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番外編
16 逃亡 王リアム視点
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異変が訪れたのは、王になってから数年が経過した頃のことだった。
私はいつものようにリリーと自室で過ごしていた。
そんなとき、突然外が騒がしくなったのだ。
「何だ……?」
不思議に思い、部屋の中から廊下にいた使用人たちの会話を盗み聞いた。
「反乱が起きたの?」
「ええ、王宮にいる騎士たちのほとんどが寝返ったそうよ。もう王家に勝ち目はないわね……」
(な、何だと!?!?!?)
私は使用人たちの言葉を聞いて戦慄した。
反乱が起きた。
ここまではまだいい。
私が衝撃を隠しきれなかったのはその後だ。
(騎士たちが……寝返った……?)
王宮にいる騎士たちは皆忠誠心が高い。
寝返ることなど絶対にありえない、そう思っていた。
しかし、使用人の話では騎士たちの”ほとんど”が寝返ったと言っていた。
(私の聞き間違いか……?)
理性を保てそうになかった。
「リアム様、どうかなさったのですか?」
「リリー……」
リリーが心配そうに私に駆け寄った。
彼女に真実を伝えるのは心苦しかった。
「リリー、落ち着いて聞いてくれ。……………どうやら反乱が起きたそうだ」
私が深刻そうな顔でそう言っても、リリーはきょとんした表情のままだ。
「反乱……?でも、リアム様が負けることは無いのでしょう?」
「……いや、王家についている騎士たちのほとんどが寝返ったそうだ。もう王家に勝ち目はないよ」
「え………?」
私の言葉に、リリーの顔からいつものような愛らしい笑顔が一瞬にして消え去った。
そんなリリーの顔を見てズキズキと胸が痛んだ。
(クソ……あいつら……よくも裏切ったな!いつか必ず復讐してやる!)
私は心の中で王家を裏切った騎士たちへの復讐を誓うと同時に、生き残る方法を必死で考えていた。
こんなところで死にたくない。
もっとリリーと一緒にいたい。
(どうすれば、どうすれば生き残れる?私はまだ死にたくない!)
しばらく考え続けて、私はあることを閃いた。
(そうだ……”あれ”があるじゃないか!)
王の部屋にはいざというときのために王宮の外へと繋がっている隠し通路がある。
このことは国王となる者しか知らないことだ。
だから反乱軍の騎士たちに隠し通路の存在がバレることはない。
「リアム様……私は……死ぬのですか……?」
リリーが目に涙を溜めてこちらを見上げた。
(ッ!!!)
私は彼女の泣き顔に弱かった。
「大丈夫だ、リリー。絶対に死なせない」
私はリリーを力強く抱きしめてそう言った。
そしてすぐに彼女の手を引き、そのまま隠し通路から王宮の外へと脱出した。
「リアム様、私疲れました……!」
「あと少しだ、あと少しで他国へ逃げられる……だからそれまでの辛抱だ……!」
「リアム様……」
それから、私たちは数日かけて何とか隣国へと逃げ延びた。
隣の国へ着く頃には体は泥まみれで服もボロボロになっていた。
「いやぁ……服が汚れてしまったわ……」
リリーは不機嫌そうにしていたが、今はそんなことを気にしている場合では無かった。
(ここなら大丈夫だ……!もう追手は来ない……!)
あの贅沢な暮らしが終わるのだと思うと気が滅入ったが、それでもあんなところで人生を終えるよりかはずっとマシだ。
私たちはこれから姓を捨てて、隣国の平民として暮らすのだ。
(……リリーと一緒なら、それも悪くないな)
このときの私は本気でそう思っていた。
彼女と一緒ならどんな困難も乗り越えていけると信じて疑わなかった。
しかしこれこそが、まさに地獄のような生活の始まりだったのだ――
私はいつものようにリリーと自室で過ごしていた。
そんなとき、突然外が騒がしくなったのだ。
「何だ……?」
不思議に思い、部屋の中から廊下にいた使用人たちの会話を盗み聞いた。
「反乱が起きたの?」
「ええ、王宮にいる騎士たちのほとんどが寝返ったそうよ。もう王家に勝ち目はないわね……」
(な、何だと!?!?!?)
私は使用人たちの言葉を聞いて戦慄した。
反乱が起きた。
ここまではまだいい。
私が衝撃を隠しきれなかったのはその後だ。
(騎士たちが……寝返った……?)
王宮にいる騎士たちは皆忠誠心が高い。
寝返ることなど絶対にありえない、そう思っていた。
しかし、使用人の話では騎士たちの”ほとんど”が寝返ったと言っていた。
(私の聞き間違いか……?)
理性を保てそうになかった。
「リアム様、どうかなさったのですか?」
「リリー……」
リリーが心配そうに私に駆け寄った。
彼女に真実を伝えるのは心苦しかった。
「リリー、落ち着いて聞いてくれ。……………どうやら反乱が起きたそうだ」
私が深刻そうな顔でそう言っても、リリーはきょとんした表情のままだ。
「反乱……?でも、リアム様が負けることは無いのでしょう?」
「……いや、王家についている騎士たちのほとんどが寝返ったそうだ。もう王家に勝ち目はないよ」
「え………?」
私の言葉に、リリーの顔からいつものような愛らしい笑顔が一瞬にして消え去った。
そんなリリーの顔を見てズキズキと胸が痛んだ。
(クソ……あいつら……よくも裏切ったな!いつか必ず復讐してやる!)
私は心の中で王家を裏切った騎士たちへの復讐を誓うと同時に、生き残る方法を必死で考えていた。
こんなところで死にたくない。
もっとリリーと一緒にいたい。
(どうすれば、どうすれば生き残れる?私はまだ死にたくない!)
しばらく考え続けて、私はあることを閃いた。
(そうだ……”あれ”があるじゃないか!)
王の部屋にはいざというときのために王宮の外へと繋がっている隠し通路がある。
このことは国王となる者しか知らないことだ。
だから反乱軍の騎士たちに隠し通路の存在がバレることはない。
「リアム様……私は……死ぬのですか……?」
リリーが目に涙を溜めてこちらを見上げた。
(ッ!!!)
私は彼女の泣き顔に弱かった。
「大丈夫だ、リリー。絶対に死なせない」
私はリリーを力強く抱きしめてそう言った。
そしてすぐに彼女の手を引き、そのまま隠し通路から王宮の外へと脱出した。
「リアム様、私疲れました……!」
「あと少しだ、あと少しで他国へ逃げられる……だからそれまでの辛抱だ……!」
「リアム様……」
それから、私たちは数日かけて何とか隣国へと逃げ延びた。
隣の国へ着く頃には体は泥まみれで服もボロボロになっていた。
「いやぁ……服が汚れてしまったわ……」
リリーは不機嫌そうにしていたが、今はそんなことを気にしている場合では無かった。
(ここなら大丈夫だ……!もう追手は来ない……!)
あの贅沢な暮らしが終わるのだと思うと気が滅入ったが、それでもあんなところで人生を終えるよりかはずっとマシだ。
私たちはこれから姓を捨てて、隣国の平民として暮らすのだ。
(……リリーと一緒なら、それも悪くないな)
このときの私は本気でそう思っていた。
彼女と一緒ならどんな困難も乗り越えていけると信じて疑わなかった。
しかしこれこそが、まさに地獄のような生活の始まりだったのだ――
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