35 / 52
異変 ララside
しおりを挟む
異変が訪れたのはそれからすぐのことだった。
リリーシャが断罪され、彼女は学園から姿を消した。この学園で最も権力を持つ王太子に断罪されたことにより居づらくなったのだろう。別にリリーシャに恨みはないし、私にとってはそんなことどうだって良かった。
しかしそれと同時に彼女の兄であるルパートも私たちの前からいなくなってしまった。私はそのことに疑問を抱いた。
(ルパートは私に惚れ込んでいたはず・・・どうしてなの?)
ルパートも他の三人と同じで私にベタ惚れだった。少なくとも私に何も言わずに姿を消すような人間ではない。そんな彼が突然いなくなって私は困惑した。それは私だけではなく、王太子たちも同じだった。
王太子たちは突然いなくなったルパートに対して何故姿を消したのかという困惑、何か企んでいるのではないかという疑い、ライバルが一人減ったことに対する喜びなど様々な感情を抱いているように思えた。
しかし、そのとき私だけは別のことを考えた。
(・・・・・まぁいいわ。ルパートはドレスやアクセサリーも大して買ってくれなかったし、私を盲信しているわけでもない。このままいなくなっても別に良いかな)
私は結局、そう結論付けて突如姿を消したルパートのことをしばらく放っておくことを決めた。
それから数日後のことだ。
私はルパートと久しぶりに会った。
彼は私に対して廃嫡になったと言った。つまり、公爵家の跡継ぎから外されたのだという。どうやら姿を見せなかったのはそれが理由だったようだ。
その話を聞いた私は思った。
(うーん、廃嫡になったんならもうルパートはいっか)
どうせ彼はレナルド攻略において必要なキャラではない。ただ単に顔が良くて物を買ってくれるから傍に置いていただけだ。
貢いでくれた額も他の三人に比べたらかなり低かったし、私はこのまま縁を切ってしまおうと思った。
それから私はルパートのことを避け続けた。
彼の前ではこれからも傍にいると言ったが、そんなつもりは更々なかった。口先だけなら何とでも言える。彼は突然冷たくなった私の態度にかなり戸惑っているようだった。時々悲しげな瞳で私を見つめてきたりもした。
しかし私がそれに心を動かされることはなかった。
私は自分を見るたびに悲しそうな顔をするルパートを内心嘲笑った。
(私は悪くないわ。使えなくなったものを捨てるのは当然のことじゃない)
私の中ではもうルパートは価値の無い人間だった。だから捨てた。ただそれだけの話だ。
それから私は他の攻略キャラたちにもルパートとあまり関わらないように進言した。彼らは最初こそ戸惑っていたが、私が理由を熱弁してみせるとすぐに頷いてくれた。
その話の中で私は自分のことを聖女だと言った。乙女ゲームの中では私は聖女という設定だったから。
今は聖女としての力は使えないが、いつかきっと使えるようになるはずだ。そう思っての発言だった。
もちろん誰一人疑うことなくそれを信じた。恋は盲目、というが本当にその通りだなと思う。
もしここにルパートがいたのなら私の発言に対して確実に疑念を抱かれるだろう。それだけ考えればむしろいなくなって良かったのかもしれない。
「じゃあねみんな!また明日会おうね!」
私はそのまま攻略キャラたちを笑顔で見送った。彼らは私にメロメロで、少し微笑んだだけで頬を赤く染めて嬉しそうな顔をした。
「・・・」
(ハァ・・・毎日ぶりっ子キャラを演じるのも疲れるわ)
誰もいなくなった部屋で私はハァとため息をついた。
王太子たちの好感度を上げるにはぶりっ子キャラを演じる必要があった。しかし私は元々そんなキャラではないし、ぶりっ子をするのも今世が初めてだった。
(だけどこれもあと少しで終わるわ・・・)
私はそう思い、必死で心を落ち着かせた。
レナルドは他の攻略キャラと違って過度なぶりっ子を嫌う傾向にあった。そのため、彼の前でぶりぶりしすぎると好感度はみるみる下がっていくのだ。
単純なあの四人とは違ってレナルドは人を見る目がある。
(ハァ・・・本当に私の推しは何て素敵なのかしら・・・!)
リリーシャが断罪され、彼女は学園から姿を消した。この学園で最も権力を持つ王太子に断罪されたことにより居づらくなったのだろう。別にリリーシャに恨みはないし、私にとってはそんなことどうだって良かった。
しかしそれと同時に彼女の兄であるルパートも私たちの前からいなくなってしまった。私はそのことに疑問を抱いた。
(ルパートは私に惚れ込んでいたはず・・・どうしてなの?)
ルパートも他の三人と同じで私にベタ惚れだった。少なくとも私に何も言わずに姿を消すような人間ではない。そんな彼が突然いなくなって私は困惑した。それは私だけではなく、王太子たちも同じだった。
王太子たちは突然いなくなったルパートに対して何故姿を消したのかという困惑、何か企んでいるのではないかという疑い、ライバルが一人減ったことに対する喜びなど様々な感情を抱いているように思えた。
しかし、そのとき私だけは別のことを考えた。
(・・・・・まぁいいわ。ルパートはドレスやアクセサリーも大して買ってくれなかったし、私を盲信しているわけでもない。このままいなくなっても別に良いかな)
私は結局、そう結論付けて突如姿を消したルパートのことをしばらく放っておくことを決めた。
それから数日後のことだ。
私はルパートと久しぶりに会った。
彼は私に対して廃嫡になったと言った。つまり、公爵家の跡継ぎから外されたのだという。どうやら姿を見せなかったのはそれが理由だったようだ。
その話を聞いた私は思った。
(うーん、廃嫡になったんならもうルパートはいっか)
どうせ彼はレナルド攻略において必要なキャラではない。ただ単に顔が良くて物を買ってくれるから傍に置いていただけだ。
貢いでくれた額も他の三人に比べたらかなり低かったし、私はこのまま縁を切ってしまおうと思った。
それから私はルパートのことを避け続けた。
彼の前ではこれからも傍にいると言ったが、そんなつもりは更々なかった。口先だけなら何とでも言える。彼は突然冷たくなった私の態度にかなり戸惑っているようだった。時々悲しげな瞳で私を見つめてきたりもした。
しかし私がそれに心を動かされることはなかった。
私は自分を見るたびに悲しそうな顔をするルパートを内心嘲笑った。
(私は悪くないわ。使えなくなったものを捨てるのは当然のことじゃない)
私の中ではもうルパートは価値の無い人間だった。だから捨てた。ただそれだけの話だ。
それから私は他の攻略キャラたちにもルパートとあまり関わらないように進言した。彼らは最初こそ戸惑っていたが、私が理由を熱弁してみせるとすぐに頷いてくれた。
その話の中で私は自分のことを聖女だと言った。乙女ゲームの中では私は聖女という設定だったから。
今は聖女としての力は使えないが、いつかきっと使えるようになるはずだ。そう思っての発言だった。
もちろん誰一人疑うことなくそれを信じた。恋は盲目、というが本当にその通りだなと思う。
もしここにルパートがいたのなら私の発言に対して確実に疑念を抱かれるだろう。それだけ考えればむしろいなくなって良かったのかもしれない。
「じゃあねみんな!また明日会おうね!」
私はそのまま攻略キャラたちを笑顔で見送った。彼らは私にメロメロで、少し微笑んだだけで頬を赤く染めて嬉しそうな顔をした。
「・・・」
(ハァ・・・毎日ぶりっ子キャラを演じるのも疲れるわ)
誰もいなくなった部屋で私はハァとため息をついた。
王太子たちの好感度を上げるにはぶりっ子キャラを演じる必要があった。しかし私は元々そんなキャラではないし、ぶりっ子をするのも今世が初めてだった。
(だけどこれもあと少しで終わるわ・・・)
私はそう思い、必死で心を落ち着かせた。
レナルドは他の攻略キャラと違って過度なぶりっ子を嫌う傾向にあった。そのため、彼の前でぶりぶりしすぎると好感度はみるみる下がっていくのだ。
単純なあの四人とは違ってレナルドは人を見る目がある。
(ハァ・・・本当に私の推しは何て素敵なのかしら・・・!)
144
お気に入りに追加
4,212
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか
れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。
婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。
両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。
バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。
*今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる