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三章
父の本当の目的 王太子side
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「ハァ……困ったな……」
セシリアから初代聖女の肖像画を受け取った俺は、一人執務室で頭を悩ませていた。
机の上には彼女にそっくりな顔をした女性が描かれている肖像画が置かれている。
まさにそれが俺の悩みの種だった。
セシリアからこれを受け取ったとき、驚いたが妙に納得した自分がいた。
(だから父上はあれほどまでに公爵夫人に……セシリアに執着していたのか)
正直、父がセシリアを愛していることに気付いてからずっと変だと思っていた。
父のあの母娘に対する執着は異常ともいえるほどだったから。
たしかに二人とも社交界で絶世の美女と謳われるほどに美しい見た目をしているが、果たしてただそれだけの理由であそこまで欲しがるだろうか。
実の息子である俺にすら無関心な父の姿を見るたびにそう感じた。
(あのときはそれほど深く考えなかった……人を好きになる理由はそれぞれだからと……特に気にしなかった……)
だが、この肖像画を見た今ならその理由が説明された。
(おそらくセシリアの母親……公爵夫人は聖女だったのだろう)
だからこそ、父は夫人を自分のものにしたがっていたのだ。
公爵夫人の聖女としての能力を開花させればさらなる富と名声を得ることが出来るから。
――初代国王アルテールがそうして地位を築き上げたように。
(純粋な愛情ならまだしも……完全に利用する気だったというわけか)
セシリアを狙っていたのは彼女が聖女リーナの血を引く子だったからだろう。
血の繋がった娘であれば、母親と同じ能力を持って生まれる可能性が高い。
(そういうことなら、なおさらセシリアを渡すわけにはいかないな)
俺が死んでも彼女を守りきる。
あんな奴に渡してたまるか。
そうは誓ったものの、今回ばかりは相手が強大すぎた。
(セシリアがまだ聖女としての能力に目覚めていないのが幸いだな……)
能力を開花させてしまえば父は本気で彼女を自分のものにしようとするはずだ。
リーナの血を引く娘だからといって、必ずしも聖女であると決まったわけではなかったから。
いくら俺が王太子とはいえ、まだ王である父親と正面からやり合えるほどの力は無い。
(それだけは絶対に阻止しなければ……!)
いつかは欲深い父を排除して俺が王位に就くつもりだったが、どうやら時期がかなり早まりそうだ。
いざというときのために人を集めておかなければならない。
(それと……セシリアにもこのことを伝えないといけないな)
父に襲われそうになっていたセシリアを守ったあの日から、父は俺を警戒するようになった。
王妃である母上が何とか間を取り持ってくれているものの、あの一件で俺と父の仲は最悪なものになった。
俺が公爵邸に頻繁に通っていることは父の耳にも入っているだろう。
もしかすると邪魔な俺から消しに来るかもしれない。
これまで以上に警戒を強めなければならなかった。
「マルク、フルール公爵邸へ向かう。馬車を準備しろ」
「はい、殿下」
セシリアから初代聖女の肖像画を受け取った俺は、一人執務室で頭を悩ませていた。
机の上には彼女にそっくりな顔をした女性が描かれている肖像画が置かれている。
まさにそれが俺の悩みの種だった。
セシリアからこれを受け取ったとき、驚いたが妙に納得した自分がいた。
(だから父上はあれほどまでに公爵夫人に……セシリアに執着していたのか)
正直、父がセシリアを愛していることに気付いてからずっと変だと思っていた。
父のあの母娘に対する執着は異常ともいえるほどだったから。
たしかに二人とも社交界で絶世の美女と謳われるほどに美しい見た目をしているが、果たしてただそれだけの理由であそこまで欲しがるだろうか。
実の息子である俺にすら無関心な父の姿を見るたびにそう感じた。
(あのときはそれほど深く考えなかった……人を好きになる理由はそれぞれだからと……特に気にしなかった……)
だが、この肖像画を見た今ならその理由が説明された。
(おそらくセシリアの母親……公爵夫人は聖女だったのだろう)
だからこそ、父は夫人を自分のものにしたがっていたのだ。
公爵夫人の聖女としての能力を開花させればさらなる富と名声を得ることが出来るから。
――初代国王アルテールがそうして地位を築き上げたように。
(純粋な愛情ならまだしも……完全に利用する気だったというわけか)
セシリアを狙っていたのは彼女が聖女リーナの血を引く子だったからだろう。
血の繋がった娘であれば、母親と同じ能力を持って生まれる可能性が高い。
(そういうことなら、なおさらセシリアを渡すわけにはいかないな)
俺が死んでも彼女を守りきる。
あんな奴に渡してたまるか。
そうは誓ったものの、今回ばかりは相手が強大すぎた。
(セシリアがまだ聖女としての能力に目覚めていないのが幸いだな……)
能力を開花させてしまえば父は本気で彼女を自分のものにしようとするはずだ。
リーナの血を引く娘だからといって、必ずしも聖女であると決まったわけではなかったから。
いくら俺が王太子とはいえ、まだ王である父親と正面からやり合えるほどの力は無い。
(それだけは絶対に阻止しなければ……!)
いつかは欲深い父を排除して俺が王位に就くつもりだったが、どうやら時期がかなり早まりそうだ。
いざというときのために人を集めておかなければならない。
(それと……セシリアにもこのことを伝えないといけないな)
父に襲われそうになっていたセシリアを守ったあの日から、父は俺を警戒するようになった。
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俺が公爵邸に頻繁に通っていることは父の耳にも入っているだろう。
もしかすると邪魔な俺から消しに来るかもしれない。
これまで以上に警戒を強めなければならなかった。
「マルク、フルール公爵邸へ向かう。馬車を準備しろ」
「はい、殿下」
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