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番外編
15 始まり 王リアム視点
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――私はシュベール王国の第一王子として生を受けた。
周りは私を唯一の後継者だともてはやし、幼い頃から望む物は何でも手に入った。
私は子供の頃から勉強が嫌いだった。
だからあまりしなかった。
父はそんな私を咎めたが、ただ叱られるだけで廃嫡されることはなかった。
その理由は明白だ。
父である国王には私しか子供はいない。
母である王妃は早くに亡くなり、母を愛していた父は再婚せずに独身を貫いていた。
愛する女の子供である私を父はとても可愛がっていた。
私が王になることは確定している。
だから勉強などするだけ無駄だと思っていた。
そして、そんな私には心から愛する人がいる。
それが元々市井の踊り子だったリリーである。
彼女はまさに女神のような美しさをしている。
こんなにも美しい人がこの世界にいたのかと、初めて見た頃は随分と驚いたものだ。
それから私はリリーにのめり込んでいった。
彼女の好むドレスやアクセサリーをプレゼントし、旅行へ連れて行ったりもした。
そのたびに頬を染めて喜ぶ姿はとても愛らしかった。
いつも無表情で滅多に笑わない貴族令嬢とは大違いだ。
リリーを隣に連れて歩くといつも男たちの視線を感じた。
きっとみんな美しい彼女に見惚れているのだろう。
そのことにはムカついたが、そんな女性が私の恋人なのだと思うととても誇らしかった。
しばらくして、父が死んだ。
不思議とあまり悲しくなかった。
父上は口うるさい人だったし、何故かリリーを嫌っていた。
こんなにも美しく、愛らしいリリーの何が不満なのだろうか。
だから天罰が下ったんだ。
これからは堂々とリリーと一緒にいることが出来ると思うと嬉しかった。
私は父上が死んですぐに彼女を正妃にしようとした。
しかし、リリー本人がそれを止めた。
「リアム様……私には王妃など到底務まりませんわ……」
リリーは不安げな表情でそう言った。
「何故そのようなことを言うんだ?君には私がついている」
「……リアム様、一つ提案があるのですが」
◇◆◇◆◇◆
それから、私が王になって一ヶ月の月日が経った。
「リアム様、とっても良い天気ですね。今日は庭園でお茶でもしませんか?」
「ああ、それは良い提案だなリリー」
私とリリーは自室で紅茶を飲みながら悠々自適に過ごしていた。
頬を染めて微笑む彼女がとても愛らしい。
(……彼女には本当に頭が上がらない)
あのときリリーが提案したのは「高位貴族の令嬢たちの中から一人を王妃として迎え、王と王妃の仕事を全て押し付ける」というものだった。
最初こそ不安だったが、今ではあの日リリーの言うことを聞いて本当に良かったと思っている。
私とリリーが今こうして穏やかな暮らしが出来ているのも全て彼女のおかげだ。
リリーの言うことは全て正しい。
彼女に従っていれば私は幸せになれる。
このときから私はリリーを盲信するようになった。
周りは私を唯一の後継者だともてはやし、幼い頃から望む物は何でも手に入った。
私は子供の頃から勉強が嫌いだった。
だからあまりしなかった。
父はそんな私を咎めたが、ただ叱られるだけで廃嫡されることはなかった。
その理由は明白だ。
父である国王には私しか子供はいない。
母である王妃は早くに亡くなり、母を愛していた父は再婚せずに独身を貫いていた。
愛する女の子供である私を父はとても可愛がっていた。
私が王になることは確定している。
だから勉強などするだけ無駄だと思っていた。
そして、そんな私には心から愛する人がいる。
それが元々市井の踊り子だったリリーである。
彼女はまさに女神のような美しさをしている。
こんなにも美しい人がこの世界にいたのかと、初めて見た頃は随分と驚いたものだ。
それから私はリリーにのめり込んでいった。
彼女の好むドレスやアクセサリーをプレゼントし、旅行へ連れて行ったりもした。
そのたびに頬を染めて喜ぶ姿はとても愛らしかった。
いつも無表情で滅多に笑わない貴族令嬢とは大違いだ。
リリーを隣に連れて歩くといつも男たちの視線を感じた。
きっとみんな美しい彼女に見惚れているのだろう。
そのことにはムカついたが、そんな女性が私の恋人なのだと思うととても誇らしかった。
しばらくして、父が死んだ。
不思議とあまり悲しくなかった。
父上は口うるさい人だったし、何故かリリーを嫌っていた。
こんなにも美しく、愛らしいリリーの何が不満なのだろうか。
だから天罰が下ったんだ。
これからは堂々とリリーと一緒にいることが出来ると思うと嬉しかった。
私は父上が死んですぐに彼女を正妃にしようとした。
しかし、リリー本人がそれを止めた。
「リアム様……私には王妃など到底務まりませんわ……」
リリーは不安げな表情でそう言った。
「何故そのようなことを言うんだ?君には私がついている」
「……リアム様、一つ提案があるのですが」
◇◆◇◆◇◆
それから、私が王になって一ヶ月の月日が経った。
「リアム様、とっても良い天気ですね。今日は庭園でお茶でもしませんか?」
「ああ、それは良い提案だなリリー」
私とリリーは自室で紅茶を飲みながら悠々自適に過ごしていた。
頬を染めて微笑む彼女がとても愛らしい。
(……彼女には本当に頭が上がらない)
あのときリリーが提案したのは「高位貴族の令嬢たちの中から一人を王妃として迎え、王と王妃の仕事を全て押し付ける」というものだった。
最初こそ不安だったが、今ではあの日リリーの言うことを聞いて本当に良かったと思っている。
私とリリーが今こうして穏やかな暮らしが出来ているのも全て彼女のおかげだ。
リリーの言うことは全て正しい。
彼女に従っていれば私は幸せになれる。
このときから私はリリーを盲信するようになった。
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