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「リリーシャ嬢、大丈夫か?」
「はい、私は平気です」
馬車はしばらくして王宮に到着した。
王宮に来てからというのも、レナルド殿下はずっと私を気遣ってくれている。
ここには私を断罪した王太子殿下と、私を嫌がらせの犯人に仕立て上げたあの男爵令嬢がいる。一人だったら間違いなく怖かっただろう。しかし殿下が隣にいるからか、不思議とそんな気持ちはなかった。
私はお兄様と仲直りした後、私を断罪した彼らの現在を聞いた。
まず私の断罪に加担したうちの一人であるオーガスト・コール侯爵令息。
どうやらグレッグ男爵令嬢への嫌がらせは全て彼の仕業だったようだ。男爵令嬢を独り占めしたいという気持ちのあまりそのような行動に及んでしまったのだという。
(愛する人を傷付けるだなんて私には理解出来ないわ・・・そこまでして彼女の心が欲しかったのかしら)
コール侯爵令息の行動はとてもじゃないが理解出来るものではないし、彼を心底軽蔑している。
しかし彼はこの後かなり悲惨な目に遭ったそうだ。どうやらお父様によって全ての罪を明らかにされ、罰を受けることになったらしい。
お兄様は私に対して「あいつとはもう一生会うことは無いだろうから大丈夫だ」とだけ言っていたがどのような処罰を受けたのかまでは教えてくれなかった。
(もしかしたら、お父様は余程キツい処罰を下したのかしら・・・)
例えば、オブライト公爵家の権力を使ってコール侯爵を脅迫したりして。
「・・・」
(・・・たとえそうなったとしても自業自得だわ)
私はそう思い、一旦コール侯爵令息のことを考えるのをやめた。
そしてアレクサンドル・フレイル伯爵令息。
彼もまた、今回の件で色々と罰を受けたようだ。
(フレイル伯爵令息・・・)
私は学園や舞踏会でよく見た彼の姿を思い浮かべた。
見目麗しく、剣の腕も立つ騎士団長の息子。
それが社交界でのフレイル伯爵令息のイメージだった。しかし殿下の婚約者として長い間側近である彼を見てきた私はそれが表の姿に過ぎないということをよく知っていた。
フレイル伯爵令息は時折殿下を後ろからゴミを見るような目で見つめていたからだ。おそらく内心見下しているのだろう。その瞳には色々な感情が込められているように思えた。
嫉妬、軽蔑、憎悪。
(王太子殿下は優秀な王子とは言えなかったから・・・きっとそれで見下しているのでしょうね・・・)
「リリーシャ嬢、考え事か?」
「あ、レナルド殿下・・・」
黙り込んでいた私に殿下が心配そうに尋ねた。
「はい、少し・・・」
「そうか・・・・・・」
私の言葉に殿下が少しだけ考え込んだ後、ギュッと手を握った。
「大丈夫だ、リリーシャ嬢。君には私がついている。私が絶対に君を守ってみせる。だから会場に入ったら出来るだけ私の傍から離れないでくれ」
「あ・・・」
―ドキリ
殿下の優しい言葉に胸が高鳴った。こんな気持ちは本当に久しぶりだ。
「・・・・・・はい」
私はそう言って殿下の手を握り返した。
「それでは、そろそろ行こうか」
私は私を見てニッコリと微笑んだ殿下に軽く頷き、彼と共に会場へと足を踏み入れた。
「はい、私は平気です」
馬車はしばらくして王宮に到着した。
王宮に来てからというのも、レナルド殿下はずっと私を気遣ってくれている。
ここには私を断罪した王太子殿下と、私を嫌がらせの犯人に仕立て上げたあの男爵令嬢がいる。一人だったら間違いなく怖かっただろう。しかし殿下が隣にいるからか、不思議とそんな気持ちはなかった。
私はお兄様と仲直りした後、私を断罪した彼らの現在を聞いた。
まず私の断罪に加担したうちの一人であるオーガスト・コール侯爵令息。
どうやらグレッグ男爵令嬢への嫌がらせは全て彼の仕業だったようだ。男爵令嬢を独り占めしたいという気持ちのあまりそのような行動に及んでしまったのだという。
(愛する人を傷付けるだなんて私には理解出来ないわ・・・そこまでして彼女の心が欲しかったのかしら)
コール侯爵令息の行動はとてもじゃないが理解出来るものではないし、彼を心底軽蔑している。
しかし彼はこの後かなり悲惨な目に遭ったそうだ。どうやらお父様によって全ての罪を明らかにされ、罰を受けることになったらしい。
お兄様は私に対して「あいつとはもう一生会うことは無いだろうから大丈夫だ」とだけ言っていたがどのような処罰を受けたのかまでは教えてくれなかった。
(もしかしたら、お父様は余程キツい処罰を下したのかしら・・・)
例えば、オブライト公爵家の権力を使ってコール侯爵を脅迫したりして。
「・・・」
(・・・たとえそうなったとしても自業自得だわ)
私はそう思い、一旦コール侯爵令息のことを考えるのをやめた。
そしてアレクサンドル・フレイル伯爵令息。
彼もまた、今回の件で色々と罰を受けたようだ。
(フレイル伯爵令息・・・)
私は学園や舞踏会でよく見た彼の姿を思い浮かべた。
見目麗しく、剣の腕も立つ騎士団長の息子。
それが社交界でのフレイル伯爵令息のイメージだった。しかし殿下の婚約者として長い間側近である彼を見てきた私はそれが表の姿に過ぎないということをよく知っていた。
フレイル伯爵令息は時折殿下を後ろからゴミを見るような目で見つめていたからだ。おそらく内心見下しているのだろう。その瞳には色々な感情が込められているように思えた。
嫉妬、軽蔑、憎悪。
(王太子殿下は優秀な王子とは言えなかったから・・・きっとそれで見下しているのでしょうね・・・)
「リリーシャ嬢、考え事か?」
「あ、レナルド殿下・・・」
黙り込んでいた私に殿下が心配そうに尋ねた。
「はい、少し・・・」
「そうか・・・・・・」
私の言葉に殿下が少しだけ考え込んだ後、ギュッと手を握った。
「大丈夫だ、リリーシャ嬢。君には私がついている。私が絶対に君を守ってみせる。だから会場に入ったら出来るだけ私の傍から離れないでくれ」
「あ・・・」
―ドキリ
殿下の優しい言葉に胸が高鳴った。こんな気持ちは本当に久しぶりだ。
「・・・・・・はい」
私はそう言って殿下の手を握り返した。
「それでは、そろそろ行こうか」
私は私を見てニッコリと微笑んだ殿下に軽く頷き、彼と共に会場へと足を踏み入れた。
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