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本編
7 両親
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驚くことに、扉の外に立っていたのは私の父である公爵だった。
状況を理解することが出来ず、ただポカンとお父様のことを見つめた。
「マルガレーテ!!!」
お父様は私の姿を見るなり、泣きそうな顔でこちらへと駆け寄った。
そして、そのまま私をギュッと抱きしめた。
「!」
お父様に抱きしめられるのは随分と久しぶりだ。
結婚する前以来だろうか。
そもそも王妃になってからはほとんど家族と会えていない。
「マルガレーテ……本当にすまなかった……!」
私を抱きしめた父は、ただただ私に対して謝罪の言葉を繰り返した。
声は震え、目から涙が零れた。
父のそのような姿は生まれて初めて見る。
「お父様……どうしてここに……?」
私は抱きしめられたままお父様に尋ねた。
「ああ、それに関しては後で話そう。長くなりそうだからな」
「……」
お父様はそう言うと私から体を離した。
「マルガレーテ、とりあえず外へ出よう。皆待っている」
「え、だけど外には反乱軍が……」
私がそう口にすると、お父様は安心させるかのように言った。
「大丈夫だ、彼らがマルガレーテに危害を加えることはないから」
「どういうこと……?」
(私に危害を加えることはない……?どうして……?私は王妃なのよ……?)
お父様の言っていることの意味が分からない。
しかし、このような状況でお父様が嘘をついているとも思えない。
「詳しくは後で話す。さぁ、行こう」
「は、はい」
私はお父様に腕を引かれて共に部屋の外へと出た。
父の後ろについて王宮の廊下を歩く。
その途中で何人かの兵士たちとすれ違ったが、不思議なことに彼らが私に敵意を向けてくることはなかった。
しばらく歩いて、王宮の隅にある一室に辿り着いた。
私はその中へと通された。
「………………お母様?………それにみんな!」
中にいたのはお母様と公爵家の騎士たちだった。
「マルガレーテ!」
お母様はお父様と同じように私を力強く抱きしめた。
「お母様……」
「マルガレーテ……本当に……本当にごめんなさい……」
そう言ったお母様の瞳からは涙が零れていた。
「お母様、どうして……」
「私は……あなたが辛い目に遭っているのを知っていて……助けてあげられなかった……」
お母様の言葉に、お父様が同意するように拳を握りしめて言った。
「こんなことになるならマルガレーテを王家に嫁がせなければよかった……!」
「本当に、その通りだわ……」
二人の激しい後悔が伝わってくる。
「お父様……お母様……仕方がないですよ……この結婚は王命だったのですから……」
「だが……!」
私はお父様の言葉を遮って言った。
「いいえ、私はお父様とお母様がそう思ってくれるだけで本当に嬉しいです」
二人の優しい言葉に胸が温かくなる。
お父様とお母様の元に生まれてきて本当に良かったと、心の底からそう思えた。
そうして私たちはしばらくの間、家族の再会を喜び合った。
状況を理解することが出来ず、ただポカンとお父様のことを見つめた。
「マルガレーテ!!!」
お父様は私の姿を見るなり、泣きそうな顔でこちらへと駆け寄った。
そして、そのまま私をギュッと抱きしめた。
「!」
お父様に抱きしめられるのは随分と久しぶりだ。
結婚する前以来だろうか。
そもそも王妃になってからはほとんど家族と会えていない。
「マルガレーテ……本当にすまなかった……!」
私を抱きしめた父は、ただただ私に対して謝罪の言葉を繰り返した。
声は震え、目から涙が零れた。
父のそのような姿は生まれて初めて見る。
「お父様……どうしてここに……?」
私は抱きしめられたままお父様に尋ねた。
「ああ、それに関しては後で話そう。長くなりそうだからな」
「……」
お父様はそう言うと私から体を離した。
「マルガレーテ、とりあえず外へ出よう。皆待っている」
「え、だけど外には反乱軍が……」
私がそう口にすると、お父様は安心させるかのように言った。
「大丈夫だ、彼らがマルガレーテに危害を加えることはないから」
「どういうこと……?」
(私に危害を加えることはない……?どうして……?私は王妃なのよ……?)
お父様の言っていることの意味が分からない。
しかし、このような状況でお父様が嘘をついているとも思えない。
「詳しくは後で話す。さぁ、行こう」
「は、はい」
私はお父様に腕を引かれて共に部屋の外へと出た。
父の後ろについて王宮の廊下を歩く。
その途中で何人かの兵士たちとすれ違ったが、不思議なことに彼らが私に敵意を向けてくることはなかった。
しばらく歩いて、王宮の隅にある一室に辿り着いた。
私はその中へと通された。
「………………お母様?………それにみんな!」
中にいたのはお母様と公爵家の騎士たちだった。
「マルガレーテ!」
お母様はお父様と同じように私を力強く抱きしめた。
「お母様……」
「マルガレーテ……本当に……本当にごめんなさい……」
そう言ったお母様の瞳からは涙が零れていた。
「お母様、どうして……」
「私は……あなたが辛い目に遭っているのを知っていて……助けてあげられなかった……」
お母様の言葉に、お父様が同意するように拳を握りしめて言った。
「こんなことになるならマルガレーテを王家に嫁がせなければよかった……!」
「本当に、その通りだわ……」
二人の激しい後悔が伝わってくる。
「お父様……お母様……仕方がないですよ……この結婚は王命だったのですから……」
「だが……!」
私はお父様の言葉を遮って言った。
「いいえ、私はお父様とお母様がそう思ってくれるだけで本当に嬉しいです」
二人の優しい言葉に胸が温かくなる。
お父様とお母様の元に生まれてきて本当に良かったと、心の底からそう思えた。
そうして私たちはしばらくの間、家族の再会を喜び合った。
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