな。」
「エレン・・・。昔から思ってたけどお前お人好しすぎるんだよ・・・。」
クリスは呆れた顔をしていたが納得してくれたようだ。
「シャルル殿下だって、本当は兄君を断罪したくはないのでしょう?」
私は微笑みながらシャルル殿下に言った。
「・・・やはりエレン嬢には気づかれていたか。」
「ふふ、シャルル殿下は本当はエイドリアン殿下がお好きですものね。」
私がそう言うとシャルル殿下は恥ずかしそうに視線をそらした。
「・・・そうだな。母が王妃陛下を嫌っていたせいでなかなか関われなかったが小さい頃は母の目を盗んでよく遊んでいたものだ。懐かしいな。」
「あら、そうだったのですね。」
この話は私も初耳だ。
貴族たちは側妃様が何度もエイドリアン殿下の命を狙っているせいでそのご子息であるシャルル殿下もエイドリアン殿下を嫌っているのだろうと思い込んでいるようだが、それは勘違いだ。
昔シャルル殿下と会ったとき、エイドリアン殿下を見る目に貴族や使用人たちがエイドリアン殿下に向けていた「侮蔑」が感じられなかった。
その時に私は気づいたのだ。
シャルル殿下はふっと微笑んだ。
「・・・ありがとう。エレン嬢。」
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