婚約破棄された公爵令嬢ですが、どうやら周りの人たちは私の味方のようです。

ましゅぺちーの

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乙女ゲームの世界 ララside

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私には別の世界で生きた記憶がある。


私が今いる国とはかなり違う日本という国。着る服も生活様式もこの国とは何もかもが違った。


正直、その国でのことはあまり思い出せない。自分の名前も、親の顔も、全てが曖昧だった。


しかし、ろくでもない人生だったということだけはハッキリと覚えている。前世の私は地味でパッとしない女だったため、異性から相手にされなかった。そんな私にとっての唯一の癒しは乙女ゲームをすることだった。


休日はそれにばかり打ち込んでいたためか、この世界に転生したときはすぐに気付いた。ここが私が前世でプレイした”乙女ゲームの世界”だということに。


しかも私が転生したのはヒロインだった。


皆から愛されるヒロイン。そのことを知ったときは本当に嬉しかった。


鏡を見ると男の庇護欲をそそるであろうピンク髪の美少女が映っていた。こんなにも可愛いのであればたくさんの男を虜にして当然だろうと思った。実際、学園の入学式でも私以上に可愛い令嬢はいなかった。


誰を攻略するかは最初から決めていた。


この乙女ゲームの攻略キャラは全部で五人いる。


この国の第一王子であり、王太子でもあるフレッド。


名門オブライト公爵家の嫡男で、悪役令嬢の実兄ルパート。


コール侯爵家の令息で、宰相閣下の息子であるオーガスト。


フレイル伯爵令息であり、騎士団長子息のアレクサンドル。


そして隠しキャラであり、ゲーム内人気NO.1だった―




隣国の第二王子レナルド。



私はこの世界に転生したときからずっとレナルド狙いだった。


レナルドは攻略キャラたちの中で圧倒的人気を誇っていた。ゲームを何周もした私ならその理由がハッキリと分かる。


この乙女ゲームの攻略キャラはイケメンで優秀ではあるが、性格に難がある人間が多かった。


王太子フレッドは元々浮気性だった。悪役令嬢であるリリーシャと婚約しておきながら何人かの令嬢と隠れて交際していたのだから。それがヒロインに出会って真実の愛を知るという展開になるのだが、プレイヤーからはそれについて批判の声も多かった。


宰相子息のオーガストは極度のナルシストでヒロインが自分に惚れていると信じて疑わない、そんな男だった。プレイヤーたちからはそれが気持ち悪いと言われ、攻略キャラの中では最も人気が低いキャラでもあった。


騎士団長子息のアレクサンドルもまた問題のある男だった。王太子フレッドの側近という立場であるにもかかわらず、無能なフレッドを内心見下している。実際、逆ハーレムルートでは王太子や他攻略キャラの悪口ばかり言っていた。


そして悪役令嬢の実兄ルパート。四人の中だとこの男が最もマシな性格をしていると言えるだろう。決して性格が悪いというわけではないが、ルパートは優柔不断で実妹がヒロインに嫌がらせをしていることを知ったときもどうすればいいか分からないというような態度を取っていた。まぁ最終的にはヒロインを選び、実の妹を断罪することになるのだが。


それに比べてレナルドは・・・


容姿、性格、身分全てを満たしていた。


レナルドは第二王子という立場ではあるが、兄である第一王子は病弱なためほとんど表舞台には姿を現さない。そのため彼が次期国王になるのは確定している。


レナルドは容姿も他攻略キャラとはレベルが違い、公務の面でもかなり優秀だという。それに加えて彼は一途で、惚れた相手にはとことん尽くすタイプだった。


そんなレナルドが他の攻略キャラを差し置いて人気NO.1になるのは当然のことだった。


私ももちろん彼推しで、何が何でもレナルドを攻略したかった。


しかし隣国の王子である彼は乙女ゲームの舞台である学園には通っていない。


つまり私にとっての乙女ゲームはまだ始まることはない。


(それまで何をして過ごそうかな・・・)


そのとき、私の頭の中に浮かんだのはある考えだった。


前世では誰からも愛されなかった私。せっかく美しく生まれたのだから今世では色々な男と遊んでみたい。


私はそう思い、遊びとして王太子をはじめとするイケメンキャラたちを攻略してみることにした。


それが、私にとって良くない結果をもたらすとはこのときは思ってもみなかった―




―――――――――――



長い間お待たせして申し訳ありません!


しばらくララ視点が続きます。


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