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領地での療養

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私はお父様から療養の許可をもらった後すぐに領地へと行っていた。


しばらく学園へは行きたくなかった。


幸い私は既に卒業試験に合格しているので、卒業パーティーまでずっと休んでいても卒業できる。


(こういう時のために、普段からしっかり勉強しておいてよかったわ。)


私の心は比較的穏やかだった。


殿下のことは好きだったが、あんな人と結婚してもきっと将来は苦労の連続だ。


それを考えれば、婚約破棄されてよかったのかもしれない。


馬車の中から窓の外を見る。


「あ、リリーシャ様だ!!!」


一人の子供の声で周りにいた人たちが私を見る。


「リリーシャ様ぁ~!!!」


「帰ってきていたんですね!!!」


領民たちが私を見て歓声をあげた。


私がここまで領民たちから慕われているのは私のおかげではない。


お父様とお母様が、領民たちに慕われているから自然とその娘である私も慕われているのである。


手を振る領民たちに微笑みながら私も手を振り返した。


(ここなら穏やかに暮らせそうだわ。荷物を置いたらすぐ邸の近くの湖に行こうかな・・・。)


私はこれからの生活に胸を躍らせた。










オブライト公爵side


「あなた、どうやらルパートは例の男爵令嬢に本気のようね。」


そう言ったのは妻であるヴィオラだ。


「そうだな、あの阿婆擦れの言葉を信じ、実の妹を断罪するとは・・・情けない・・・。」


ヴィオラがそっと私に寄り添った。


「・・・ヴィオラ。二人はいつから仲が悪くなったんだ?学園に入学する前は仲が良かったと思うのだが・・・。」


「・・・私にもわからないわ。阿婆擦れがルパートに何かを吹き込んだのではないかしら?リリーシャを貶めるような。だとしてもそれを信じたルパートもルパートだけれど。」


「あいつは今までリリーシャの何を見てきたんだ・・・。」


私は頭を抱えた。


それを聞いたヴィオラが私に尋ねた。


「あなた、ルパートをどうするつもり?いくらなんでもこのままでは・・・。」


ヴィオラの言葉に私は本気で悩んだ。


オブライト公爵家の男児はルパート一人。


女児が爵位を継ぐのは不可能ではないが・・・前例がない。


「・・・一度あいつと話をしてみる。更生が不可能なようなら・・・



―廃嫡する。」



その言葉にヴィオラは反論しなかった。


「・・・それが良いでしょうね。」


「あぁ、廃嫡したらどこかの家に婿入りさせるつもりだ。もちろんあの男爵令嬢との結婚は認めない。」


私の決断にヴィオラは納得したのか軽く頷いた。




――――――――――――――――――――――――――――


次回から学園に戻り、皆さんお待ちかねのざまぁ回です!


ざまぁ対象が5人もいるのでかなり長くなるかと思われます・・・。

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