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本編
10 新しい王
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反乱が起こってから数日後。
国の重鎮たちを集めた会議がちょうど今始まろうとしていた。
「やっとリアム陛下がいなくなってくれたか」
「あの人は死んで当然の男だよ。全く同情できないな」
仕事を放棄して寵姫と遊び呆けていた王を慕う者などいない。
「それにしても残念だな。逃亡中に足を滑らせて川に落ち、そのまま亡くなってしまうだなんて。あの二人の公開処刑を楽しみにしていたのに」
「ああ、運が良いのか悪いのか……」
王宮の一室に集められた貴族たちは口々にそう言った。
やはりみんな表に出していなかっただけで陛下に不満を抱いていたようだ。
実際、謀反を起こしたお父様を非難する声は一切聞こえなかった。
(……彼らの言う通りだわ。私たちは何も間違ったことをしていない)
陛下は死んで当然の愚王だった。
あの人は王になってはいけない人だった。
私もたくさん酷いことをされた。
彼の妻だった頃の辛い記憶が蘇り、思わず俯いてしまう。
「……」
「マルガレーテ、大丈夫か?そろそろ始まるぞ」
「お父様……」
隣にいたお父様が心配そうに声をかけた。
「ええ、私は大丈夫です」
私はお父様を不安にさせないように笑顔でそう答えた。
***
それから少しして、会議が始まった。
今回の議題はただ一つ。
次の国王についてだ。
リアム陛下と寵姫の間に子はいない。
その上、彼は一人っ子だ。
つまり今、シュベール王国に直系の王族は誰もいないのだ。
(……順当にいけば反乱の指揮を執ったお父様かしら?)
お父様は陛下とは違ってとても優秀な方だし、即位すれば賢王になるはずだ。
私もそれでいいと思っていた。
しかし、話は私の予想斜め上の方向へと進んでいった。
「――公爵閣下、私は次期国王には貴方のご息女であるマルガレーテ様が相応しいかと思われます」
「…………えっ!?」
きっかけは一人の大臣の発言だった。
(私が次期国王ってどういうことなの………?)
突然のことに驚きを隠しきれない。
私に王なんて務まるはずがない。
それに他の貴族たちはこんな小娘が王になるなど反対するだろう。
だがしかし、貴族たちの反応は予想外のものだった。
「なるほど……たしかに女王というのもアリかもしれないな………」
「マルガレーテ様は王妃だった頃、リアム陛下の分の仕事もこなされていたと聞く」
「それほどの才女が女王として即位するのであれば、この国も安泰だな」
(じょ、冗談でしょう………………!?)
何故か貴族たちはその提案に賛成しているようだった。
予想外の展開に全く理解が追い付かない。
全員の意見を聞いたお父様が私を見て言った。
「だそうだが、マルガレーテ。お前はどう思う?」
「え、わ、私は……」
当然、断ろうとした。
しかし、口を開きかけたそのとき、部屋にいた貴族たちから向けられたのは期待のこもった眼差し。
まるでこの場にいる全員が私が女王として即位することを望んでいるようだ。
「……」
(こ、これじゃ断れないじゃない………!)
結局、私は断ることが出来ずその提案を受け入れてしまったのだった。
国の重鎮たちを集めた会議がちょうど今始まろうとしていた。
「やっとリアム陛下がいなくなってくれたか」
「あの人は死んで当然の男だよ。全く同情できないな」
仕事を放棄して寵姫と遊び呆けていた王を慕う者などいない。
「それにしても残念だな。逃亡中に足を滑らせて川に落ち、そのまま亡くなってしまうだなんて。あの二人の公開処刑を楽しみにしていたのに」
「ああ、運が良いのか悪いのか……」
王宮の一室に集められた貴族たちは口々にそう言った。
やはりみんな表に出していなかっただけで陛下に不満を抱いていたようだ。
実際、謀反を起こしたお父様を非難する声は一切聞こえなかった。
(……彼らの言う通りだわ。私たちは何も間違ったことをしていない)
陛下は死んで当然の愚王だった。
あの人は王になってはいけない人だった。
私もたくさん酷いことをされた。
彼の妻だった頃の辛い記憶が蘇り、思わず俯いてしまう。
「……」
「マルガレーテ、大丈夫か?そろそろ始まるぞ」
「お父様……」
隣にいたお父様が心配そうに声をかけた。
「ええ、私は大丈夫です」
私はお父様を不安にさせないように笑顔でそう答えた。
***
それから少しして、会議が始まった。
今回の議題はただ一つ。
次の国王についてだ。
リアム陛下と寵姫の間に子はいない。
その上、彼は一人っ子だ。
つまり今、シュベール王国に直系の王族は誰もいないのだ。
(……順当にいけば反乱の指揮を執ったお父様かしら?)
お父様は陛下とは違ってとても優秀な方だし、即位すれば賢王になるはずだ。
私もそれでいいと思っていた。
しかし、話は私の予想斜め上の方向へと進んでいった。
「――公爵閣下、私は次期国王には貴方のご息女であるマルガレーテ様が相応しいかと思われます」
「…………えっ!?」
きっかけは一人の大臣の発言だった。
(私が次期国王ってどういうことなの………?)
突然のことに驚きを隠しきれない。
私に王なんて務まるはずがない。
それに他の貴族たちはこんな小娘が王になるなど反対するだろう。
だがしかし、貴族たちの反応は予想外のものだった。
「なるほど……たしかに女王というのもアリかもしれないな………」
「マルガレーテ様は王妃だった頃、リアム陛下の分の仕事もこなされていたと聞く」
「それほどの才女が女王として即位するのであれば、この国も安泰だな」
(じょ、冗談でしょう………………!?)
何故か貴族たちはその提案に賛成しているようだった。
予想外の展開に全く理解が追い付かない。
全員の意見を聞いたお父様が私を見て言った。
「だそうだが、マルガレーテ。お前はどう思う?」
「え、わ、私は……」
当然、断ろうとした。
しかし、口を開きかけたそのとき、部屋にいた貴族たちから向けられたのは期待のこもった眼差し。
まるでこの場にいる全員が私が女王として即位することを望んでいるようだ。
「……」
(こ、これじゃ断れないじゃない………!)
結局、私は断ることが出来ずその提案を受け入れてしまったのだった。
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