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三章
婚前旅行②
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「おい、これは一体……」
「私たちは婚……恋人同士じゃないですか!だからあえてお揃いのシャツにしたんです!」
「……」
殿下が自身の着ているシャツを見てポカンとした。
私と殿下は今、全く同じデザインの白いシャツを着用している。
たまたまではなくあえてこれを選んだのだ。
(舞踏会でドレスの色を合わせたりすることはあったけれど……それはあくまでも義務的なものだったから)
殿下をチラチラと見ている周囲の女性たちにも、彼と私がそういう関係であることを誇示しておきたかったし。
「でも涼しくなりましたね、殿下」
「……ああ、そうだな」
私と目が合った殿下は、お揃いのシャツを見て恥ずかしそうにぷいっと顔を背けた。
(何も言わないってことは別にこれでもいいってことよね?良かった!)
「着替えも済んだことだし、行きましょう」
「ああ」
準備を終えた私たちは早速海までの道のりを歩いた。
宿泊先からそれほど遠くない海は、この国の観光名所となっている。
(わぁ、すごく綺麗!)
目的地に到着した私は目の前に広がる光景に目を輝かせた。
日の光を受けて光る水面が、よく晴れた空と相まってより一層美しさを際立たせていた。
普段は私たちと同じようにたくさんのカップルがここを訪れるらしいが、今日は何故だか人がいない。
もしかすると、彼が自身の持っている権力を使ったのかもしれない。
(私のために……)
そんな風に考えるととても胸が熱くなる。
「殿下、とっても綺麗です!こんなに美しい場所は初めて見ました!」
「ああ、お前をここに連れて来て良かった」
嬉しそうな私の表情に、殿下がほっとしたようにクスリと笑った。
「少し歩こうか」
そこで殿下は王子様のように私にスッと手を差し出した。
黒い髪がいつも以上にキラキラと輝いている。
誰が見ても目を奪われるほど綺麗な彼の手を取った私はニッコリと微笑んだ。
「はい、喜んで」
そして私たちは横並びで海辺を歩いた。
(こんな穏やかな日々がずっと続けばいいのにな……)
そう思うものの、今の私と殿下には解決しなければならない問題が山積みだ。
私の父であるフルール公爵のことと、彼の父である国王陛下のこと。
(お互いに血の繋がった父親に悩まされてるのね……)
帰ったらまたすぐそれについて考えなければいけなくなる。
だからこそ、今だけはこの平和な時間を大切にしたかった。
「キャア、冷たい!」
足だけを海に入れた私は、人生初めての海に思わず大はしゃぎしてしまった。
「楽しそうだな」
「殿下もこっち来てください!」
「おい、あまり深いところに行くと危ないぞ……」
「これくらい平気ですよ!」
「そんなこと言って溺れたらどうするんだ……」
心配そうな顔で私に続いて海へ入った殿下。
「あ、おい!水をかけるな!」
「ふふふ」
それから私たちは子供の頃に戻ったように海でたくさん遊んだ。
***
しばらくして、疲れの溜まった私と殿下は休憩がてらに砂浜に腰を下ろした。
隣に座る彼の肩に頭を乗せていた私は、何も言わずに海の上に浮かぶ夕日をじっと眺めていた。
(もう日が暮れるのね……)
楽しすぎて本当にあっという間だった。
最近は気を張り詰めてばかりだったから、余計にこの時間が短く感じた。
「結婚してからもこういう時間が作れたら良いな……」
何気なく発した言葉に、殿下が困ったような笑みを浮かべて言った。
「それは難しいんじゃないかな」
「……」
認めたくないが、彼の言う通りだった。
私たちにはやるべきことが山積みだ。
それは例え結婚をして王と王妃になった後でも変わらない。
むしろ結婚してからの方が忙しくなるかもしれない。
(どうしてこんなにも問題が多いんだろう……)
いっそ私たちが王太子と公爵令嬢という立場では無かったら……
「――セシリア、そんなに不安な顔をするな」
「殿下……」
頭を上げて彼の顔を見た。
「――俺が絶対にお前を守るから」
「……!」
真剣な表情でそう言った殿下。
その言葉で心の中に残っていた不安が一気に消えていくようだった。
「……はい、殿下」
コクリと頷くと、彼が私の唇にそっとキスをした。
「私たちは婚……恋人同士じゃないですか!だからあえてお揃いのシャツにしたんです!」
「……」
殿下が自身の着ているシャツを見てポカンとした。
私と殿下は今、全く同じデザインの白いシャツを着用している。
たまたまではなくあえてこれを選んだのだ。
(舞踏会でドレスの色を合わせたりすることはあったけれど……それはあくまでも義務的なものだったから)
殿下をチラチラと見ている周囲の女性たちにも、彼と私がそういう関係であることを誇示しておきたかったし。
「でも涼しくなりましたね、殿下」
「……ああ、そうだな」
私と目が合った殿下は、お揃いのシャツを見て恥ずかしそうにぷいっと顔を背けた。
(何も言わないってことは別にこれでもいいってことよね?良かった!)
「着替えも済んだことだし、行きましょう」
「ああ」
準備を終えた私たちは早速海までの道のりを歩いた。
宿泊先からそれほど遠くない海は、この国の観光名所となっている。
(わぁ、すごく綺麗!)
目的地に到着した私は目の前に広がる光景に目を輝かせた。
日の光を受けて光る水面が、よく晴れた空と相まってより一層美しさを際立たせていた。
普段は私たちと同じようにたくさんのカップルがここを訪れるらしいが、今日は何故だか人がいない。
もしかすると、彼が自身の持っている権力を使ったのかもしれない。
(私のために……)
そんな風に考えるととても胸が熱くなる。
「殿下、とっても綺麗です!こんなに美しい場所は初めて見ました!」
「ああ、お前をここに連れて来て良かった」
嬉しそうな私の表情に、殿下がほっとしたようにクスリと笑った。
「少し歩こうか」
そこで殿下は王子様のように私にスッと手を差し出した。
黒い髪がいつも以上にキラキラと輝いている。
誰が見ても目を奪われるほど綺麗な彼の手を取った私はニッコリと微笑んだ。
「はい、喜んで」
そして私たちは横並びで海辺を歩いた。
(こんな穏やかな日々がずっと続けばいいのにな……)
そう思うものの、今の私と殿下には解決しなければならない問題が山積みだ。
私の父であるフルール公爵のことと、彼の父である国王陛下のこと。
(お互いに血の繋がった父親に悩まされてるのね……)
帰ったらまたすぐそれについて考えなければいけなくなる。
だからこそ、今だけはこの平和な時間を大切にしたかった。
「キャア、冷たい!」
足だけを海に入れた私は、人生初めての海に思わず大はしゃぎしてしまった。
「楽しそうだな」
「殿下もこっち来てください!」
「おい、あまり深いところに行くと危ないぞ……」
「これくらい平気ですよ!」
「そんなこと言って溺れたらどうするんだ……」
心配そうな顔で私に続いて海へ入った殿下。
「あ、おい!水をかけるな!」
「ふふふ」
それから私たちは子供の頃に戻ったように海でたくさん遊んだ。
***
しばらくして、疲れの溜まった私と殿下は休憩がてらに砂浜に腰を下ろした。
隣に座る彼の肩に頭を乗せていた私は、何も言わずに海の上に浮かぶ夕日をじっと眺めていた。
(もう日が暮れるのね……)
楽しすぎて本当にあっという間だった。
最近は気を張り詰めてばかりだったから、余計にこの時間が短く感じた。
「結婚してからもこういう時間が作れたら良いな……」
何気なく発した言葉に、殿下が困ったような笑みを浮かべて言った。
「それは難しいんじゃないかな」
「……」
認めたくないが、彼の言う通りだった。
私たちにはやるべきことが山積みだ。
それは例え結婚をして王と王妃になった後でも変わらない。
むしろ結婚してからの方が忙しくなるかもしれない。
(どうしてこんなにも問題が多いんだろう……)
いっそ私たちが王太子と公爵令嬢という立場では無かったら……
「――セシリア、そんなに不安な顔をするな」
「殿下……」
頭を上げて彼の顔を見た。
「――俺が絶対にお前を守るから」
「……!」
真剣な表情でそう言った殿下。
その言葉で心の中に残っていた不安が一気に消えていくようだった。
「……はい、殿下」
コクリと頷くと、彼が私の唇にそっとキスをした。
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