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三章
開戦
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そして、ついに王太子殿下によって謀反が起こされた。
殿下とお父様は兵を率いて王宮へと向かう。
もちろんその中には私もいる。
(やらないと……私の力で皆を救うのよ……)
剣を持って戦うことは出来ないが、傷付いた兵士たちを癒やすことは出来る。
これは私にしか出来ないことだ。
「セシリア」
「殿下」
傍にいた殿下が私の肩を優しく抱いた。
私が不安に思っていることを勘付かれたのかもしれない。
(落ち着かないのは彼の方なのに……)
私よりも殿下の方がずっとずっと大きなものを背負っている。
彼に気を遣わせるわけにはいかない。
そう思った私は、自身の肩に置かれている殿下の手をそっと解いた。
「殿下、私は平気ですから」
「そうか……」
殿下は私の意図を読んだのか、それ以上何かを言ってくることは無かった。
(こんなところで怖がっているわけにはいかないわ)
――まだまだ戦いは始まったばかりなのだから。
王宮では国王派の貴族たちが待ち受けていた。
すぐに公爵家の騎士と王家の騎士による戦いが始まる。
戦いは激化すると思われたが、能の無い現王に愛想を尽かしている者は多く、数ではこちらが有利だった。
(ここは大丈夫そうね)
私がそう思ったのと同時、殿下に忠誠を誓っている第一騎士団長が叫んだ。
「殿下と閣下は国王の元へ!」
「ああ、ここを頼んだぞ!」
それから殿下とお父様は一足先に国王アルベルトのいる部屋へと向かった。
私もそれについて行った。
「――フルール嬢、来ていたのか」
「ダリウス様……」
背後に突然現れたのはダリウス様だった。
彼は戦場にいる私を非難するわけでもなく、いつもと変わらない視線を向けた。
「驚かないのですね」
「まぁ、アンタの性格上じっとしていられないとは思ってたからな」
出会ってそこまで経っていないというのに、どうやら私の心の中を掌握しているようだ。
魔術師とは恐ろしい。
「道を開けろ!!!」
道中何人かの敵兵が待ち伏せていたが、剣術に長けている殿下とお父様の前では歯も立たない。
父はもう四十近いが、まだまだ現役だ。
とてもじゃないがほんの少し前まで昏睡状態にあったとは思えない人だ。
「お前の父親、強いな」
「そうですね、戦っているところは私も初めて見ました」
「もしかすると、公爵夫人はそんなところに惚れたのかもしれないな」
ダリウス様は冗談っぽく笑った。
戦場だというのに呑気な人だ。
でも彼のその冗談によって、私の緊迫感は少しずつほぐされていった。
「国王の部屋はもうすぐだ。そしておそらく、そこには”アイツ”もいる」
「アイツ……?」
「――入るぞ!!!」
その瞬間、一足先に到着した殿下とお父様が扉を思いきり蹴り上げた。
勢いに任せて二人は部屋へと入っていく。
「俺たちも行こう、フルール嬢」
「はい……!」
遅れて中に入ると、そこには二人の人物がいた。
「アルベルト!!!」
「オ、オスカー……!」
物凄い剣幕で国王に剣を向ける父。
それに対して怯む王と、奥にもう一人の男。
「ほら、やっぱりいた」
「…………ローレル様」
殿下とお父様は兵を率いて王宮へと向かう。
もちろんその中には私もいる。
(やらないと……私の力で皆を救うのよ……)
剣を持って戦うことは出来ないが、傷付いた兵士たちを癒やすことは出来る。
これは私にしか出来ないことだ。
「セシリア」
「殿下」
傍にいた殿下が私の肩を優しく抱いた。
私が不安に思っていることを勘付かれたのかもしれない。
(落ち着かないのは彼の方なのに……)
私よりも殿下の方がずっとずっと大きなものを背負っている。
彼に気を遣わせるわけにはいかない。
そう思った私は、自身の肩に置かれている殿下の手をそっと解いた。
「殿下、私は平気ですから」
「そうか……」
殿下は私の意図を読んだのか、それ以上何かを言ってくることは無かった。
(こんなところで怖がっているわけにはいかないわ)
――まだまだ戦いは始まったばかりなのだから。
王宮では国王派の貴族たちが待ち受けていた。
すぐに公爵家の騎士と王家の騎士による戦いが始まる。
戦いは激化すると思われたが、能の無い現王に愛想を尽かしている者は多く、数ではこちらが有利だった。
(ここは大丈夫そうね)
私がそう思ったのと同時、殿下に忠誠を誓っている第一騎士団長が叫んだ。
「殿下と閣下は国王の元へ!」
「ああ、ここを頼んだぞ!」
それから殿下とお父様は一足先に国王アルベルトのいる部屋へと向かった。
私もそれについて行った。
「――フルール嬢、来ていたのか」
「ダリウス様……」
背後に突然現れたのはダリウス様だった。
彼は戦場にいる私を非難するわけでもなく、いつもと変わらない視線を向けた。
「驚かないのですね」
「まぁ、アンタの性格上じっとしていられないとは思ってたからな」
出会ってそこまで経っていないというのに、どうやら私の心の中を掌握しているようだ。
魔術師とは恐ろしい。
「道を開けろ!!!」
道中何人かの敵兵が待ち伏せていたが、剣術に長けている殿下とお父様の前では歯も立たない。
父はもう四十近いが、まだまだ現役だ。
とてもじゃないがほんの少し前まで昏睡状態にあったとは思えない人だ。
「お前の父親、強いな」
「そうですね、戦っているところは私も初めて見ました」
「もしかすると、公爵夫人はそんなところに惚れたのかもしれないな」
ダリウス様は冗談っぽく笑った。
戦場だというのに呑気な人だ。
でも彼のその冗談によって、私の緊迫感は少しずつほぐされていった。
「国王の部屋はもうすぐだ。そしておそらく、そこには”アイツ”もいる」
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「――入るぞ!!!」
その瞬間、一足先に到着した殿下とお父様が扉を思いきり蹴り上げた。
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「俺たちも行こう、フルール嬢」
「はい……!」
遅れて中に入ると、そこには二人の人物がいた。
「アルベルト!!!」
「オ、オスカー……!」
物凄い剣幕で国王に剣を向ける父。
それに対して怯む王と、奥にもう一人の男。
「ほら、やっぱりいた」
「…………ローレル様」
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