婚約破棄された公爵令嬢ですが、どうやら周りの人たちは私の味方のようです。

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
2 / 52

優しい両親

しおりを挟む
「お父様、リリーシャです。」


ドアをノックし、返事を待つ。


「入れ。」


私はお父様の声を聞いて書斎の扉を開けた。


中へ入るとお父様だけではなくお母様もいた。


私はお父様の前に立ちじっと二人を見据え口を開いた。


「王太子殿下に、婚約破棄されました。」


言い終わった私は俯いてしまった。


何を言われるか分からなくて怖かった。


勘当される?いや、修道院へ行くことになる?


様々な思いが私の頭の中を支配していた。


だがお父様とお母様は一言も発しない。


「リリーシャ。」


ようやく聞こえたお父様の声に顔を上げた。


(あれ・・・?)


お父様とお母様は表情を変えていなかった。


まるで私が婚約破棄されることを分かりきっていたようだった。


「リリーシャ。・・・すまなかった。」


(!?)


お父様は申し訳なさそうな顔をした。


「お、お父様!?何故お父様が謝るのですか!?」


「リリーシャ。私からも謝らせて。ごめんなさい。」


お母様もお父様に続いて私に謝ったのだ。


「お母様も何故・・・!」


「王太子殿下との婚約に関してだ。元々私たちはリリーシャと王太子殿下との婚約については反対していたんだ。だが国王陛下からどうしてもと言われて断れなくてな・・・。」


「そ、そんなお父様が謝ることではありませんわ!」


「男爵令嬢の件に関してもそうだ。知っていながら放っておいた。ただの遊びだと思っていた。」


お父様は頭を抱えた。


「・・・殿下との婚約破棄に関しては別に構わんが・・・例の男爵令嬢に傾倒している中にルパートがいるのは面倒だな。」


ルパートとは私のお兄様のことである。


お兄様とは学園に入る前までは仲が良かった。


学園に入学してお兄様がララ様に篭絡されてからは私を憎しみのこもった目で見るようになった。


(多分・・・愛する女性が私に嫌がらせを受けているって思いこんだからかしら・・・。)


お父様の言葉を聞いたお母様が溜息をつく。


「ハァ・・・ルパートには高位貴族の婚約者がいるというのに・・・なんて情けないのかしら・・・。侯爵家にどう説明すれば・・・。」


お兄様には婚約者がいる。


侯爵家のご令嬢でルイーゼ様という素敵な方だ。


(そういえば、学園でルイーゼ様から何度も相談を受けていたっけ。)


ルイーゼ様はお兄様を本当に慕っているらしい。


だがお兄様はルイーゼ様を見ることはなく、男爵令嬢ララに夢中になった。


ルイーゼ様は学園内で辛い思いをしたに違いない。


あの人たちは人の目を気にせずに男爵令嬢とイチャついていたから。


「・・・お父様、私しばらく学園へは・・・。」


「分かっている。リリーシャ、しばらくは領地へ療養しに行くと良い。」


「ありがとうございます!お父様!」


「リリーシャ、こっちのことは心配しないで思う存分自由にしてきていいのよ。」


「ありがとうございます!お母様!」


私が思っていたより、私は両親に愛されていたようだ。


私は胸が温かくなった―


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず
恋愛
「サラ・ローティシアル! 君との婚約は、この瞬間を以て破棄する!!」  ローティシアル伯爵令嬢のサラ。彼女の婚約者であるヘクターは心変わりをしており、今の想い人と交際を行うためサラの罪を捏造していました。  その結果サラは大勢の前で婚約破棄を宣言され、周囲からは白目で見られるようになってしまうのですが――。 「お待ちくださいまし。わたくし、今のお話は納得できませんわ」  そんな時でした。  サフェタンエス侯爵令嬢、アリーヌ。いつも激しくサラをライバル視をしていたはずの人が、二人の間に割って入ったのでした。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

処理中です...