婚約破棄された公爵令嬢ですが、どうやら周りの人たちは私の味方のようです。

ましゅぺちーの

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天罰 ララside

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「ああ・・・レナルド・・・レナルド・・・!」


涙が止まらない。胸がズキズキと痛む。これが失恋の痛みというものなのだろうか。前世で何度も経験したことだというのに、こんなにも涙が止まらないのは初めてだ。


私は牢屋の中でただただレナルドとリリーシャを恨み続けた。


どうして、どうして、私ではなくあの女を選んだの。私はヒロインであの女は悪役令嬢。だからあの女はどうあがいても私には勝てない。ここはそういう世界だった。つまりこの世界にヒロインとして転生した時点で私の勝ちは決まっているようなものだったのだ。それなのに―


「ううっ・・・うう・・・」


前世からの推しだったレナルド。この世界に転生したその日から私は何が何でもレナルドを攻略しようと思っていた。あの日から彼を忘れたことなど一度も無い。会えない間は彼の隣にいる夢を何度見たことか。悔しくて悲しくてどうしようもない。


(いやよ・・・そんなの認めないわ・・・)


絶望、悲しみ、そして嫉妬。様々な感情が私の中で入り交じった。もう自分が何なのかもよく分からなくなっていた。ドス黒い何かが、私の体を蝕んでいく。まるで私が私でなくなったみたいだった。


「イヤーーーーーーーーーーーーッ!!!」


「ウウッ!!!」


見張りの兵士たちが耳を手で塞いでうめき声を上げた。だけど今はそれすらも気にならない。私の心を占めていたのはリリーシャに対する恨みだけだったから。


この日、私は完全に狂ってしまった。




◇◆◇◆◇◆



「ああ・・・」


それから、私は会話もまともに出来ないくらいおかしくなってしまっていた。


兵士たちが先ほどからずっと汚いものを見るかのような目で私を見下ろしている。私は世界で一番可愛いヒロインなのに何故そんな目で見ているのだろうか。


それからは次第に誰かの声が聞こえるようになった。ここには見張りの兵士二人以外は誰もいない。幻聴だろうか。ついに私はそうなるまで狂ってしまったようだ。


『お前のことはずっと見ていた。何故こんなことをした』


(あなたは誰・・・?)


『私はお前をこの世界に転生させた者だ』


(ということはもしかして・・・神様?)


『そうとも言うな』


(やっぱり神様だったのね!それなら私を早くここから出してよ!神様ならそれくらい簡単でしょう!?)


『・・・調子に乗ったから、天罰が下ったのだ』


(天罰・・・?私はヒロインなのにどうして天罰が下るの・・・?)


『お前は何の非も無いリリーシャ嬢に嫌がらせの罪を着せた挙句に婚約者を奪った。そして、お前が篭絡した男共は悲惨な末路を迎えた。お前はそれに対して少しの罪悪感も無いのか』


(罪悪感・・・?私は何も悪くないわ。だって自分の持ってるものを上手に使っただけだもの。アイツらが勝手に惚れただけよ。あんなクソ男たちを本気で好きになるわけがないでしょう?)


『・・・お前に聞いた私が馬鹿だった。ここまで救いようのない人間は初めてだ』


(どういうこと・・・?私は事実を言っているだけよ・・・)


『ハァ・・・もうよい、お前はそこで一生苦しめ』


(待って!それならせめて乙女ゲームが始まる前まで時を戻してよ!今度こそはレナルドを攻略してみせ・・・)


『聞きたくもない』


それを最後に声は聞こえなくなった。


罪悪感を抱いたことなど一度も無い。むしろ悪いのは悪役令嬢の役を全うしなかったリリーシャの方だろう。


そうだ、あの女のせいだ。あの女のせいで私はこうなったんだ。あの女さえいなければ、レナルドは今頃私の物だったはずだ。


(そうよ、私は何も悪くない。悪いのはリリーシャだわ・・・だってあの女は与えられた役を全うしなかったんだもの・・・)


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