貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
4 / 54

幼馴染

しおりを挟む
私はあの後お父様が言った通り自室で休み、気づけば朝になっていた。


「こんなに寝たのはいつぶりかしら・・・。」


殿下と出会ってからは忙しくて毎日あまり眠れていなかった。


コンコン


部屋の扉がノックされる。


「お嬢様、おはようございます。」


「あら、マリーナ。」


扉から顔をのぞかせたのは私の侍女のマリーナだ。


マリーナは私を見るなり心配そうな顔をする。


「お嬢様・・・大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫よ。」


そう言って笑ってみせる。


それを見たマリーナがほっと息をつく。


「お嬢様、今日は大事なお客様がいらっしゃるそうですよ。」


「お客様?」


「はい、旦那様がそれで準備をしておきなさいと。」


誰かしら・・・。


何故かマリーナの目が輝いている。





そのあと、私は来客を迎える準備をしたが何故か侍女たちはいつも以上に張り切っている。


え、なにこれ・・・なんでみんなこんなに張り切ってるのかしら・・・?


私は疑問に思いながらもそのままじっとしていた。




それから私はお父様に客間に通された。


私は近くに立っていたマリーナに問いかける。


「マリーナ。今から一体誰が来るのかしら?」


「それは来てからのお楽しみです!」


何故かマリーナは先ほどからずっとウキウキしている。


何だろう・・・。お父様とお母様も教えてくださらないし。


その時、客間の扉がノックされた。



コンコン


「どうぞ。」


私が扉に向かって声をかける。


「失礼します。」


そう言いながら部屋へ入ってきたのは・・・





「・・・?」


「・・・。」


二人とも、お互いを見てしばし固まっていた。


先に沈黙を破ったのは来客の方だった。


「エレン。久しぶりだな。」


「もしかして、クリス・・・?」


「正解。」


そう言うと目の前の青年はにっこり笑う。


クリス・・・!


クリストファー・モーガン


モーガン公爵家の令息で、エレンの幼馴染である。


殿下の婚約者候補になる前はよく遊んでいた。


お互いの親同士で二人を婚約させようと言う話も出ていたほどだ。


殿下の婚約者候補になってからは全く交流が無くなった。


「クリス・・・!変わらないわね。」


「おいおい。10年前と変わらないのかよ。」


「うふふ。」


きっと婚約者候補から外されたということを聞いてここまで来たのだろう。


私を慰めに。


小さい頃から本当に優しい人だ・・・。


「エレン。」


クリスは急に真面目な顔になる。


「王太子の婚約者候補から外されたんだってな。」


「ええ・・・。」


「あの王太子、ほんと馬鹿だな。」


「ちょ、ちょっとクリス!そんな風に王太子殿下の悪口を言うものではないわ!」


「どうせ誰も聞いてねえよ。」


「もう・・・。」


「なぁ、エレン・・・」


「王太子と結婚しないなら、俺と結婚しないか?」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたに、愛などないはずでした

空野はる
恋愛
貴族学園の卒業パーティーが数日後に迫ったその日。 婚約者であるブレイドは、ティアに婚約解消を提案してきた。 身勝手な理由に一度は断るティアだが、迎えた卒業パーティーで婚約破棄を宣言されることに。 今までずっと耐えてきた果ての婚約破棄。 ついに我慢の限界を迎えたティアは、断罪を決意する。

毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」 十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。 まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。 夢は自分で叶えなきゃ。 ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?

Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。 最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。 とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。 クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。 しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。 次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ── 「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 そう問うたキャナリィは 「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」 逆にジェードに問い返されたのだった。 ★★★★★★ 覗いて下さりありがとうございます。 女性向けHOTランキングで最高20位までいくことができました。(本編) 沢山の方に読んでいただけて嬉しかったので、続き?を書きました(*^^*) ★花言葉は「恋の勝利」  本編より過去→未来  ジェードとクラレットのお話 ★ジェード様の憂鬱【読み切り】  ジェードの暗躍?(エボニーのお相手)のお話

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。  婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。  そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――  ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?

処理中です...