50 / 52
天罰 ララside
しおりを挟む
「ああ・・・レナルド・・・レナルド・・・!」
涙が止まらない。胸がズキズキと痛む。これが失恋の痛みというものなのだろうか。前世で何度も経験したことだというのに、こんなにも涙が止まらないのは初めてだ。
私は牢屋の中でただただレナルドとリリーシャを恨み続けた。
どうして、どうして、私ではなくあの女を選んだの。私はヒロインであの女は悪役令嬢。だからあの女はどうあがいても私には勝てない。ここはそういう世界だった。つまりこの世界にヒロインとして転生した時点で私の勝ちは決まっているようなものだったのだ。それなのに―
「ううっ・・・うう・・・」
前世からの推しだったレナルド。この世界に転生したその日から私は何が何でもレナルドを攻略しようと思っていた。あの日から彼を忘れたことなど一度も無い。会えない間は彼の隣にいる夢を何度見たことか。悔しくて悲しくてどうしようもない。
(いやよ・・・そんなの認めないわ・・・)
絶望、悲しみ、そして嫉妬。様々な感情が私の中で入り交じった。もう自分が何なのかもよく分からなくなっていた。ドス黒い何かが、私の体を蝕んでいく。まるで私が私でなくなったみたいだった。
「イヤーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「ウウッ!!!」
見張りの兵士たちが耳を手で塞いでうめき声を上げた。だけど今はそれすらも気にならない。私の心を占めていたのはリリーシャに対する恨みだけだったから。
この日、私は完全に狂ってしまった。
◇◆◇◆◇◆
「ああ・・・」
それから、私は会話もまともに出来ないくらいおかしくなってしまっていた。
兵士たちが先ほどからずっと汚いものを見るかのような目で私を見下ろしている。私は世界で一番可愛いヒロインなのに何故そんな目で見ているのだろうか。
それからは次第に誰かの声が聞こえるようになった。ここには見張りの兵士二人以外は誰もいない。幻聴だろうか。ついに私はそうなるまで狂ってしまったようだ。
『お前のことはずっと見ていた。何故こんなことをした』
(あなたは誰・・・?)
『私はお前をこの世界に転生させた者だ』
(ということはもしかして・・・神様?)
『そうとも言うな』
(やっぱり神様だったのね!それなら私を早くここから出してよ!神様ならそれくらい簡単でしょう!?)
『・・・調子に乗ったから、天罰が下ったのだ』
(天罰・・・?私はヒロインなのにどうして天罰が下るの・・・?)
『お前は何の非も無いリリーシャ嬢に嫌がらせの罪を着せた挙句に婚約者を奪った。そして、お前が篭絡した男共は悲惨な末路を迎えた。お前はそれに対して少しの罪悪感も無いのか』
(罪悪感・・・?私は何も悪くないわ。だって自分の持ってるものを上手に使っただけだもの。アイツらが勝手に惚れただけよ。あんなクソ男たちを本気で好きになるわけがないでしょう?)
『・・・お前に聞いた私が馬鹿だった。ここまで救いようのない人間は初めてだ』
(どういうこと・・・?私は事実を言っているだけよ・・・)
『ハァ・・・もうよい、お前はそこで一生苦しめ』
(待って!それならせめて乙女ゲームが始まる前まで時を戻してよ!今度こそはレナルドを攻略してみせ・・・)
『聞きたくもない』
それを最後に声は聞こえなくなった。
罪悪感を抱いたことなど一度も無い。むしろ悪いのは悪役令嬢の役を全うしなかったリリーシャの方だろう。
そうだ、あの女のせいだ。あの女のせいで私はこうなったんだ。あの女さえいなければ、レナルドは今頃私の物だったはずだ。
(そうよ、私は何も悪くない。悪いのはリリーシャだわ・・・だってあの女は与えられた役を全うしなかったんだもの・・・)
涙が止まらない。胸がズキズキと痛む。これが失恋の痛みというものなのだろうか。前世で何度も経験したことだというのに、こんなにも涙が止まらないのは初めてだ。
私は牢屋の中でただただレナルドとリリーシャを恨み続けた。
どうして、どうして、私ではなくあの女を選んだの。私はヒロインであの女は悪役令嬢。だからあの女はどうあがいても私には勝てない。ここはそういう世界だった。つまりこの世界にヒロインとして転生した時点で私の勝ちは決まっているようなものだったのだ。それなのに―
「ううっ・・・うう・・・」
前世からの推しだったレナルド。この世界に転生したその日から私は何が何でもレナルドを攻略しようと思っていた。あの日から彼を忘れたことなど一度も無い。会えない間は彼の隣にいる夢を何度見たことか。悔しくて悲しくてどうしようもない。
(いやよ・・・そんなの認めないわ・・・)
絶望、悲しみ、そして嫉妬。様々な感情が私の中で入り交じった。もう自分が何なのかもよく分からなくなっていた。ドス黒い何かが、私の体を蝕んでいく。まるで私が私でなくなったみたいだった。
「イヤーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「ウウッ!!!」
見張りの兵士たちが耳を手で塞いでうめき声を上げた。だけど今はそれすらも気にならない。私の心を占めていたのはリリーシャに対する恨みだけだったから。
この日、私は完全に狂ってしまった。
◇◆◇◆◇◆
「ああ・・・」
それから、私は会話もまともに出来ないくらいおかしくなってしまっていた。
兵士たちが先ほどからずっと汚いものを見るかのような目で私を見下ろしている。私は世界で一番可愛いヒロインなのに何故そんな目で見ているのだろうか。
それからは次第に誰かの声が聞こえるようになった。ここには見張りの兵士二人以外は誰もいない。幻聴だろうか。ついに私はそうなるまで狂ってしまったようだ。
『お前のことはずっと見ていた。何故こんなことをした』
(あなたは誰・・・?)
『私はお前をこの世界に転生させた者だ』
(ということはもしかして・・・神様?)
『そうとも言うな』
(やっぱり神様だったのね!それなら私を早くここから出してよ!神様ならそれくらい簡単でしょう!?)
『・・・調子に乗ったから、天罰が下ったのだ』
(天罰・・・?私はヒロインなのにどうして天罰が下るの・・・?)
『お前は何の非も無いリリーシャ嬢に嫌がらせの罪を着せた挙句に婚約者を奪った。そして、お前が篭絡した男共は悲惨な末路を迎えた。お前はそれに対して少しの罪悪感も無いのか』
(罪悪感・・・?私は何も悪くないわ。だって自分の持ってるものを上手に使っただけだもの。アイツらが勝手に惚れただけよ。あんなクソ男たちを本気で好きになるわけがないでしょう?)
『・・・お前に聞いた私が馬鹿だった。ここまで救いようのない人間は初めてだ』
(どういうこと・・・?私は事実を言っているだけよ・・・)
『ハァ・・・もうよい、お前はそこで一生苦しめ』
(待って!それならせめて乙女ゲームが始まる前まで時を戻してよ!今度こそはレナルドを攻略してみせ・・・)
『聞きたくもない』
それを最後に声は聞こえなくなった。
罪悪感を抱いたことなど一度も無い。むしろ悪いのは悪役令嬢の役を全うしなかったリリーシャの方だろう。
そうだ、あの女のせいだ。あの女のせいで私はこうなったんだ。あの女さえいなければ、レナルドは今頃私の物だったはずだ。
(そうよ、私は何も悪くない。悪いのはリリーシャだわ・・・だってあの女は与えられた役を全うしなかったんだもの・・・)
202
お気に入りに追加
4,224
あなたにおすすめの小説

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『目には目を歯には歯を』
プランケット公爵家の令嬢ユルシュルは王太子から求婚された。公爵だった父を亡くし、王妹だった母がゴーエル男爵を配偶者に迎えて女公爵になった事で、プランケット公爵家の家中はとても混乱していた。家中を纏め公爵家を守るためには、自分の恋心を抑え込んで王太子の求婚を受けるしかなかった。だが求婚された王宮での舞踏会から公爵邸に戻ろうとしたユルシュル、徒党を組んで襲うモノ達が現れた。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる