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三章
突然
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事件が起きたのは、それからすぐのことだった。
「……?」
自室で本を読んでいた私は、何だか屋敷が騒がしくなっていることに気が付いた。
部屋の外ではドタドタと使用人たちの足音が響き、集中して本を読むことも出来ない。
こんなのはハッキリ言って異常だ。
(何かあったのかしら……?)
気になった私は席を立ち、部屋の外へと出た。
扉を開けると、深刻な顔で話し込んでいる数人の使用人の姿が目に入った。
私は彼らに近付いて声をかけた。
「ねぇ、何かあったの?」
「お、お嬢様……!」
私の声に使用人たちが振り返った。
「何だか邸が騒がしいわね、何かあったのかしら?」
「……」
優しい口調で尋ねてみるも、言いづらいことなのかなかなか話そうとしない。
(そんなに重大なことなの?私に言えないほど……)
「何かトラブルがあったのなら隠さず言ってほしいの。私はこの公爵家の一人娘なんだから」
「セシリア様……」
真剣な眼差しで彼らをじっと見つめると、ようやく一人の使用人が重い口を開いた。
「実は…………旦那様がお倒れになったのです」
「……お父様が?」
父親が倒れたと聞いて、私の思考は停止した。
(倒れたですって?あのお父様が?)
頭がまるで追い付かない。
だってお父様は若い頃それはそれは立派な騎士だったし、前世を含めて倒れたことなんて一度も……。
「……今すぐ、お父様の部屋へ様子を見に行くわ」
「はい、お嬢様」
私は数人の侍女を引き連れて父親が眠っている部屋へと向かった。
***
「……お父様」
ベッドの上に横たわる父親は、普段の姿からは想像もつかないくらい弱って見えた。
眠っているのか、呼んでも返事は返ってこない。
そんな父親を見ていると、何だか急に心臓がギュッと締め付けられた。
(どうしてこんなことに……)
執務室の前を後にしてからの数時間に一体何があったのか。
思い当たる節が無いこと無いが……。
「……お父様は、普段から体調をよく崩していたのかしら?」
「い、いえ……時々頭痛を催されることはありましたが、こんな風に倒れられたのは初めてで……」
「そう……」
その後、すぐに主治医がお父様の診察をした。
しかし、結局お父様がこうなった原因は分からないとのことだった。
(お父様……)
医者にも原因が分からないだなんて。
よっぽど深刻な病気なのかもしれない。
(…………私がお父様のことを心配する日が来るなんてね)
ふとそんなことを思った。
そのことに対して驚いている自分がいる。
お父様は私にとって、決して良い父親とは言えない人だったからだ。
いつだって私に無関心で、お飾りの妻になったときだって特に何もしてくれなかった。
だからこそ、あの人がどうなろうとかまわないとこれまでずっと思っていた。
しかし、いざこんな風になると全く別のことを考えていたことに驚きを隠せない。
(……やっぱり、血の繋がった父親が死ぬのは放っておけないのね)
もうこうなったら何が何でも父親を助けてやろう。
それで無事に回復したら高価な宝石でもねだってやろう。
(一生私に頭が上がらないようにさせてやるわ)
「……?」
自室で本を読んでいた私は、何だか屋敷が騒がしくなっていることに気が付いた。
部屋の外ではドタドタと使用人たちの足音が響き、集中して本を読むことも出来ない。
こんなのはハッキリ言って異常だ。
(何かあったのかしら……?)
気になった私は席を立ち、部屋の外へと出た。
扉を開けると、深刻な顔で話し込んでいる数人の使用人の姿が目に入った。
私は彼らに近付いて声をかけた。
「ねぇ、何かあったの?」
「お、お嬢様……!」
私の声に使用人たちが振り返った。
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優しい口調で尋ねてみるも、言いづらいことなのかなかなか話そうとしない。
(そんなに重大なことなの?私に言えないほど……)
「何かトラブルがあったのなら隠さず言ってほしいの。私はこの公爵家の一人娘なんだから」
「セシリア様……」
真剣な眼差しで彼らをじっと見つめると、ようやく一人の使用人が重い口を開いた。
「実は…………旦那様がお倒れになったのです」
「……お父様が?」
父親が倒れたと聞いて、私の思考は停止した。
(倒れたですって?あのお父様が?)
頭がまるで追い付かない。
だってお父様は若い頃それはそれは立派な騎士だったし、前世を含めて倒れたことなんて一度も……。
「……今すぐ、お父様の部屋へ様子を見に行くわ」
「はい、お嬢様」
私は数人の侍女を引き連れて父親が眠っている部屋へと向かった。
***
「……お父様」
ベッドの上に横たわる父親は、普段の姿からは想像もつかないくらい弱って見えた。
眠っているのか、呼んでも返事は返ってこない。
そんな父親を見ていると、何だか急に心臓がギュッと締め付けられた。
(どうしてこんなことに……)
執務室の前を後にしてからの数時間に一体何があったのか。
思い当たる節が無いこと無いが……。
「……お父様は、普段から体調をよく崩していたのかしら?」
「い、いえ……時々頭痛を催されることはありましたが、こんな風に倒れられたのは初めてで……」
「そう……」
その後、すぐに主治医がお父様の診察をした。
しかし、結局お父様がこうなった原因は分からないとのことだった。
(お父様……)
医者にも原因が分からないだなんて。
よっぽど深刻な病気なのかもしれない。
(…………私がお父様のことを心配する日が来るなんてね)
ふとそんなことを思った。
そのことに対して驚いている自分がいる。
お父様は私にとって、決して良い父親とは言えない人だったからだ。
いつだって私に無関心で、お飾りの妻になったときだって特に何もしてくれなかった。
だからこそ、あの人がどうなろうとかまわないとこれまでずっと思っていた。
しかし、いざこんな風になると全く別のことを考えていたことに驚きを隠せない。
(……やっぱり、血の繋がった父親が死ぬのは放っておけないのね)
もうこうなったら何が何でも父親を助けてやろう。
それで無事に回復したら高価な宝石でもねだってやろう。
(一生私に頭が上がらないようにさせてやるわ)
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