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番外編
17 隣国での暮らし 王リアム視点
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「ちょっと、ご飯まだ?」
「リリー……今から作るから少しだけ待っててくれ」
「早くしてよね、お腹空いてるんだから」
平民としての生活が始まってから、リリーは驚くほど我儘になった。
仕事もせず、ただ家にいるだけのくせに家事も全てこちらに押し付けてくるのだ。
(少しくらい手伝ってくれても良いではないか……君は私と違って仕事もせずに家にいるだけなのだから……)
そうは思うものの、彼女に強く言うことの出来ない私はただ黙って食事を作っていた。
仕事から帰ったばかりで疲れは溜まっていたが、何とか堪えた。
「――こんな貧乏くさいもの食べられるわけないじゃない!!!」
必死でお金を稼いで手に入れたパンとスープを出すと、彼女はそれを手で払って床に落とした。
「リリー!!!何するんだ!!!」
「私この食事にはもう飽きたわ!お肉が食べたい!!!」
「肉は高いから買えないよ……」
「なら貴方がもっと稼いでこればいいじゃない!お金の無い男は嫌いよ」
「リリー……」
彼女は口を膨らませてぷいっと顔を背けた。
以前なら愛しいと思っていたであろうその仕草が、今ではとても憎たらしく感じる。
(何故分からないんだ!)
我儘なリリーに初めて怒りの感情がこみ上げてくる。
思えば、彼女に対して怒るのは初めてかもしれない。
それほどに、昔から私はリリーに甘かったから。
「あなたがいけないのよ、私の望みを全て叶えられないんだから」
「……」
リリーはそう吐き捨てると、苛ついた様子で外に出て行った。
たしかに城を抜け出してからというもの、私はリリーの望みを全く叶えていない。
彼女の願いを叶えてやれるだけの財力も権力も全て失ってしまったのだから当然のことだった。
(……私がもっと稼いでこればいい、か……たしかにその通りかもしれないな)
そう思った私はこれまで以上に働いた。
朝から晩まで、肉体の限界を迎えてもなお愛しいリリーのことを思って必死で耐えた。
「リリー……ただいま、帰ったよ」
「あら、おかえりなさい。ご飯は?」
「今から作るから……」
リリーは家事を全くといっていいほどしないので、全て私がやっている。
彼女は物を多くため込む癖があるから、掃除はかなり大変だった。
「ちょっと、それ捨てないでよ!大事なものなんだから!」
「あ、ああ……悪い……」
全て私がやっているというのに文句ばっかりだ。
「ふーん、今日のご飯はなかなか美味しそうじゃない」
「喜んでもらえて嬉しいよ……」
このとき、既に私の体はボロボロだった。
昼も夜も働き詰めなうえに、家事まで全てこなしているのだから当然だった。
そんな生活を続けていると、当然体は壊れる。
「ウッ……!」
「リアム様!?どうしたの!?」
いつも通り仕事から戻ったある日、ついに私の体は限界を迎え、倒れてしまった。
リリーの心配そうな声が頭上から聞こえてくる。
(リリー……私を心配してくれているのか……)
やはりリリーはとても優しい人だ。
彼女を愛したことは間違っていなかった。
リリーは私をベッドまで引きずると、顔色の悪い私を不安そうに見つめた。
「リアム様……」
「リリー……」
当然、こんな状態では仕事に行けない。
私は仕事を辞め、当分の間治療に専念することとなった。
「リリー……今から作るから少しだけ待っててくれ」
「早くしてよね、お腹空いてるんだから」
平民としての生活が始まってから、リリーは驚くほど我儘になった。
仕事もせず、ただ家にいるだけのくせに家事も全てこちらに押し付けてくるのだ。
(少しくらい手伝ってくれても良いではないか……君は私と違って仕事もせずに家にいるだけなのだから……)
そうは思うものの、彼女に強く言うことの出来ない私はただ黙って食事を作っていた。
仕事から帰ったばかりで疲れは溜まっていたが、何とか堪えた。
「――こんな貧乏くさいもの食べられるわけないじゃない!!!」
必死でお金を稼いで手に入れたパンとスープを出すと、彼女はそれを手で払って床に落とした。
「リリー!!!何するんだ!!!」
「私この食事にはもう飽きたわ!お肉が食べたい!!!」
「肉は高いから買えないよ……」
「なら貴方がもっと稼いでこればいいじゃない!お金の無い男は嫌いよ」
「リリー……」
彼女は口を膨らませてぷいっと顔を背けた。
以前なら愛しいと思っていたであろうその仕草が、今ではとても憎たらしく感じる。
(何故分からないんだ!)
我儘なリリーに初めて怒りの感情がこみ上げてくる。
思えば、彼女に対して怒るのは初めてかもしれない。
それほどに、昔から私はリリーに甘かったから。
「あなたがいけないのよ、私の望みを全て叶えられないんだから」
「……」
リリーはそう吐き捨てると、苛ついた様子で外に出て行った。
たしかに城を抜け出してからというもの、私はリリーの望みを全く叶えていない。
彼女の願いを叶えてやれるだけの財力も権力も全て失ってしまったのだから当然のことだった。
(……私がもっと稼いでこればいい、か……たしかにその通りかもしれないな)
そう思った私はこれまで以上に働いた。
朝から晩まで、肉体の限界を迎えてもなお愛しいリリーのことを思って必死で耐えた。
「リリー……ただいま、帰ったよ」
「あら、おかえりなさい。ご飯は?」
「今から作るから……」
リリーは家事を全くといっていいほどしないので、全て私がやっている。
彼女は物を多くため込む癖があるから、掃除はかなり大変だった。
「ちょっと、それ捨てないでよ!大事なものなんだから!」
「あ、ああ……悪い……」
全て私がやっているというのに文句ばっかりだ。
「ふーん、今日のご飯はなかなか美味しそうじゃない」
「喜んでもらえて嬉しいよ……」
このとき、既に私の体はボロボロだった。
昼も夜も働き詰めなうえに、家事まで全てこなしているのだから当然だった。
そんな生活を続けていると、当然体は壊れる。
「ウッ……!」
「リアム様!?どうしたの!?」
いつも通り仕事から戻ったある日、ついに私の体は限界を迎え、倒れてしまった。
リリーの心配そうな声が頭上から聞こえてくる。
(リリー……私を心配してくれているのか……)
やはりリリーはとても優しい人だ。
彼女を愛したことは間違っていなかった。
リリーは私をベッドまで引きずると、顔色の悪い私を不安そうに見つめた。
「リアム様……」
「リリー……」
当然、こんな状態では仕事に行けない。
私は仕事を辞め、当分の間治療に専念することとなった。
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