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異変 ララside

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異変が訪れたのはそれからすぐのことだった。


リリーシャが断罪され、彼女は学園から姿を消した。この学園で最も権力を持つ王太子に断罪されたことにより居づらくなったのだろう。別にリリーシャに恨みはないし、私にとってはそんなことどうだって良かった。


しかしそれと同時に彼女の兄であるルパートも私たちの前からいなくなってしまった。私はそのことに疑問を抱いた。


(ルパートは私に惚れ込んでいたはず・・・どうしてなの?)


ルパートも他の三人と同じで私にベタ惚れだった。少なくとも私に何も言わずに姿を消すような人間ではない。そんな彼が突然いなくなって私は困惑した。それは私だけではなく、王太子たちも同じだった。


王太子たちは突然いなくなったルパートに対して何故姿を消したのかという困惑、何か企んでいるのではないかという疑い、ライバルが一人減ったことに対する喜びなど様々な感情を抱いているように思えた。


しかし、そのとき私だけは別のことを考えた。


(・・・・・まぁいいわ。ルパートはドレスやアクセサリーも大して買ってくれなかったし、私を盲信しているわけでもない。このままいなくなっても別に良いかな)


私は結局、そう結論付けて突如姿を消したルパートのことをしばらく放っておくことを決めた。







それから数日後のことだ。


私はルパートと久しぶりに会った。


彼は私に対して廃嫡になったと言った。つまり、公爵家の跡継ぎから外されたのだという。どうやら姿を見せなかったのはそれが理由だったようだ。


その話を聞いた私は思った。


(うーん、廃嫡になったんならもうルパートはいっか)


どうせ彼はレナルド攻略において必要なキャラではない。ただ単に顔が良くて物を買ってくれるから傍に置いていただけだ。


貢いでくれた額も他の三人に比べたらかなり低かったし、私はこのまま縁を切ってしまおうと思った。


それから私はルパートのことを避け続けた。


彼の前ではこれからも傍にいると言ったが、そんなつもりは更々なかった。口先だけなら何とでも言える。彼は突然冷たくなった私の態度にかなり戸惑っているようだった。時々悲しげな瞳で私を見つめてきたりもした。


しかし私がそれに心を動かされることはなかった。


私は自分を見るたびに悲しそうな顔をするルパートを内心嘲笑った。


(私は悪くないわ。使えなくなったものを捨てるのは当然のことじゃない)


私の中ではもうルパートは価値の無い人間だった。だから捨てた。ただそれだけの話だ。


それから私は他の攻略キャラたちにもルパートとあまり関わらないように進言した。彼らは最初こそ戸惑っていたが、私が理由を熱弁してみせるとすぐに頷いてくれた。


その話の中で私は自分のことを聖女だと言った。乙女ゲームの中では私は聖女という設定だったから。


今は聖女としての力は使えないが、いつかきっと使えるようになるはずだ。そう思っての発言だった。


もちろん誰一人疑うことなくそれを信じた。恋は盲目、というが本当にその通りだなと思う。


もしここにルパートがいたのなら私の発言に対して確実に疑念を抱かれるだろう。それだけ考えればむしろいなくなって良かったのかもしれない。






「じゃあねみんな!また明日会おうね!」


私はそのまま攻略キャラたちを笑顔で見送った。彼らは私にメロメロで、少し微笑んだだけで頬を赤く染めて嬉しそうな顔をした。


「・・・」


(ハァ・・・毎日ぶりっ子キャラを演じるのも疲れるわ)


誰もいなくなった部屋で私はハァとため息をついた。


王太子たちの好感度を上げるにはぶりっ子キャラを演じる必要があった。しかし私は元々そんなキャラではないし、ぶりっ子をするのも今世が初めてだった。


(だけどこれもあと少しで終わるわ・・・)


私はそう思い、必死で心を落ち着かせた。


レナルドは他の攻略キャラと違って過度なぶりっ子を嫌う傾向にあった。そのため、彼の前でぶりぶりしすぎると好感度はみるみる下がっていくのだ。


単純なあの四人とは違ってレナルドは人を見る目がある。


(ハァ・・・本当に私の推しは何て素敵なのかしら・・・!)


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