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番外編
19 希望 王リアム視点
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それから本当にリリーは家を出て行ってしまった。
リリーが出て行ってすぐ、若く美しい一人の女が国王の寵姫になったという噂が広まった。
彼女の言っていたことは全て本当だったのだ。
――私は、捨てられてしまったのだ。
あれだけ身を粉にして働いて彼女を養っていたというのに、結局リリーは私を裏切った。
愛していた人に裏切られるというのはこんなにも辛いものなのか。
私に残された物はこの古くて小さな家のみ。
このときに私はようやくリリーの本当の姿を悟った。
彼女は昔から何一つ変わっていない。
あれが本性で、最初から私を愛してなどいなかったのだ。
(本気だったのは私だけ、か……全てをリリーに捧げたというのに)
このような結果になることが分かっていれば、リリーを寵姫になどしなかった。
遅すぎる後悔が頭をよぎる。
(王妃……)
一人になった部屋でふと脳裏に浮かんだのはかつて妻だった女の姿だった。
今思えば、あの女には本当に酷いことをしたと思う。
仕事を押し付け蔑ろにし、結局最後は私のせいで死なせてしまったのだから。
(もし、あのときに戻れるのなら……)
そう思ったところで、時間が巻き戻ることは無い。
***
それから数年が経った。
リリーが出て行ってからまともに働くことなく酒浸りになった私は、ついに路上生活者となるまで落ちていた。
(ああ……)
昔の煌びやかな姿はもう見る影もない。
綺麗な金髪はくすんでしまい、肌もボロボロ。
「腹減ったな……」
通り過ぎて行く者たちが蔑むような目で倒れている私を見下ろした。
その中に手を差し伸べる者など誰もいない。
(私の人生、ここで終わるんだろうか……)
第一王子として生を受け、華々しい人生を送っていた私がこんなにも落ちぶれてしまうとは、一体誰が想像しただろうか。
「自業自得だな……」
自らの愚かさを嘲笑したとき、近くにいた平民の歓喜に満ちたような声が聞こえた。
「マルガレーテ女王がまた平民のための政策を打ち出したらしいぞ!」
「この国もマルガレーテ女王陛下みたいな人がトップだったらなぁ……」
「おい、そんなこと言ったら処刑されるぞ!」
(マルガレーテ女王……?)
マルガレーテとは私の妻だった女の名前だ。
一度も本人の前で名前を呼んだことは無いが、名門公爵家の令嬢だったため薄っすらと覚えていた。
反乱で処刑されたと思っていたが、まさか生きていたというのか。
私はゴミ箱に捨てられた新聞を漁った。
「マルガレーテ女王……!」
そこに載せられていた肖像画は間違いなくあの女のものだった。
どうやら反乱軍が宮殿に押し寄せてきた後、王妃には何の罪も無いとされ無罪となったようだ。
そしてこれまでの功績を称えられて女王に即位したと。
(マルガレーテ……アイツ、女王になっていたのか……!)
驚きと同時に、喜びのような感情が沸き上がってきた。
(すぐに……すぐに国へ戻らなければ……!)
私はボロボロの体を必死で動かして自分が生まれ育った国へと向かった。
「民たちが……マルガレーテが……私を待っているんだ……!」
リリーが出て行ってすぐ、若く美しい一人の女が国王の寵姫になったという噂が広まった。
彼女の言っていたことは全て本当だったのだ。
――私は、捨てられてしまったのだ。
あれだけ身を粉にして働いて彼女を養っていたというのに、結局リリーは私を裏切った。
愛していた人に裏切られるというのはこんなにも辛いものなのか。
私に残された物はこの古くて小さな家のみ。
このときに私はようやくリリーの本当の姿を悟った。
彼女は昔から何一つ変わっていない。
あれが本性で、最初から私を愛してなどいなかったのだ。
(本気だったのは私だけ、か……全てをリリーに捧げたというのに)
このような結果になることが分かっていれば、リリーを寵姫になどしなかった。
遅すぎる後悔が頭をよぎる。
(王妃……)
一人になった部屋でふと脳裏に浮かんだのはかつて妻だった女の姿だった。
今思えば、あの女には本当に酷いことをしたと思う。
仕事を押し付け蔑ろにし、結局最後は私のせいで死なせてしまったのだから。
(もし、あのときに戻れるのなら……)
そう思ったところで、時間が巻き戻ることは無い。
***
それから数年が経った。
リリーが出て行ってからまともに働くことなく酒浸りになった私は、ついに路上生活者となるまで落ちていた。
(ああ……)
昔の煌びやかな姿はもう見る影もない。
綺麗な金髪はくすんでしまい、肌もボロボロ。
「腹減ったな……」
通り過ぎて行く者たちが蔑むような目で倒れている私を見下ろした。
その中に手を差し伸べる者など誰もいない。
(私の人生、ここで終わるんだろうか……)
第一王子として生を受け、華々しい人生を送っていた私がこんなにも落ちぶれてしまうとは、一体誰が想像しただろうか。
「自業自得だな……」
自らの愚かさを嘲笑したとき、近くにいた平民の歓喜に満ちたような声が聞こえた。
「マルガレーテ女王がまた平民のための政策を打ち出したらしいぞ!」
「この国もマルガレーテ女王陛下みたいな人がトップだったらなぁ……」
「おい、そんなこと言ったら処刑されるぞ!」
(マルガレーテ女王……?)
マルガレーテとは私の妻だった女の名前だ。
一度も本人の前で名前を呼んだことは無いが、名門公爵家の令嬢だったため薄っすらと覚えていた。
反乱で処刑されたと思っていたが、まさか生きていたというのか。
私はゴミ箱に捨てられた新聞を漁った。
「マルガレーテ女王……!」
そこに載せられていた肖像画は間違いなくあの女のものだった。
どうやら反乱軍が宮殿に押し寄せてきた後、王妃には何の罪も無いとされ無罪となったようだ。
そしてこれまでの功績を称えられて女王に即位したと。
(マルガレーテ……アイツ、女王になっていたのか……!)
驚きと同時に、喜びのような感情が沸き上がってきた。
(すぐに……すぐに国へ戻らなければ……!)
私はボロボロの体を必死で動かして自分が生まれ育った国へと向かった。
「民たちが……マルガレーテが……私を待っているんだ……!」
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