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破滅はすぐそこに 王太子side
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「エイドリアン様っ!今日はクッキーを作って来たんですっ!」
そう言ってこちらへ駆け寄ってくるのは僕の愛するリサだ。
「ありがとう。リサ。」
その愛くるしい笑みに自然と僕まで笑顔になる。
リサは平民なので家名を持たない。
だが、僕の愛する人に変わりない。
僕には少し前まで婚約者候補のエレンがいた。
エレンは頭が良く、家柄も良かった。
だから一人で何でも出来てしまう。
エレンとは違ってリサは一人じゃ何も出来なくていつも僕を頼ってくれる。
淑女教育が徹底されてあまり笑わないエレンとは違って、リサはよく笑う。
表情がクルクル変わって愛らしいと思った。
エレンには悪いが、僕はリサを好きになってしまった。
それにエレンはこの先一人でも生きていけるだろう。
リサは僕がいなければ生きていけない。
リサはお菓子作りが得意で、いつも僕に作ってきてくれる。
エレンは婚約者候補だった時、そういうことを全くしてくれなかった。
別にエレンが嫌いだったわけではない。
リサに惹かれてしまっただけだ。
あの優秀で美しいエレンならきっと僕の婚約者候補から外れたとしても縁談がたくさん来るだろうし、大丈夫だ。
「エイドリアン様っ!本当に私をお妃さまにしてくださるんですよね?」
リサは大きな目をぱちくりさせて聞いてくる。
「ああ、そのためにエレンと別れたんだ。エレンに別れを告げる時、君もいただろう?」
「エイドリアン様大好きっ!リサ嬉しい~」
そう言ってリサは僕に抱き着いてくる。
どこまでも愛らしい。
誰がなんと言おうと、僕はリサと結婚したかった。
リサを好きになってからはリサ以外を妃に迎えるなんて考えられなくなった。
「殿下、少しよろしいですか。」
侍従に声をかけられる。
リサとの時間を邪魔しやがって・・・。
そう思いながらもリサを引き離し、リサから離れたところで侍従と向き合う。
「殿下、悪いことは言いません。今からでもエレン様に謝罪し、前の関係に戻るべきです。」
「なんだと?」
侍従が言った言葉に僕は腹が立った。
「僕が愛しているのはリサだけだ!!!」
「リサ様は愛妾になさればよろしいかと・・・」
その瞬間、僕の頭に血が上った。
「愛妾だと!?リサを何だと思ってる!」
僕は侍従をきつく怒鳴りつけた。
「殿下がリサ様を愛する気持ちはよく分かっております。ですがこれは殿下のためを思って・・・」
侍従は懲りずに口うるさく僕に何か言ってきた。
「今すぐ出て行け!」
「っ・・・殿下・・・!」
侍従は納得しない顔をするも、部屋を出て行く。
離れた場所にいたリサが心配そうに駆けてくる。
「エイドリアン様?さっき、愛妾って聞こえたんですけど・・・」
「侍従が馬鹿なことを言ったんだ。僕はリサを正妃にする。」
その瞬間リサの顔がパァッと明るくなる。
「約束ですからね!」
「あぁ。」
この時の僕はこの先リサと共に幸せになれると信じて疑わなかった。
自身の破滅が近づいていることなど気づかずにー
そう言ってこちらへ駆け寄ってくるのは僕の愛するリサだ。
「ありがとう。リサ。」
その愛くるしい笑みに自然と僕まで笑顔になる。
リサは平民なので家名を持たない。
だが、僕の愛する人に変わりない。
僕には少し前まで婚約者候補のエレンがいた。
エレンは頭が良く、家柄も良かった。
だから一人で何でも出来てしまう。
エレンとは違ってリサは一人じゃ何も出来なくていつも僕を頼ってくれる。
淑女教育が徹底されてあまり笑わないエレンとは違って、リサはよく笑う。
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それにエレンはこの先一人でも生きていけるだろう。
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リサはお菓子作りが得意で、いつも僕に作ってきてくれる。
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別にエレンが嫌いだったわけではない。
リサに惹かれてしまっただけだ。
あの優秀で美しいエレンならきっと僕の婚約者候補から外れたとしても縁談がたくさん来るだろうし、大丈夫だ。
「エイドリアン様っ!本当に私をお妃さまにしてくださるんですよね?」
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「ああ、そのためにエレンと別れたんだ。エレンに別れを告げる時、君もいただろう?」
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どこまでも愛らしい。
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そう思いながらもリサを引き離し、リサから離れたところで侍従と向き合う。
「殿下、悪いことは言いません。今からでもエレン様に謝罪し、前の関係に戻るべきです。」
「なんだと?」
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「僕が愛しているのはリサだけだ!!!」
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侍従は懲りずに口うるさく僕に何か言ってきた。
「今すぐ出て行け!」
「っ・・・殿下・・・!」
侍従は納得しない顔をするも、部屋を出て行く。
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「エイドリアン様?さっき、愛妾って聞こえたんですけど・・・」
「侍従が馬鹿なことを言ったんだ。僕はリサを正妃にする。」
その瞬間リサの顔がパァッと明るくなる。
「約束ですからね!」
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この時の僕はこの先リサと共に幸せになれると信じて疑わなかった。
自身の破滅が近づいていることなど気づかずにー
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