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三章

十七歳の春

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月日はあっという間に流れ、私は十七歳になった。
あどけなかった少女は成長し、身長も今では百六十センチを超えた。
前世で最後に見た姿とほとんど変わらない状態だ。


(前世通りに物事が進むのならば、殿下と結婚するまで後一年ってところかしら……)


時を戻ってからは絶対に殿下から逃げてやるなんて思ってたのに、まさか彼と両想いになれるなんて一体誰が想像しただろうか。
誰からも愛されないと、前世の私は勝手に思い込んでいた。
だけど、実際は違った。
彼はいつだって私のことを考えてくれていたのだ。


(そんな人と結婚出来るだなんて、私はとっても幸せ……)


前世と同じような結末を迎えるのではないかと怯えたことも今までに何度かあった。
だけど今は全く怖くない。
彼との明るい未来がもう既に見えていたから。


「――セシリア」
「!」


じっと考え込んでいた私に、声をかけてきた人物がいた。


「殿下……!」


私の婚約者である王太子殿下だ。
殿下はベンチに座っていた私のすぐ傍に腰を下ろした。


「殿下、お久しぶりです」
「ああ、セシリア。見ないうちにまた美しくなったな」
「うふふ、殿下も背が少し伸びたんじゃないですか?」
「ああ、そうだな」


当然、変わったのは私だけではない。
彼も私と同じで背が伸び、声もだいぶ低くなった。
今では頭一つ分は違う。


(大人の男の人って感じがするわ……)


大人っぽい顔立ちになった彼に終始ドキドキしっぱなしだ。


「殿下、陛下の方はどうですか?」
「ああ、今のところは大人しくしている。母上がこちら側についてむやみに手が出せないんだろうな」
「それは良かったです……王妃陛下には本当に感謝しかありません」


それを聞いた殿下がクスッと笑った。


「なら、もっと母上とたくさん話してやってくれ」
「……王妃陛下とですか?」
「ああ、母上は可愛くて聡明な娘が出来て嬉しいって前に言ってたぞ」
「お、王妃陛下がそのようなことを……!?」


まさかあの王妃陛下に褒められる日が来るとは。


(私、だいぶ成長したのね……)


前世の努力が報われたような気がして涙が出そうになった。


「あ、それと、セシリア……」
「はい、何でしょうか?」
「その……お前の父親……フルール公爵は最近どうしている?」
「お父様……ですか?」


(殿下がお父様の様子を聞くだなんて珍しいわね)


父に用事でもあるのだろうか。
しかし、どうしていると言われても……。


「特に変わった様子はないですよ。いつも通りです。今もきっと執務室で仕事をしているのではないでしょうか」
「そうか……」


それを聞いた殿下がじっと考え込むような素振りを見せた。
父のことで何か思うことがあるようだ。


(どうしたんだろう、変な殿下……)


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