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ハッピーエンド
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「リリーシャ、もうすぐだ」
「わぁ・・・!長かったですね・・・!」
私は舞踏会の後、レナルド殿下と正式に婚約を結び馬車で二人彼の国へと向かっていた。これからレナルド殿下のご両親である隣国の国王陛下、王妃陛下とお会いする。娘として受け入れてもらえるかは分からないけれど、不思議と彼が隣にいるのなら怖くはなかった。
あれから本当に色々なことがあった。
レナルド殿下が私にプロポーズした後、学園に通っていた貴族子息たちがお祝いの言葉を述べに来てくれた。そこで私は衝撃の事実を知ることとなったのだ。
何と私が男爵令嬢への嫌がらせなどしていないことをみんな知っていたという。そして私のことを密かに慕っていたとも。あのとき庇えなかったことに対する謝罪までしてくれた。
一貴族の令息令嬢が王太子を始めとする高位貴族たちを相手に意見をするというほうが無理な話なのでもちろん彼らを恨んでなどいない。ただただ嬉しかった。みんなが私を信じてくれたということが。
フレッド王太子殿下―いや、元王太子のフレッドは自室での謹慎中に突如姿を消しそのまま行方不明となった。そして今でも見つかっていないらしい。貴族たちの噂によると既に死んでいるとかいないとか。
そしてララ・グレッグ男爵令嬢。彼女に関しては今もなお地下の牢獄に閉じ込められている。隣国の第二王子殿下に無礼を働いたことで生涯幽閉となったそうだ。幽閉された当初は意味不明なことを言って暴れていたそうだが、しばらくして突然抜け殻のように大人しくなったという。
「・・・」
二人のことを考えると複雑な気持ちになる。
私は彼らに本当に酷い目に遭わされた。冤罪をかけられ、婚約を破棄されて名誉を傷付けられた。あのときのことを思い出すたびに辛い気持ちになるし、今でも忘れられない。だけど―
(・・・・・・彼らがどうなろうと私にはもう関係の無い話よ)
そう、あの二人の結末がどうであれ私には関係の無い話だ。私はこれから新しい人生を生きていくのだから。
―「リリーシャ、着いたぞ。私の国だ」
「・・・!」
殿下のその声で私は顔を上げて窓の外を見た。そのとき、見たことのない景色が私の視界に広がった。
(ここが・・・レナルド殿下の生まれた国・・・)
人生で初めて来たこの場所を見て胸が躍る。
ここで私は彼と共に生きていくのだ。決して楽なことばかりではないだろうが、彼と一緒ならどんな辛いことでも乗り越えていけるようなそんな気がした。
一足先に馬車から降りたレナルド殿下は私にスッと手を差し伸べた。
気付けば暗い夜が過ぎて、朝になっていた。空には朝日が昇っていて、その光がレナルド殿下を照らしていた。彼の美しい金色の髪の毛がその光を受けてキラキラと輝いていた。
(何だか、白馬の王子様みたい・・・)
―お姫様を迎えに来てくれた王子様。
私はそんなことを思いながらも彼の手を取った。
「―殿下」
「何だ?」
私のその声に反応した殿下と目が合った。
「大好きです」
その言葉にレナルド殿下の顔が真っ赤になった。
私はそんな殿下を見てクスクスと笑った。
―これから先も彼とずっと一緒にいられますように。
私はレナルド殿下に気付かれないように心の中でそう願いながら新しい人生への第一歩を踏み出した。
「わぁ・・・!長かったですね・・・!」
私は舞踏会の後、レナルド殿下と正式に婚約を結び馬車で二人彼の国へと向かっていた。これからレナルド殿下のご両親である隣国の国王陛下、王妃陛下とお会いする。娘として受け入れてもらえるかは分からないけれど、不思議と彼が隣にいるのなら怖くはなかった。
あれから本当に色々なことがあった。
レナルド殿下が私にプロポーズした後、学園に通っていた貴族子息たちがお祝いの言葉を述べに来てくれた。そこで私は衝撃の事実を知ることとなったのだ。
何と私が男爵令嬢への嫌がらせなどしていないことをみんな知っていたという。そして私のことを密かに慕っていたとも。あのとき庇えなかったことに対する謝罪までしてくれた。
一貴族の令息令嬢が王太子を始めとする高位貴族たちを相手に意見をするというほうが無理な話なのでもちろん彼らを恨んでなどいない。ただただ嬉しかった。みんなが私を信じてくれたということが。
フレッド王太子殿下―いや、元王太子のフレッドは自室での謹慎中に突如姿を消しそのまま行方不明となった。そして今でも見つかっていないらしい。貴族たちの噂によると既に死んでいるとかいないとか。
そしてララ・グレッグ男爵令嬢。彼女に関しては今もなお地下の牢獄に閉じ込められている。隣国の第二王子殿下に無礼を働いたことで生涯幽閉となったそうだ。幽閉された当初は意味不明なことを言って暴れていたそうだが、しばらくして突然抜け殻のように大人しくなったという。
「・・・」
二人のことを考えると複雑な気持ちになる。
私は彼らに本当に酷い目に遭わされた。冤罪をかけられ、婚約を破棄されて名誉を傷付けられた。あのときのことを思い出すたびに辛い気持ちになるし、今でも忘れられない。だけど―
(・・・・・・彼らがどうなろうと私にはもう関係の無い話よ)
そう、あの二人の結末がどうであれ私には関係の無い話だ。私はこれから新しい人生を生きていくのだから。
―「リリーシャ、着いたぞ。私の国だ」
「・・・!」
殿下のその声で私は顔を上げて窓の外を見た。そのとき、見たことのない景色が私の視界に広がった。
(ここが・・・レナルド殿下の生まれた国・・・)
人生で初めて来たこの場所を見て胸が躍る。
ここで私は彼と共に生きていくのだ。決して楽なことばかりではないだろうが、彼と一緒ならどんな辛いことでも乗り越えていけるようなそんな気がした。
一足先に馬車から降りたレナルド殿下は私にスッと手を差し伸べた。
気付けば暗い夜が過ぎて、朝になっていた。空には朝日が昇っていて、その光がレナルド殿下を照らしていた。彼の美しい金色の髪の毛がその光を受けてキラキラと輝いていた。
(何だか、白馬の王子様みたい・・・)
―お姫様を迎えに来てくれた王子様。
私はそんなことを思いながらも彼の手を取った。
「―殿下」
「何だ?」
私のその声に反応した殿下と目が合った。
「大好きです」
その言葉にレナルド殿下の顔が真っ赤になった。
私はそんな殿下を見てクスクスと笑った。
―これから先も彼とずっと一緒にいられますように。
私はレナルド殿下に気付かれないように心の中でそう願いながら新しい人生への第一歩を踏み出した。
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