40 / 52
会場へ
しおりを挟む
「リリーシャ嬢、大丈夫か?」
「はい、私は平気です」
馬車はしばらくして王宮に到着した。
王宮に来てからというのも、レナルド殿下はずっと私を気遣ってくれている。
ここには私を断罪した王太子殿下と、私を嫌がらせの犯人に仕立て上げたあの男爵令嬢がいる。一人だったら間違いなく怖かっただろう。しかし殿下が隣にいるからか、不思議とそんな気持ちはなかった。
私はお兄様と仲直りした後、私を断罪した彼らの現在を聞いた。
まず私の断罪に加担したうちの一人であるオーガスト・コール侯爵令息。
どうやらグレッグ男爵令嬢への嫌がらせは全て彼の仕業だったようだ。男爵令嬢を独り占めしたいという気持ちのあまりそのような行動に及んでしまったのだという。
(愛する人を傷付けるだなんて私には理解出来ないわ・・・そこまでして彼女の心が欲しかったのかしら)
コール侯爵令息の行動はとてもじゃないが理解出来るものではないし、彼を心底軽蔑している。
しかし彼はこの後かなり悲惨な目に遭ったそうだ。どうやらお父様によって全ての罪を明らかにされ、罰を受けることになったらしい。
お兄様は私に対して「あいつとはもう一生会うことは無いだろうから大丈夫だ」とだけ言っていたがどのような処罰を受けたのかまでは教えてくれなかった。
(もしかしたら、お父様は余程キツい処罰を下したのかしら・・・)
例えば、オブライト公爵家の権力を使ってコール侯爵を脅迫したりして。
「・・・」
(・・・たとえそうなったとしても自業自得だわ)
私はそう思い、一旦コール侯爵令息のことを考えるのをやめた。
そしてアレクサンドル・フレイル伯爵令息。
彼もまた、今回の件で色々と罰を受けたようだ。
(フレイル伯爵令息・・・)
私は学園や舞踏会でよく見た彼の姿を思い浮かべた。
見目麗しく、剣の腕も立つ騎士団長の息子。
それが社交界でのフレイル伯爵令息のイメージだった。しかし殿下の婚約者として長い間側近である彼を見てきた私はそれが表の姿に過ぎないということをよく知っていた。
フレイル伯爵令息は時折殿下を後ろからゴミを見るような目で見つめていたからだ。おそらく内心見下しているのだろう。その瞳には色々な感情が込められているように思えた。
嫉妬、軽蔑、憎悪。
(王太子殿下は優秀な王子とは言えなかったから・・・きっとそれで見下しているのでしょうね・・・)
「リリーシャ嬢、考え事か?」
「あ、レナルド殿下・・・」
黙り込んでいた私に殿下が心配そうに尋ねた。
「はい、少し・・・」
「そうか・・・・・・」
私の言葉に殿下が少しだけ考え込んだ後、ギュッと手を握った。
「大丈夫だ、リリーシャ嬢。君には私がついている。私が絶対に君を守ってみせる。だから会場に入ったら出来るだけ私の傍から離れないでくれ」
「あ・・・」
―ドキリ
殿下の優しい言葉に胸が高鳴った。こんな気持ちは本当に久しぶりだ。
「・・・・・・はい」
私はそう言って殿下の手を握り返した。
「それでは、そろそろ行こうか」
私は私を見てニッコリと微笑んだ殿下に軽く頷き、彼と共に会場へと足を踏み入れた。
「はい、私は平気です」
馬車はしばらくして王宮に到着した。
王宮に来てからというのも、レナルド殿下はずっと私を気遣ってくれている。
ここには私を断罪した王太子殿下と、私を嫌がらせの犯人に仕立て上げたあの男爵令嬢がいる。一人だったら間違いなく怖かっただろう。しかし殿下が隣にいるからか、不思議とそんな気持ちはなかった。
私はお兄様と仲直りした後、私を断罪した彼らの現在を聞いた。
まず私の断罪に加担したうちの一人であるオーガスト・コール侯爵令息。
どうやらグレッグ男爵令嬢への嫌がらせは全て彼の仕業だったようだ。男爵令嬢を独り占めしたいという気持ちのあまりそのような行動に及んでしまったのだという。
(愛する人を傷付けるだなんて私には理解出来ないわ・・・そこまでして彼女の心が欲しかったのかしら)
コール侯爵令息の行動はとてもじゃないが理解出来るものではないし、彼を心底軽蔑している。
しかし彼はこの後かなり悲惨な目に遭ったそうだ。どうやらお父様によって全ての罪を明らかにされ、罰を受けることになったらしい。
お兄様は私に対して「あいつとはもう一生会うことは無いだろうから大丈夫だ」とだけ言っていたがどのような処罰を受けたのかまでは教えてくれなかった。
(もしかしたら、お父様は余程キツい処罰を下したのかしら・・・)
例えば、オブライト公爵家の権力を使ってコール侯爵を脅迫したりして。
「・・・」
(・・・たとえそうなったとしても自業自得だわ)
私はそう思い、一旦コール侯爵令息のことを考えるのをやめた。
そしてアレクサンドル・フレイル伯爵令息。
彼もまた、今回の件で色々と罰を受けたようだ。
(フレイル伯爵令息・・・)
私は学園や舞踏会でよく見た彼の姿を思い浮かべた。
見目麗しく、剣の腕も立つ騎士団長の息子。
それが社交界でのフレイル伯爵令息のイメージだった。しかし殿下の婚約者として長い間側近である彼を見てきた私はそれが表の姿に過ぎないということをよく知っていた。
フレイル伯爵令息は時折殿下を後ろからゴミを見るような目で見つめていたからだ。おそらく内心見下しているのだろう。その瞳には色々な感情が込められているように思えた。
嫉妬、軽蔑、憎悪。
(王太子殿下は優秀な王子とは言えなかったから・・・きっとそれで見下しているのでしょうね・・・)
「リリーシャ嬢、考え事か?」
「あ、レナルド殿下・・・」
黙り込んでいた私に殿下が心配そうに尋ねた。
「はい、少し・・・」
「そうか・・・・・・」
私の言葉に殿下が少しだけ考え込んだ後、ギュッと手を握った。
「大丈夫だ、リリーシャ嬢。君には私がついている。私が絶対に君を守ってみせる。だから会場に入ったら出来るだけ私の傍から離れないでくれ」
「あ・・・」
―ドキリ
殿下の優しい言葉に胸が高鳴った。こんな気持ちは本当に久しぶりだ。
「・・・・・・はい」
私はそう言って殿下の手を握り返した。
「それでは、そろそろ行こうか」
私は私を見てニッコリと微笑んだ殿下に軽く頷き、彼と共に会場へと足を踏み入れた。
187
お気に入りに追加
4,226
あなたにおすすめの小説
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。


【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる