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三章

恐ろしい計画 国王side

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「ハァ……執務というのは本当に面倒くさいな。全てあのバカ息子に押し付けてはダメだろうか?」
「陛下、それは無理があります。今だって既に陛下がやるべき仕事の大半を王太子殿下に任せているではありませんか」
「たしかにな……」


私は嫌々ながらも机の上にある書類を片付けた。
王というのはやることが多くて本当に面倒くさい。


(大体、私は地位と名声だけを手に入れられればそれで良かったんだ……こんなくだらない執務など今すぐにでも放棄してしまいたい)


そう思いながら書類に印を押した。
最後の仕事を終えてふと机の隅に目をやると、そこには私がこの世で唯一愛した女の肖像画が置いてあった。


「リーナ……」


普通は家族の写真などを置くものだが、あいにく私に家族と呼べる者はいない。
隣国から嫁いできた可愛げのない王妃と私とは正反対で優秀な息子。


二人の存在は私にとって忌々しいものだった。


(これも全部あのオスカーのせいだ……あいつさえいなければリーナは今頃私のものになっていたというのに……)


リーナの夫であるオスカーが憎くてたまらない。
オスカーを選んだリーナもだが。


二人のことを考えて顔をしかめていると、後ろにいたローレルが声をかけてきた。


「それより陛下、”あの計画”はいつごろ遂行いたしますか?」
「……そうだな、もうそろそろ実行してもいいだろう」


そして私は今最側近である魔術師のローレルと共にとある計画を練っている最中だ。
これが成功すれば私の欲しているものが全て手に入れられる。


「一つ問題があるのですが……」
「何だ?」
「王太子殿下がフルール公爵令嬢の周囲をやたらと警戒しています」
「……何だと?」


息子の王太子とはあの日、セシリアのことで衝突して以来まともに会話をしていない。
傍から見ればそれなりに仲の良い親子を演じてきたつもりだったが、それもそろそろ限界だ。


(私の計画の邪魔をする気か……!)


どうやら息子は本気でセシリアに惚れ込んでいるようだ。
どうやって追い払おうかと頭を悩ませていると、ローレルが何かを思い付いたかのように言った。


「陛下、私に提案があります」
「……提案?」


ローレルの顔を見ると、彼はニヤリと口角を上げた。


「――王太子殿下が邪魔なら、彼から消してしまえばいいではありませんか」
「……何だって?」
「王太子殿下がとても優秀なのは陛下もよくご存知ではありませんか。殿下の存在は私たちの計画の妨げになるだけです」
「たしかにそうだな…………だがしかし、アイツは王家の唯一の後継者だ。」
「後継者ならまた作ればいい。セシリア嬢はまだ十七だ。今からでも間に合います」
「……」


(私とセシリアの子供……)


私の黒い髪に、セシリアとリーナの美しい緑色の瞳を持った子が頭に浮かんだ。
私と彼女ならば、それはそれは優秀で可愛らしい子が生まれるだろう。


ローレルの言葉に、私の口元が緩んだ。


「そうか、そうだな。そうしよう!作戦は変更だ!まずは邪魔なグレイフォードから消すのだ!」
「はい、陛下」



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