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執着 ララside
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それからのことはあまりよく覚えていない。
「ララ、私だ。フレッドだ、分かるか?」
誰かが私の元に来たような気がするが、記憶にない。
いや、別に誰だって良かった。私が待っているのはレナルドだけだから。私にとっての王子様はレナルドただ一人。ここに来たのがレナルドでないのなら一緒に行くつもりもなかった。
『迎えに来たよ、ララ』
「あぁ・・・レナルド・・・」
王子様の服を着たレナルドが牢屋にいる私を迎えに来る。そんなことを想像しては一人でニヤけた。
「うわぁ・・・気持ち悪・・・」
「この女にこれほど執着されてるレナルド殿下が不憫だな・・・」
兵士たちの本気で引いたような声が聞こえたような気がしたが無視した。
『ララ、私と共にここから出よう』
そう言ってレナルドが私に手を差し出す。私はその手を掴もうとするが、それは私の手からすり抜けていってしまう。
ついに私は幻聴に加えて幻覚まで見るようになってしまったようだ。
(ああ・・・でもレナルドの幻覚なら悪くないかも・・・)
既に狂っていた私は、そんなことまで思い始めていた。
前世での推し。ずっと恋焦がれていた人。そんな人の夢を永遠に見ることが出来るのであればむしろ良いのかもしれない。
(どうせ手に入らないんだから・・・せめて夢の中だけでも・・・)
そんなことを思っていたそのとき、突然私の視界が真っ暗になった。
(・・・・・・・・・・・え?)
何も見えない。先ほどまでに見えていたもの全てが一瞬にして私の視界から消え失せた。驚いて辺りを見渡してみるが、何も見えないままだった。
(何ッ!?何なのッ!?嫌よ、怖いわ!レナルド、助けて!)
視界を奪われ狼狽する私の耳に、先ほど聞こえてきた声が鳴り響いた。
『これは罰だ、お前はやりすぎた』
(えっ、罰?)
―だからどうして私が罰を受けなければならないのよ。
そう聞こうとしたが、何故だか声までもが出なくなっていた。そしてそれを最後に耳までおかしくなってしまった。何も見えない、聞こえない。声も出ない。
(嫌ッ・・・怖いわ・・・)
恐ろしかった。例えるなら真っ暗な世界に一人取り残されているような感じだ。
(どうして何も見えないの?何も聞こえないの?これじゃあもう・・・)
―レナルドの幻覚を見ることも、彼の声を聞くことも出来なくなるじゃない。
驚くことに、そんな状況に陥っても私はレナルドのことしか頭になかった。
(レナルド・・・・・・・・・・あれ?どうして?どうしてレナルドの顔が思い出せないの?)
気付けばあれだけ恋焦がれていたレナルドの顔も声も全てが私の記憶から消え去っていた。この世界に転生してから彼の顔を忘れたことなど一度も無かったというのに何故だろう。
(あれ・・・私が恋をしていたのは誰だっけ・・・?)
次第に私は彼の名前までもがあやふやになっていった。彼がどんな顔をしているのか、どんな声なのか全てが分からない。名前すらも思い出せない。
(私は・・・何でここにいるんだっけ・・・?)
こうして私は声と五感、そして最愛の人の記憶を奪われ、暗闇に一人取り残されてしまったのである。
「ララ、私だ。フレッドだ、分かるか?」
誰かが私の元に来たような気がするが、記憶にない。
いや、別に誰だって良かった。私が待っているのはレナルドだけだから。私にとっての王子様はレナルドただ一人。ここに来たのがレナルドでないのなら一緒に行くつもりもなかった。
『迎えに来たよ、ララ』
「あぁ・・・レナルド・・・」
王子様の服を着たレナルドが牢屋にいる私を迎えに来る。そんなことを想像しては一人でニヤけた。
「うわぁ・・・気持ち悪・・・」
「この女にこれほど執着されてるレナルド殿下が不憫だな・・・」
兵士たちの本気で引いたような声が聞こえたような気がしたが無視した。
『ララ、私と共にここから出よう』
そう言ってレナルドが私に手を差し出す。私はその手を掴もうとするが、それは私の手からすり抜けていってしまう。
ついに私は幻聴に加えて幻覚まで見るようになってしまったようだ。
(ああ・・・でもレナルドの幻覚なら悪くないかも・・・)
既に狂っていた私は、そんなことまで思い始めていた。
前世での推し。ずっと恋焦がれていた人。そんな人の夢を永遠に見ることが出来るのであればむしろ良いのかもしれない。
(どうせ手に入らないんだから・・・せめて夢の中だけでも・・・)
そんなことを思っていたそのとき、突然私の視界が真っ暗になった。
(・・・・・・・・・・・え?)
何も見えない。先ほどまでに見えていたもの全てが一瞬にして私の視界から消え失せた。驚いて辺りを見渡してみるが、何も見えないままだった。
(何ッ!?何なのッ!?嫌よ、怖いわ!レナルド、助けて!)
視界を奪われ狼狽する私の耳に、先ほど聞こえてきた声が鳴り響いた。
『これは罰だ、お前はやりすぎた』
(えっ、罰?)
―だからどうして私が罰を受けなければならないのよ。
そう聞こうとしたが、何故だか声までもが出なくなっていた。そしてそれを最後に耳までおかしくなってしまった。何も見えない、聞こえない。声も出ない。
(嫌ッ・・・怖いわ・・・)
恐ろしかった。例えるなら真っ暗な世界に一人取り残されているような感じだ。
(どうして何も見えないの?何も聞こえないの?これじゃあもう・・・)
―レナルドの幻覚を見ることも、彼の声を聞くことも出来なくなるじゃない。
驚くことに、そんな状況に陥っても私はレナルドのことしか頭になかった。
(レナルド・・・・・・・・・・あれ?どうして?どうしてレナルドの顔が思い出せないの?)
気付けばあれだけ恋焦がれていたレナルドの顔も声も全てが私の記憶から消え去っていた。この世界に転生してから彼の顔を忘れたことなど一度も無かったというのに何故だろう。
(あれ・・・私が恋をしていたのは誰だっけ・・・?)
次第に私は彼の名前までもがあやふやになっていった。彼がどんな顔をしているのか、どんな声なのか全てが分からない。名前すらも思い出せない。
(私は・・・何でここにいるんだっけ・・・?)
こうして私は声と五感、そして最愛の人の記憶を奪われ、暗闇に一人取り残されてしまったのである。
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