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二章
孤独 王妃エリザベスside
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(ハァ……本当に変な男だったわ……)
庭師のマークと別れた後、私は自室でくつろいでいた。
ついさっき授業が終わり、一息ついたところだった。
いつもなら授業の復習をしている時間だが、今日は何故かいつまで経っても彼のことが頭から離れなかった。
授業中もずっと上の空で、講師に心配されてしまうほどである。
(こんなの初めて……私ったらどうかしてしまったのね……)
元々聡明な頭を持っているので、それでも勉強には困らなかったが。
私はふと部屋に控えていた侍女に声をかけた。
「ねぇ、貴方」
「は、はいッ!」
私に呼ばれた侍女はビクリと肩を震わせて返事をした。
「今、お兄様はどちらにいらっしゃるのかしら?」
「お、王太子殿下は剣術の練習中だとお聞きしております……」
「そう……」
「ヒッ!!!」
機嫌を損ねたと思ったのか、侍女は顔を真っ青にした。
「……もういいわ、出て行ってちょうだい。今は一人になりたいの」
「しょ、承知いたしました……」
そして彼女は逃げるようにして部屋を出て行った。
(毎回毎回あんなに怯えて……)
侍女たちのあの様子にはもう慣れた。
不満が無いというわけでは無いが、貴族の令息令嬢ですら怖がる女だ。
あんな風になってしまうのも無理はないだろう。
元はと言えば、氷のように冷たい私の容姿が原因なのだから。
(お母様はあんなにも穏やかで優しい人だったのに……どうして私はこんなにも冷酷な女になってしまったのかしらね)
自分で自分を嘲笑した。
いつも完璧な淑女の仮面を身に着け、人々を欺いている。
私は昔からこんな生き方をしてきた。
そんな私には、お似合いの結果なのかもしれない。
元より生きている意味など何も無い。
私はいつだって孤独だった。
今も広い部屋に一人ぼっち。
家族は皆多忙の身で、そんな私に同情して笑顔で話しかけてくれる侍女もいない。
いつもなら平気なことなはずなのに、今日に限って普段と違うある感情が私の中で芽生え始めていた。
(何だか……寂しいわ……)
――寂しい。
孤独には慣れている私がこんな感情を抱くなんて。
(おかしいわ……こんなの私じゃない……)
そう思うものの、その感情はどんどん大きくなっていく。
そんなときに脳裏をよぎったのは、自分に屈託のない笑顔を向けるマークの顔だった。
「あ……」
気付けば、私は上着を羽織って部屋を飛び出していた。
***
「……」
部屋を出た私は、彼と出会った庭園まで来ていた。
さっき会ったときとは違って空が暗くなっている。
庭園へ足を踏み入れた私は、きょろきょろと辺りを見渡してマークの姿を探した。
(いないのかしら……?)
もう既に仕事を終えたのか、彼はどこにも見当たらない。
暗くなっているのもあって、周囲がよく見えない。
「マーク……?」
こんな場所に一人でいると、何だか暗闇に取り残されたような感じがした。
歩き回って探すも、やはり彼はいない。
(……きっともう行ってしまったんだわ)
諦めて帰ろうとしたそのとき、突然眩いほどの光に照らされた。
「王女殿下……?」
「……!」
声のした方を振り返ると、灯りを手にしたマークがこちらを見ていた。
「マーク……!」
「殿下……」
彼の姿を見たとき、何故だかすごく安心したのを今でもよく覚えている。
庭師のマークと別れた後、私は自室でくつろいでいた。
ついさっき授業が終わり、一息ついたところだった。
いつもなら授業の復習をしている時間だが、今日は何故かいつまで経っても彼のことが頭から離れなかった。
授業中もずっと上の空で、講師に心配されてしまうほどである。
(こんなの初めて……私ったらどうかしてしまったのね……)
元々聡明な頭を持っているので、それでも勉強には困らなかったが。
私はふと部屋に控えていた侍女に声をかけた。
「ねぇ、貴方」
「は、はいッ!」
私に呼ばれた侍女はビクリと肩を震わせて返事をした。
「今、お兄様はどちらにいらっしゃるのかしら?」
「お、王太子殿下は剣術の練習中だとお聞きしております……」
「そう……」
「ヒッ!!!」
機嫌を損ねたと思ったのか、侍女は顔を真っ青にした。
「……もういいわ、出て行ってちょうだい。今は一人になりたいの」
「しょ、承知いたしました……」
そして彼女は逃げるようにして部屋を出て行った。
(毎回毎回あんなに怯えて……)
侍女たちのあの様子にはもう慣れた。
不満が無いというわけでは無いが、貴族の令息令嬢ですら怖がる女だ。
あんな風になってしまうのも無理はないだろう。
元はと言えば、氷のように冷たい私の容姿が原因なのだから。
(お母様はあんなにも穏やかで優しい人だったのに……どうして私はこんなにも冷酷な女になってしまったのかしらね)
自分で自分を嘲笑した。
いつも完璧な淑女の仮面を身に着け、人々を欺いている。
私は昔からこんな生き方をしてきた。
そんな私には、お似合いの結果なのかもしれない。
元より生きている意味など何も無い。
私はいつだって孤独だった。
今も広い部屋に一人ぼっち。
家族は皆多忙の身で、そんな私に同情して笑顔で話しかけてくれる侍女もいない。
いつもなら平気なことなはずなのに、今日に限って普段と違うある感情が私の中で芽生え始めていた。
(何だか……寂しいわ……)
――寂しい。
孤独には慣れている私がこんな感情を抱くなんて。
(おかしいわ……こんなの私じゃない……)
そう思うものの、その感情はどんどん大きくなっていく。
そんなときに脳裏をよぎったのは、自分に屈託のない笑顔を向けるマークの顔だった。
「あ……」
気付けば、私は上着を羽織って部屋を飛び出していた。
***
「……」
部屋を出た私は、彼と出会った庭園まで来ていた。
さっき会ったときとは違って空が暗くなっている。
庭園へ足を踏み入れた私は、きょろきょろと辺りを見渡してマークの姿を探した。
(いないのかしら……?)
もう既に仕事を終えたのか、彼はどこにも見当たらない。
暗くなっているのもあって、周囲がよく見えない。
「マーク……?」
こんな場所に一人でいると、何だか暗闇に取り残されたような感じがした。
歩き回って探すも、やはり彼はいない。
(……きっともう行ってしまったんだわ)
諦めて帰ろうとしたそのとき、突然眩いほどの光に照らされた。
「王女殿下……?」
「……!」
声のした方を振り返ると、灯りを手にしたマークがこちらを見ていた。
「マーク……!」
「殿下……」
彼の姿を見たとき、何故だかすごく安心したのを今でもよく覚えている。
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