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三章
戦い③ ダリウス視点
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「ハァ……ハァ……」
戦いが始まってから数十分が経過した。
俺は変わらずローレルに対して劣勢を強いられていた。
(コイツ……本当に王と同年代なのか……)
戦いながら、ローレルのフィジカルに驚きを隠しきれない。
体力も異常だし、パワーやスピードも圧倒的に俺を上回っている。
それに奴の闇魔法は一度引きずり込まれたら即死というとんでもないものだった。
足元の闇に気を取られてまともに攻撃を仕掛けることが出来ない。
このままでは力尽きて敗北するのも時間の問題だ。
「どうした、この程度かあの王太子の側近は」
「クソッ……!」
無傷なローレルと違って、俺は既に多くの血を流している。
どうやらこれ以上時間をかけている暇はなさそうだ。
(すぐにでも決着を着ける必要がありそうだ……)
何度も何度も繰り返し発動される魔法。
この男に魔力の限界というものは無いのか。
再び発動された闇魔法に、ついに呑まれそうになった俺はローレルの腕を強く掴んだ。
「お前も一緒に来いよ」
「なッ……何をする!放せ!」
そのとき、闇魔法から逃れようと奴の顔に焦りが見え始めた。
その瞬間を突いた俺は、ローレルの腹部に拳を打ち込んだ。
「ぐっ……!」
渾身の打撃だったが、ローレルは軽く血を吐いただけで大ダメージにはならなかった。
奴はかなりのタフさも持ち合わせているらしい。
(なら……アイツの弱点を突くしかこの勝負を終わらせる方法は無さそうだな)
「なかなかやるな、見くびっていたよ」
そう言いながらローレルは楽しそうに笑った。
「笑っていられるのも今だけだ」
「強がりを……」
ローレルが言い終わる前に、俺は魔法を発動させた。
辺り一面が真っ白な光に包まれ、お互いに姿が見えなくなる。
「何……!?」
驚いた様子のローレル。
俺の姿を見つけようと必死になっているようだが、ヤツの視界は今何も見えていないはずだ。
俺も見えなくなるが、それがむしろ好都合。
ローレルが自身の視界を覆っているものの正体に気が付いたのは、それからすぐのことだった。
「これは……光魔法!?」
「――正解」
素早くローレルの背後を取った俺は、無防備になった背中を光の剣で斬りつけた。
「ぐっ……!」
よろめきそうになったところを何とか持ちこたえたローレルが反撃しようとする。
しかし、光魔法のせいで上手く体が動かせない。
「動けないだろうな、――光魔法は闇魔法の唯一の弱点なんだから」
「クッ……」
それから俺は、まともに動けなくなったローレルを光の縄で拘束した。
縛り上げられ、床に転がるローレルは驚いた顔で俺を見つめた。
「お前、光魔法を使えたのか……?」
「使えないさ、俺はただ聖女様から一時的に力を貰っただけだ」
「聖女……まさかあの女の力が開花して……」
そのことを聞いたローレルはガックリと項垂れた。
「クソが……私が全て手に入れるはずだったものをよくも……」
「やはりそれが目的か」
おそらくこの男の真の目的は聖女の力を得て名声を手に入れることだったのだろう。
本当の黒幕は国王アルベルトではなく、この男だったのだ。
「今ここでお前の息の根を止めてもいいが……お前は犯した罪が多すぎる」
「……」
「お前の沙汰は直に王になる殿下に任せることとする」
「クソッ……」
死ぬことすら出来ないと勘付いたローレルは絶望の表情を浮かべて俯いた。
戦いが始まってから数十分が経過した。
俺は変わらずローレルに対して劣勢を強いられていた。
(コイツ……本当に王と同年代なのか……)
戦いながら、ローレルのフィジカルに驚きを隠しきれない。
体力も異常だし、パワーやスピードも圧倒的に俺を上回っている。
それに奴の闇魔法は一度引きずり込まれたら即死というとんでもないものだった。
足元の闇に気を取られてまともに攻撃を仕掛けることが出来ない。
このままでは力尽きて敗北するのも時間の問題だ。
「どうした、この程度かあの王太子の側近は」
「クソッ……!」
無傷なローレルと違って、俺は既に多くの血を流している。
どうやらこれ以上時間をかけている暇はなさそうだ。
(すぐにでも決着を着ける必要がありそうだ……)
何度も何度も繰り返し発動される魔法。
この男に魔力の限界というものは無いのか。
再び発動された闇魔法に、ついに呑まれそうになった俺はローレルの腕を強く掴んだ。
「お前も一緒に来いよ」
「なッ……何をする!放せ!」
そのとき、闇魔法から逃れようと奴の顔に焦りが見え始めた。
その瞬間を突いた俺は、ローレルの腹部に拳を打ち込んだ。
「ぐっ……!」
渾身の打撃だったが、ローレルは軽く血を吐いただけで大ダメージにはならなかった。
奴はかなりのタフさも持ち合わせているらしい。
(なら……アイツの弱点を突くしかこの勝負を終わらせる方法は無さそうだな)
「なかなかやるな、見くびっていたよ」
そう言いながらローレルは楽しそうに笑った。
「笑っていられるのも今だけだ」
「強がりを……」
ローレルが言い終わる前に、俺は魔法を発動させた。
辺り一面が真っ白な光に包まれ、お互いに姿が見えなくなる。
「何……!?」
驚いた様子のローレル。
俺の姿を見つけようと必死になっているようだが、ヤツの視界は今何も見えていないはずだ。
俺も見えなくなるが、それがむしろ好都合。
ローレルが自身の視界を覆っているものの正体に気が付いたのは、それからすぐのことだった。
「これは……光魔法!?」
「――正解」
素早くローレルの背後を取った俺は、無防備になった背中を光の剣で斬りつけた。
「ぐっ……!」
よろめきそうになったところを何とか持ちこたえたローレルが反撃しようとする。
しかし、光魔法のせいで上手く体が動かせない。
「動けないだろうな、――光魔法は闇魔法の唯一の弱点なんだから」
「クッ……」
それから俺は、まともに動けなくなったローレルを光の縄で拘束した。
縛り上げられ、床に転がるローレルは驚いた顔で俺を見つめた。
「お前、光魔法を使えたのか……?」
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「今ここでお前の息の根を止めてもいいが……お前は犯した罪が多すぎる」
「……」
「お前の沙汰は直に王になる殿下に任せることとする」
「クソッ……」
死ぬことすら出来ないと勘付いたローレルは絶望の表情を浮かべて俯いた。
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