貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
15 / 54

裏切り 王太子side

しおりを挟む
侍従が去った後、僕は一人でずっと考えていた。


これから僕は、どうすればいい?


エレンには最低のことをした。


だがリサは僕がいなければ生きていけない。


悩みに悩んだ末、僕は答えを出した。







向かうのは王宮にある自室、リサがいる場所だ。


扉を開けると中でリサがくつろいでいた。


リサは僕を見ると一目散に駆け寄ってくる。


「エイドリアン様っ!戻っていらしたんですねっ!」


僕のところに来たリサを優しく抱きしめた。


「あぁ。」


「エイドリアン様っ。それで、エレン様はどうでしたか?」


リサはまだエレンが嫌がらせをしていると思い込んでいる。


まずはその誤解を解かなくてはいけない。


「リサ。エレンはそんなことをする人間ではないよ。きっと何かリサは誤解をしたんだろう。」


「えっ・・・?」


リサは怪訝な顔をする。


そんな顔も可愛らしい。


「リサ、聞いてほしい話があるんだ。」


「何ですか・・・?」


僕はリサの前で跪く。


「リサ。僕は間違いを犯してしまった。王族としてしてはならないこともした。エレンには本当にひどいことをしたと思う。」


リサは僕の言葉に眉を顰める。


「何を言っているんですか・・・?」


僕はリサの手を取る。


「だけどリサ、僕が君を想う気持ちだけは本物だ。僕は王太子の座を下りる。そして平民になる。


そうしたら僕と結婚してくれないか?リサは元々平民出身だしきっと上手くやれると思うんだ。


2人で仲睦まじく市井で暮らそう。」


そう、僕が出した答えは王太子の座をシャルルに譲り、王族から籍を抜き、平民になるというものだ。


これが僕の贖罪だ。


僕を愛しているリサならきっと受け入れてくれるだろう。


リサはさっきからずっとプルプル震えながら俯いている。


涙をこらえているのかもしれない。


そう考えると僕は非常に嬉しくなった。


だがリサが次に放った言葉は信じられないものだった。





「・・・いっ・・・」


リサが小さい声で何かを言った。


「え?リサ、何だい?もっと大きい声で言ってくれないと・・・」


「冗談じゃないっっっ!!!」


リサはそう声を荒げると僕の手をパシッと振り払った。


僕はリサに振り払われたせいで後ろに倒れてしまう。


「リ、リサ・・・?」


「せっかく王妃になれると思ったのに!!!平民に戻るだなんて冗談じゃないわっ!!!」


・・・誰だ・・・この女は・・・?


僕が知っているリサとは全く違う女が目の前にいる。


「あんたなんて顔が良いだけで無能だし、王太子じゃなかったら結婚相手になんて選ぶわけないでしょう!?」


リサは僕を激しく罵倒した。


「う、嘘だろう・・・リサ・・・。」


「あーあ。時間を無駄にしたわ。また新しい男を探さなきゃいけないわね。」


そう言ってリサは荷物をまとめだした。


「あたしに言い寄ってきた中で次に地位が高いのは・・・侯爵家の令息だったかしら。」


リサは僕以外にも男がいたのか!?


さっさと荷物をまとめ部屋を出ようとするリサに向かって僕は叫ぶ。


「ま、待ってくれ、リサ!君は、僕を愛していたんじゃなかったのか!?」


「・・・え?」


そう呟いて振り返ったリサの目は今まで見たことないほど、侮蔑と嫌悪に満ちていた。


「そんなわけないでしょ?あたしは地位の高い男性が好きなの。平民に用はないのよ。」


リサはそう吐き捨て、今度こそ振り返ることなく部屋を出て行った。


「はっ・・・ははっ・・・・。」


あぁ、リサは最初から王妃の座が目当てだったんだ。


乾いた笑みが漏れる。





全てを失った、とはこういうことを言うんだな―
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

愛してくれない婚約者なら要りません

ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...