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三章
決戦②
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「ガキが……私のことを知らないのか?」
「いいや、よく知ってるからこそ俺がやりたいんだよ」
ダリウス様は楽しそうに笑った。
この状況で笑いが出るとは驚きだ。
(そういえば、殿下がダリウス様は戦闘狂なところがあると言っていたような……)
魔術師とは変な人が多いらしい。
そもそも数自体が少ない上に、これまでほとんど関わったことが無かったから知らなかったが。
それからすぐにダリウス様とローレル様の戦いが始まった。
お互いに魔術を使っての戦闘だ。
「私に挑むにはまだまだ力が足りないのではないか?」
「ウッ……やっぱり強いな。伝説の魔術師様は」
ローレル様の放った魔法がダリウス様の脇腹を掠めた。
何とか避けた彼だったが、掠めた箇所から血が噴き出し、軽くよろめいた。
「ダリウス様!」
「ダリウス!」
(何て速さ……!これが最強の魔術師の力……!)
驚いて言葉が出なかった。
いくらダリウス様が天才魔術師として殿下に仕えているとはいえ、相手が強すぎた。
それに私たちが戦いを邪魔しないように二人の周囲には強力な結界が張られている。
術師の結界はどちらかが倒れるまで解かれることは無い。
つまり、勝敗がつくまでは一切の援護も出来ないということだ。
(ダリウス様……私たちを守ってくれているんだわ)
援護は出来ないが、彼の貼った結界のおかげでローレル様が私や殿下に手を出すことも無い。
彼はあえて一人であの最強の魔術師の相手をしているのだ。
(何て人……)
彼の並々ならぬ覚悟に、何だか胸が熱くなる。
彼こそ、次代の王の側近に相応しい男だ。
そのとき、激しい戦闘の様子を見ていたお父様が何かを決意したかのように殿下に向かって口を開いた。
「殿下、私は騎士たちの元へと向かいたいと思います。残してきた彼らが心配です」
「公爵」
「ここを……――アルベルトを、殿下に任せてもよろしいでしょうか?」
その問いに、殿下はハッキリとこう返した。
「ああ、もちろんだ。国王は私がやる。私の手で……しっかりとケジメをつける。父親だからって情けはかけない」
「殿下……」
彼の言葉は紛れも無い本心だった。
目を見れば分かる。
「頼みます、殿下」
その言葉に安心したようにお父様は何の未練も無く部屋を出て行った。
父が出て行った後、激しい怒りを含んだ怒鳴り声が突然部屋に響いた。
「――やはり公爵を唆したのはお前か、グレイフォード!!!」
「「!」」
ローレル様の結界で守られている国王アルベルトが声を荒らげていた。
「実の父親を殺そうとするなど……一体何のつもりだ!!!」
「父親?」
殿下は王を嘲笑うようにハッと笑った。
「私はお前を父だと思ったことなど無い。お前も私を息子だなんて思っていないだろう」
「な、何を……」
殿下が本気だということを悟ったのか、今度は私の方に顔を向けた。
「セ、セシリア!私を助けてくれ!あれほど優しくしてやったではないか!」
「――お断りします」
「な、何!?」
「お父様や殿下からから全て聞きました。私のお母様を殺したのは貴方で、貴方は母によく似た私を自分のものにしようとしている。そして殿下までもをこの世から消そうとした」
「な、な……」
「そんな極悪非道な人間を助けることなんて出来ません」
そう、王族とはいえ彼は多くの罪を犯しすぎた。
多くの人の人生を壊し、狂わせた。
死をもって償うほかに道は無い。
「ローレル!!!どんな卑怯な手を使ってでもその小僧に勝利するのだ!そして早く私を助けてくれ!騎士たちはどれだけ死のうがかまわない。お前一人いれば百人力だからな!」
「……」
人とは思えない王の発言に、殿下が怒りを露わにした。
「臣下たちのことを何だと思っているんだ……」
「何て非道な……」
もちろん私も彼と同じ気持ちだ。
この悪逆非道な国王を地獄に堕としてやりたいという気持ちが胸の中によぎる。
しかし、今の私に出来るのはダリウス様の勝利を祈ることだけだ。
(お願い、ダリウス様!)
そう願いながら、私と殿下は彼の戦いをただじっと見守り続けた。
「いいや、よく知ってるからこそ俺がやりたいんだよ」
ダリウス様は楽しそうに笑った。
この状況で笑いが出るとは驚きだ。
(そういえば、殿下がダリウス様は戦闘狂なところがあると言っていたような……)
魔術師とは変な人が多いらしい。
そもそも数自体が少ない上に、これまでほとんど関わったことが無かったから知らなかったが。
それからすぐにダリウス様とローレル様の戦いが始まった。
お互いに魔術を使っての戦闘だ。
「私に挑むにはまだまだ力が足りないのではないか?」
「ウッ……やっぱり強いな。伝説の魔術師様は」
ローレル様の放った魔法がダリウス様の脇腹を掠めた。
何とか避けた彼だったが、掠めた箇所から血が噴き出し、軽くよろめいた。
「ダリウス様!」
「ダリウス!」
(何て速さ……!これが最強の魔術師の力……!)
驚いて言葉が出なかった。
いくらダリウス様が天才魔術師として殿下に仕えているとはいえ、相手が強すぎた。
それに私たちが戦いを邪魔しないように二人の周囲には強力な結界が張られている。
術師の結界はどちらかが倒れるまで解かれることは無い。
つまり、勝敗がつくまでは一切の援護も出来ないということだ。
(ダリウス様……私たちを守ってくれているんだわ)
援護は出来ないが、彼の貼った結界のおかげでローレル様が私や殿下に手を出すことも無い。
彼はあえて一人であの最強の魔術師の相手をしているのだ。
(何て人……)
彼の並々ならぬ覚悟に、何だか胸が熱くなる。
彼こそ、次代の王の側近に相応しい男だ。
そのとき、激しい戦闘の様子を見ていたお父様が何かを決意したかのように殿下に向かって口を開いた。
「殿下、私は騎士たちの元へと向かいたいと思います。残してきた彼らが心配です」
「公爵」
「ここを……――アルベルトを、殿下に任せてもよろしいでしょうか?」
その問いに、殿下はハッキリとこう返した。
「ああ、もちろんだ。国王は私がやる。私の手で……しっかりとケジメをつける。父親だからって情けはかけない」
「殿下……」
彼の言葉は紛れも無い本心だった。
目を見れば分かる。
「頼みます、殿下」
その言葉に安心したようにお父様は何の未練も無く部屋を出て行った。
父が出て行った後、激しい怒りを含んだ怒鳴り声が突然部屋に響いた。
「――やはり公爵を唆したのはお前か、グレイフォード!!!」
「「!」」
ローレル様の結界で守られている国王アルベルトが声を荒らげていた。
「実の父親を殺そうとするなど……一体何のつもりだ!!!」
「父親?」
殿下は王を嘲笑うようにハッと笑った。
「私はお前を父だと思ったことなど無い。お前も私を息子だなんて思っていないだろう」
「な、何を……」
殿下が本気だということを悟ったのか、今度は私の方に顔を向けた。
「セ、セシリア!私を助けてくれ!あれほど優しくしてやったではないか!」
「――お断りします」
「な、何!?」
「お父様や殿下からから全て聞きました。私のお母様を殺したのは貴方で、貴方は母によく似た私を自分のものにしようとしている。そして殿下までもをこの世から消そうとした」
「な、な……」
「そんな極悪非道な人間を助けることなんて出来ません」
そう、王族とはいえ彼は多くの罪を犯しすぎた。
多くの人の人生を壊し、狂わせた。
死をもって償うほかに道は無い。
「ローレル!!!どんな卑怯な手を使ってでもその小僧に勝利するのだ!そして早く私を助けてくれ!騎士たちはどれだけ死のうがかまわない。お前一人いれば百人力だからな!」
「……」
人とは思えない王の発言に、殿下が怒りを露わにした。
「臣下たちのことを何だと思っているんだ……」
「何て非道な……」
もちろん私も彼と同じ気持ちだ。
この悪逆非道な国王を地獄に堕としてやりたいという気持ちが胸の中によぎる。
しかし、今の私に出来るのはダリウス様の勝利を祈ることだけだ。
(お願い、ダリウス様!)
そう願いながら、私と殿下は彼の戦いをただじっと見守り続けた。
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